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柳井隆雄脚本・渋谷実監督『母と子』1938年を見る [ドラマ]

A mother and a child (1938)
https://www.youtube.com/watch?v=1aelclEC2mA

原作は矢田津世子。坂口安吾と深い関係にあった女性作家である。

以下の記事を読むと、なるほど当該映画の原作を書くことができたわけだと思う。

坂口安吾と矢田津世子
http://www.asahi-net.or.jp/~hm9k-ajm/musasinobunngakusannpo/sakagutianngo/sakagututoyada.htm

監督は渋谷実。脚本は柳井隆雄。本品は柳井の出世作のようである。実際のところ良くできている。ウィキペディアの「柳井隆雄」の項目に以下のようにある。

《矢田津世子の短編『秋扇』を脚色した1938年『母と子』は、新人監督渋谷実がよく活かして社会劇に仕立て、柳井を一躍一級作家と評価させた[1]》
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%B3%E4%BA%95%E9%9A%86%E9%9B%84

当該映画では、めずらしく佐分利信が、わるい役をやっている。自分の出世のためにそれまで親しくつきあっていた女性(水戸光子)を捨てる役だ。捨てて選んだのは、会社重役の庶子である。専務のメカケの娘だ。その役を田中絹代が演じている。

絹代さんは、母思いの娘を演じている。母にやさしく接してくれる人物と期待して、父親の勧める男(佐分利)との結婚を視野に入れたものの、男の真相を知ってその縁談を破棄する。

絹代さんは、父や兄など周囲の人々がどうであれ「純粋」に生きていこうとするが、世の中全体はそうは動いていかないし、動いていない。そのような世の中の既成の動き「常識」ともいうべきものが、本映画の主人公かもしれない。

母の死に際しても、父親は泣くこともない。なにかとカネのかかるメカケの死の報に「ホッとしたろう」という友人の言葉は否定するものの、実際のところホッとしているのだろう。ラストシーンは、父親が株主総会で会社の好成績を発表する姿である。

いつの時代もそうだが、女性の社会的立場について、いろいろと考えさせらる映画である。


母と子 [VHS]

母と子 [VHS]

  • 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
  • 発売日: 1992/11/21
  • メディア: VHS




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