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成瀬巳喜男作・演出『なつかしの顔』1941年を見る。 [ドラマ]

成瀬巳喜男作・演出『なつかしの顔』1941年を見る。

A Face from the Past (1941)
https://www.youtube.com/watch?v=nI_aJCVZ-Ng

田舎の映画館で上映されるニュースに、出征した「なつかしの顔」が映っていることを伝え聞いた家族の反応が描かれる。その顔は、息子であり、夫であり、兄である。

映画冒頭、子どもたちの模型飛行機遊びが映される。子どもたちのあいだで模型飛行機が流行っていた。ゴムを動力としてプロペラを回転させて飛ばすものだ。当方も記憶にある。小学校の頃だから50年以上前だ。バルサ材とアルミ管を利用して機体をつくり、翼には紙を貼り、輪ゴムをひねって、その復元力を用いてプロペラを回転させて飛行機を飛ばす。文房具屋に行くと材料は売っていて、当方よりちょっと上の人たちが自作して遊んでいた。

「なつかしの顔」の弟は小学校3年生といったところ。家は、裕福ではない。それでも、母親や義理の姉は買ってあげたいと思っている。

「なつかしの顔」を見に母親は映画館に出向く。お金を節約してバスには乗らない。ところが、せっかく出向いたものの、息子の姿を見いだせない。ほんの瞬時しか登場しないので、見そこなったのだ。街に出たついでに、完成品の模型飛行機の値段を尋ねるが「80銭」と聞いて買うことができない。

その翌日、「なつかしの顔」の妻は赤ん坊をおぶってバスで出かける。だが、映画館に入ることをためらう。そして、とうとう入ることなく、家に戻る。手には、義弟のための模型飛行機をお土産に携えている。

「なつかしの顔」の弟は、足を怪我して、映画を見にいけない。木にひっかけてしまった友達の飛行機を取ろうとして木から落ちたのだ。それで、兄の雄姿を見たく思っていたのだが、代わりに出かけた母も姉もなんだか曖昧な返事しかしない。

寝床で姉からもらった飛行機をいじっているところに、映画館に行った友人がやって来て、お姉さんはいなかったよと弟に報告する。すると、弟は怪我した足をひきずって野良仕事をしている姉のところに行き、もらった飛行機を投げ出して泣く。

それに対して困惑気味に義姉は言う。

「ねえ、コーちゃん。姉さんウソ言ってごめんなさいね。でも、コーちゃんに飛行機買ってあげようと思って、姉さん、活動見なかったんじゃないのよ。コーちゃんにはまだ分からないかもしれないけども、姉ちゃん、なんだか見たくなかったの。見なくてもいいような気がしたの。 兄ちゃん、おおぜいの兵隊さんと一緒にお国のために働いているんでしょ。あの写真を見た人どの人にもみんな感謝すると思うのよ。姉ちゃんが兄ちゃんの姿を見て、もし涙でもこぼしたらおかしくない。ねえ。だから姉ちゃん見なかったのよ」


当方が見て、特に印象に残ったのは、映画ニュースの最後に出る「第四回 報国債権 十一月抽選 只今売出中 大蔵省・日本勧業銀行」の字幕である。母親が映画ニュースを見たときも、弟の友人が見た時もその場面がきっちり映し出される。

《模型飛行機で遊んでいる場合ではありませんよ。今、戦場では命がけの戦いがなされているのですよ。模型飛行機のために、バス代を節約し、映画館にはいるのを諦める気持ちがあるのであれば、ホンモノの飛行機のために、あなたの貴重な資産を投じてください。国債を買ってください。「貧者の一灯」は取り分け貴重です》。

そのようなメッセージが発せられている気がする。


そのようなメッセージが実際のところあるかないかは別にして、やさしい姉、やさしい母、貧しいけれども思いやりに富む人たちの様子をみるのは心なごむ。総じてイイ映画だと思う。30数分にこれだけの内容を凝縮できるのだと感心する。ブヨブヨのショートケーキに辟易することがあるが、そういったツクリではない。

やさしい「姉さん」役を花井蘭子が演じている。『丹下左膳余話 百萬両の壺』では剣道場の若い奥方をコミカルに演じていた。この頃の役者はどんな役にもなれる。しかも自然にその役におさまる。まさに役者である。それができる人だけが役者になれた時代なのだろう。それが女性であれば、まさに「女優」である。


丹下左膳餘話 百萬両の壺 [DVD]

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  • 発売日: 2011/02/14
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川端康成原作・清水宏監督『有りがたうさん』1936年を見る [ドラマ]

川端康成原作・清水宏監督『有りがたうさん』1936年を見る

川端康成のショートショート集『掌(てのひら)の小説』の一編『有難う』を映画化したものだという。

『掌の小説』は読んでいるはずだが、『有難う』は覚えていない。もっとも40年以上前だから、忘れていても仕方なかろう。

Mr. Thank-You / 有りがとうさん (1936) (EN/ES)
https://www.youtube.com/watch?v=3fK3kVs4eJs

掌の小説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8E%8C%E3%81%AE%E5%B0%8F%E8%AA%AC#%E6%9C%89%E9%9B%A3%E3%81%86


お話しは天城峠を走る路線バスでの出来事である。「有りがたうさん」は運転手のあだ名。道を譲る人々に「ありがとう」といちいち声をかけるのである。

なんとも味わいのある映画である。当初録音音声がどうかしているのかと思った。驚いて1.25倍速にしたほどだ。そういう操作をさせるほどに、ゆっくりとしたテンポでセリフを話している。まるで、読んでいるかのようである。田舎ののんびりした暮らしを表現するために、ゆっくりと話すように指示が出されたのだろうか。それが、ロバのいななきのようなクラクションの響きとマッチしてのどかである。

「有りがたうさん」の役を上原謙、乗客たちのあいだを繋ぐ狂言回しのような「黒襟の女」を桑野通子が演じている。物語を煎じ詰めると「黒襟の女」の台詞に要約できるかもしれない。

「たった20里の街道にも、これだけのことがあるんだもの、広い世の中、いろんなことがあるだろうねえ」

街道を行く人々はいろんな職種である。その姿かたち、担うものからおおよその仕事が分かる。路面は舗装されてなどいない。『伊豆の踊子』もこうした風景を見ながら峠道を歩いたのだろう。

伊豆の踊子 (新潮文庫)

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  • 作者: 康成, 川端
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/05/05
  • メディア: 文庫


バスに乗って峠をふたつ越え、これから東京に働きにでるという娘が登場する。母親と一緒である。そのことを気の毒がる村人の様子からは、世界の果てにでも行く感じがある。

「有りがたうさん」は、ただの運転手ではない。村から村へと走るだけでなく、そこに住む人々の暮らしを知っている。道中、バスを停めては世間話をする。頼まれごとも快く受ける。いわば、世界を繋いでいる。

バスの乗客は、そこに乗り合わせただけで、運命共同体のようになっていく。共同体は大袈裟でも、「袖ふれあうも多生の縁」を思い出し生きるようになる。その上での大きな役割を「黒襟の女」が果たす。その欺瞞のなさ、正直さが、みなお互いに人間であることを思い出させる。

田舎の乗り合いバスの特別何事も起きない日常を描きながら、当時の世相、暮し、空気感まで炙り出すような映画である。


掌の小説

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  • 作者: 川端康成
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/06/14
  • メディア: Kindle版




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清水宏監督『みかへりの塔 』1941年を見る [ドラマ]

清水宏監督『みかへりの塔 』1941年を見る。

Tower of Self Examination (1941)
https://www.youtube.com/watch?v=eerxNRu9oLg

Yahoo!映画の解説・あらすじには次のように記されている。

《修徳学院長の熊野隆治と小説家の豊島与志雄による同名原作を、清水宏が脚色・監督した社会派ドラマ。小津安二郎や溝口健二に「天才」と呼ばれた清水の代表作の一つで、映画ファンからも高い評価を得た。  非行や盗癖、虚言癖など、問題を抱えた特殊児童200人を収容する学院。ここでは児童を16のグループに分け、それぞれに教師と保母を担当させ、家庭として子供の教育に当たっていた。学院を逃げ出そうとする子供、退院したのに外で生活できず戻ってくる子供など、教師と保母の苦労は絶えることがない。井戸が涸れて水不足に陥った学院は、教師と保母、そして生徒たちが一丸となって、裏山の池から水を引くことになった》。
https://movies.yahoo.co.jp/movie/134402/story/

修徳学院は、実在の施設であり現在も機能しているようだ。映画は、草間先生(笠智衆)が、父兄等?に学院を案内する場面から始まる。
http://www.pref.osaka.lg.jp/shutoku/

その「案内」を聞きながら、「戸塚ヨットスクール」のようなものか・・と勝手な想像をした。いつの時代も「持て余される」子どもがいるものだ。素行がわるく矯正するのが難しく、手に負えず持て余してついに受け入れ先を見出す。持て余している人間にとっては、たいへん有難い施設だ。ところが、持て余されている方にとっては、オソロシイことも生じうる。施設の矯正方法等にモンダイがあって、暴行・監禁・殺人などの社会問題となる。

戸塚ヨットスクール事件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%B8%E5%A1%9A%E3%83%A8%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E4%BA%8B%E4%BB%B6


辛抱づよく待ち続けることができないととてもではないが矯正などできないと実感できる。そのあたりが良く描かれている。

映画のなかで目立つ存在・役は「善雄」と「多美子」である。義男は貧しい母子家庭、多美子は裕福な家庭で身の回りのことは女中がすべてしてくれていた娘。どちらも「手ごわい」子どもである。

その二人が、自部の弱点を悟り、悔悛して、学院を巣立っていくところまで描かれる。

ちなみに子役で存在感を放っている「善雄」役:横山準は「子役の四天王」のひとり「爆弾小僧」の別名。


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  • 出版社/メーカー: 松竹
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みかへりの塔 それから―父の鐘・母子の鐘 巣立った子らの心の癒し

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  • メディア: 単行本




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田中絹代・上原謙主演『愛染かつら』1938年を見る。 [ドラマ]

なにかと有名な『愛染かつら』を見る。

主題歌は『懐かしのメロディー』などの歌番組でよく耳にしてはいたが、映画を見るのははじめてである。ただ、あまり期待していなかった。いわゆるメロドラマの典型であるような印象を植え付けられていたし、それを裏付けるようなメロディーから推して、当方の見るシロモノではないように思ってきた。

それでもせっかく『ユーチューブ』にアップされていることでもあり、どのようなモノか話のタネに見てもよかろうと見たのである。

Aizen Katsura(1939)
https://www.youtube.com/watch?v=tkmLdsh3HHw


『ねこむすめ』さんがアップしてくださった映像に付記されている年度は(1939)となっている。映画冒頭、タイトルと共に「新編総集編 A1633」と表示される。

これは『ウィキペディア』の説明による《愛染かつら 前篇・後篇(1938年公開、松竹製作)》に該当するのであろうか。それであれば、さらに次のような説明が付加されている。《監督:野村浩将、主演:田中絹代、上原謙 ※ 前編・後編ともフィルムが完全な形で存在せず、前・後編を再編集した総集編がビデオ化されている》。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9B%E6%9F%93%E3%81%8B%E3%81%A4%E3%82%89

実際に見ての感想は、予想どおりだった。たぶん「フィルムが完全な形で」残っていても、同じであるように思う。第一、聴衆に媚びるツクリであるのが気に入らない。もっとも、媚びられて喜ぶ人がおおぜいいたから大ヒットしたのだろうが、当方は組しない。

原作は川口松太郎、脚本は野田高梧、監督は野村浩将であるという。能力のある人たちばかりである。その才能が「媚びる」方向で発揮されたということなのだろう。松竹から「オールスターでやるのでよろしく。興行成績を上げたいのでよろしく」と釘を刺されて製作に臨んだのかもしれない。当初から、そのように製作されているのであれば、文句のつけようもない。

川口松太郎原作の映画をこれまで2本みている。『近松物語』と『愛怨峡』だ。どちらも監督は、溝口健二である。もし、『愛染かつら』を溝口が撮っていたらどうなっただろうか、と考えてもしようのないことを考えた。

溝口は最初から請けないか、請けても、シリアスになりすぎて、続編を出すようなヒットにはならなかったカモしれない。

溝口健二監督映画「近松物語」を見る
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2020-10-08

溝口健二監督 『愛怨峡』山路ふみ子主演 1937年を見る 
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2020-12-30


あの頃映画 愛染かつら [DVD]

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岸井明・高峰秀子主演『虹立つ丘』1938年を見る [ドラマ]

岸井明・高峰秀子主演『虹立つ丘』1938年を見る。

Rainbow standing hill(1938)
https://www.youtube.com/watch?v=3fnVJy4gwvg

原作は北条秀司・岸井良緒となっている。

北条秀司は、代表作に『王将』をもつ劇作家。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E6%9D%A1%E7%A7%80%E5%8F%B8

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  • 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
  • 発売日: 2007/09/28
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岸井良緒は、当映画で主演している岸井明の兄:岸井良衞のようだ。その本名は「良雄」である。「雄」を「緒」と変えてクレジットしたのだろう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%B8%E4%BA%95%E8%89%AF%E8%A1%9E


兄(岸井明)と妹(高峰秀子)のほのぼのした関係が描かれる。

舞台は、箱根のホテル。そこで「お兄ちゃん」はポーターとして、妹「ユリぼう」は売店の売り子として働いている。

そこに宿泊して健康回復を図っている奥様と「ユリちゃん」はだんだん親しくなる。

実は「ユリちゃん」は・・・

・・という話。


岸井明
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%B8%E4%BA%95%E6%98%8E

高峰秀子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E5%B3%B0%E7%A7%80%E5%AD%90

dekology
高峰秀子の足跡を辿る:Filmography & Discography & Bibliography, etc.
http://dekology.blog119.fc2.com/


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成瀬巳喜男脚色・演出『旅役者』1940年を見る [ドラマ]

成瀬巳喜男脚色・演出『旅役者』を見る。

昨日更新の『歌行灯』と同じく成瀬作品だが、

だいぶ雰囲気は異なり、こちらはユーモア感たっぷりである。

Travelling Actors (1940)
https://www.youtube.com/watch?v=hd_cPxXKT24

原作は宇井無愁の『きつね馬』。

原作者 宇井無愁は『20世紀人名辞典』に次のように示されている。

《「昭和期の小説家,落語研究家。・・(昭和)14年には「きつね馬」が直木賞候補作となる。15年の第1回ユーモア賞受賞を機に、以後ユーモア作家として文筆活動に専念する。ほかの著書に「パチンコ人生」「日本人の笑い」「落語のふるさと」などがある》。

日本人の笑い (1969年) (角川選書)

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  • 作者: 宇井 無愁
  • 出版社/メーカー: 角川書店
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当該映画は、(「尾上」ではなく)「中村菊五郎」という怪しげな旅回り一座で「馬」の役に扮する二人に焦点を当てている。馬の着ぐるみに入って、前脚と後ろ脚をする役である。

一座がかけている演目は、三遊亭円朝作『塩原多助一代記』の「青(馬)の別れ」(当方は、古今亭志ん生の落語を聞いていたので、ソレだと分かった)。

古今亭志ん生 塩原太助一代記 青の別れ
https://www.youtube.com/watch?v=Ajfsl0WLoNY


塩原多助一代記 青馬の別れ

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そのハナシで「馬」の役目は重要だ。

その役にかける役者の一途さ、一生懸命さが可笑しさを誘う。

その大事な役をホンモノの馬に奪われるハメになってしまうのだが、そのときの台詞がいい。

唾棄するように言う。

「ほんとうの馬に馬ができてたまるかってんだ」
46:15~46:30

座頭 中村菊五郎役を、『丹下左膳餘話 百萬両の壺』でクズ屋を演じ、なんとも言えないおかしみをだしていた高勢実乗(たかせ みのる)。馬の前脚を務める市川俵六を藤原鶏太(鎌足)、後脚を務める中村仙平を柳谷寛が演じている。

音楽もなんともトボケタいい味わいである。

昨日更新した『歌行灯』が能役者の至芸の世界とすれば、こちらは大衆演劇の世界である。芸を示し感動を引き起こすには、また、役を失うことにならないためにも、営為努力創意工夫が必要である。・・

・・などという陳腐でありながら大切なことを考える機会になった。


ついでながら・・
原作者 宇井無愁をネット検索していたら、次の論文に出会った。昭和初期を知るうえで参考になった。

昭和初期ユーモア文学における笑い
執筆者 金森 梓
http://rp-kumakendai.pu-kumamoto.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/1819/1/5705_kanamori_65_86.pdf


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泉鏡花原作・成瀬巳喜男監督『歌行燈 』1943年を見る [ドラマ]

泉鏡花原作・成瀬巳喜男監督『歌行燈 』
主演 
恩地喜多八: 花柳章太郎
お袖: 山田五十鈴

The Song Lantern(1943 )
https://www.youtube.com/watch?v=gEgfZ7Ixvsc

泉鏡花の文芸作品の映画化である。

ここのところいろいろ古い映画を見てきたが、一番に推したい。

映画のなかにずっと留まっていたい。映画が終わらないで欲しいと願うような気持になった。

「クール ジャパン」とはこれだ !! と言いたい。


歌行燈 (1943年の映画)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%8C%E8%A1%8C%E7%87%88_(1943%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%98%A0%E7%94%BB)


ついでながら、蛇足にちかいが・・

おなじく、泉鏡花原作『白鷺』どうよう、戦後に出た作品(市川雷蔵・山本富士子主演)よりも、ずっとずっと遥か高みにあると当方は思う。

泉鏡花原作・島津保次郎監督/入江たか子主演『白鷺』1941年を見る 
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2021-02-10


歌行燈 (岩波文庫)

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  • 作者: 泉 鏡花
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/06/17
  • メディア: 文庫




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室生犀星原作・木村荘十二監督『兄いもうと』1936年を見る [ドラマ]

室生犀星原作・木村荘十二監督『兄いもうと』1936(昭和11)年を見る。
Brother and young sister(1936)
https://www.youtube.com/watch?v=zylPF0r-bYU&t=68s

木村荘十二監督の作品は、すでに『放浪記』を見ているが、これまた凄い。映画は総合芸術であると実感させてもらえる。カメラワークも音楽も見事だ。

音楽はもっぱらクラシック作品を用いているが、映像にフィットしている。

キャスティングも素晴らしい。「いもうと」もん役の竹久千恵子は、『馬』では東北の百姓の母親役を演じ、『禍福』では桐生の資産家のご令嬢を演じている。本作では、男にはらまされて一家の面汚しとなって家に居ずらくなった「すれっからし」の娘を演じている。とはいえ、根っからの「すれっからし」ではない。そのことを「いもうと」は自覚している。そして、居直ってはいない。

「兄」伊之役の丸山定夫も素晴らしい。妹を愛しているがゆえに、はらませた男へのいらだちが、男にではなく、目の前の「いもうと」に向かってしまう。それが、かえって「いもうと」を居直らせてしまう。

「いもうと」のふるまいは「堅気」の一家に大波乱を起こす。これほどの波乱はなかなか見られない。見ものである。

木村荘十二監督の力量にはすごいものがある。実際に見ることのできる映画はそう多くは残っていないようだ。勿体ないはなしである。


室生犀星 作品全集

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  • 作者: 室生犀星
  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2020/07/30
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高峰秀子主演『見世物王国』1937年を見る [ドラマ]

『見世物王国』1937年を見る。
Spectator kingdom(1937)
https://www.youtube.com/watch?v=HOKSRe0FN7Q&t=10s

映画タイトルとともに「藤原鎌足、岸井明主演」と示される。藤原がスリ、岸井がそれを追いかける役。ドタバタ劇である。

高峰秀子が「秀ちゃん」役ででている。これは、高峰秀子ファンのために作った映画と言ってもいいのだろう。田中絹代の映画タイトルに「絹代の・・」とあるのと同じである。

ここで見る「秀ちゃん」は13歳。

この映画のいちばんの「見世物」は、「秀ちゃん」であるように思うが、ほかにも見るものがたくさんある。

東京の当時の風景を見ることができる。鳩バスらしきものでの観光風景があり、丸ビル、国会議事堂、靖国神社、など紹介される。

見世物小屋の様子も見ることができる。ろくろ首、人魚、「目が三つ尾が二本、天下無双の怪獣」、駒回し、自転車の曲乗り、マジックなども見られる。

田舎から出てきた「秀ちゃん」一家の東京見物に、映画館に行った日本中の家族が「へえ、東京ってこんなだあ?!」と見たのだろう。

以下、当方未読

江戸の見世物 (岩波新書)

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吉屋信子原作・高峰秀子主演『花つみ日記』1939年を見る [ドラマ]

吉屋信子原作・高峰秀子主演『花つみ日記』1939年を見る。

Flower picking diary(1939)
https://www.youtube.com/watch?v=zfeJb0NH3m8&t=54s

『花つみ日記』(はなつみにっき)は、吉屋信子原作の1939年の日本映画である。大阪の宗右衛門町を舞台に、花街の置屋の娘栄子(高峰秀子)と、東京からの転校生みつる(清水美佐子)との友情の物語。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B1%E3%81%A4%E3%81%BF%E6%97%A5%E8%A8%98

全体の印象としてはミュージカルである。冒頭、女学校で校庭を掃除する女学生たちの歌声が取り上げられる。彼女たちの憧れの先生はピアノで歌う。

ちなみに憧れの先生役:葦原邦子は、「元宝塚歌劇団星組トップスター。本名は中原 英子(なかはら えいこ)、旧姓は岡本。夫に画家の中原淳一・・」とウィキペディアに出ている。

原作の吉屋信子は『少女小説』というジャンルを確立した一人であり、その「第一人者」であるという。『ウィキペディア』の「少女小説」の項には以下のように記されている。

《大正時代に入ると少女向けの雑誌は隆盛を迎える[8][5]。なかでも吉屋信子の小説と中原淳一の挿絵は少女たちから絶大な支持を獲得した[9]。吉屋が1916年(大正5年)から『少女画報』に連載した「花物語」は、花をモチーフに少女たちの友愛を描き、7話完結の予定が8年間続くほどの人気を誇った作品である[10][11][12]。本作は川端康成(中里恒子との共同執筆)の「乙女の港」など「エス」作品の原型となり、その影響は現代にまで及んでいる》。

であるから、本作品は少女小説の大家とそのコンビをなす挿画家の妻であり宝塚トップスターによる作品と言えなくもない。さらに、穿った見方をすれば、本作品は、《少女歌劇のPR》的役割を果たしていたのかもしれない。

宝塚歌劇団の創設者『小林一三に縁のある著名な人物100名』の中に吉屋信子が入っている。その紹介サイトに、吉屋信子の文章が以下のように引用されている。

《それ以来、小林氏は私をその少女歌劇のPR用に利用(?)した。永田町の東京邸へ招いて当時のスター葦原邦子と対談というようなことがはじまり、やがて私は遠く宝塚にまで呼ばれて、お利口で美しいスター連に囲まれたり、その養成所の学校を参観させられた。そのお礼ごころかどうか、時々私の小説を読んだ批評を大阪の本邸雅俗山荘から寄せられたり、古代裂の袋入りの小さな古鏡などを贈られた》。(吉屋信子「小林一三」『大人の本棚 私の見た人』みすず書房、2010年)。
http://www.hankyu-bunka.or.jp/ichizo/network100/literature/

吉屋の原作のタイトルは『天国と舞妓』のようである。『天国』との絡みであろうか、当時の大阪の教会の内外の映像が紹介される。いわゆる「少女趣味」の一端を教会が担っていたのだろう。

総じて、高峰の演技が光る映画だ。やはり、いい役者だったのだと思う。仲たがいが元で女学校を退学し、舞子姿で参詣した土地で、絶交した親友とたまたま出会ってしまったときの表現は見事である。
50:30~

高峰役の少女は、このあと病気になる。原作では病死することになるのだろうか。映画では不明のまま終わる。

花物語 上 (河出文庫)

花物語 上 (河出文庫)

  • 作者: 吉屋信子
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/07/08
  • メディア: Kindle版



花物語 下 (河出文庫 よ 9-2)

花物語 下 (河出文庫 よ 9-2)

  • 作者: 吉屋 信子
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2009/05/30
  • メディア: 文庫




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