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山本嘉次郎 監督『藤十郎の恋』1938年を見る [ドラマ]

Tojuro's Love (1938)
https://www.youtube.com/watch?v=WBWuFicJLOc&t=5381s

東宝映画の時代劇。

歌舞伎の世界を描いている。原作は菊池寛。

監督は山本嘉次郎。製作主任は黒澤明となっている。

芸術性の高い作品だ。映像がクリアでないのが残念である。時代考証も重ねて作成されたのだろう。エキストラの数にも目をみはる。潤沢な資金が投じられたにちがいない。

藤十郎を演じるのは長谷川一夫。現代劇ではそうも感じないが、時代劇でかつらをつけた長谷川の男の色気はすごい。やはり文句なしの美男子である。

それに対する恋の相手役の「お梶」を演じるのは入江たか子。当時、まだ三十路に入っていない。カネ(お歯黒)を塗って、眉を落とした未亡人役であるから、本来の魅力半減になっているが、ほんの少しでる娘時代の映像が、魅力を倍増させている。

これまで入江たか子の映画を数本見てきた。美しい人である。深い魅力を感じる女性である。たたずまい、表情、しぐさ、話し方など、日本人の美意識をくすぐるものがあるのだろう。

(以下の映画『まごころ』は、当該映画の翌年の作品である。入江が母子家庭の母親役を演じている)。

まごころ
https://www.youtube.com/watch?v=y_vw7iB_kKc


おはなしは、悲恋物語である。原作者の脳裡には執筆にあたって、芸術至上主義を唱えて『地獄変』を記した友人芥川龍之介のことがあったかもしれない。芸(術)のために、生身の人間の感情を踏みにじるようなことを藤十郎はおこなう。それがもとで、「お梶」は自殺することになる。

原作を読んでいないのであくまでも映画の流れから察しての話だが、藤十郎はお梶を愛していたのだろう。告白することで「お梶」の気持ちをもてあそぶことに結果としてなってしまったが、その気持ちに偽りはなかったのではなかろうか。「お梶」が自殺して後の藤十郎の演技からそれが伝わってくる。もし、そうであれば、それが芸術至上主義を唱えた芥川への応答になっているのだろう。

と、書いてハズレていたらまことに恥ずかしい。

これから、原作を読んでみようと思っている。



藤十郎の恋・恩讐の彼方に (新潮文庫)

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  • 作者: 寛, 菊池
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1970/03/27
  • メディア: 文庫



黒澤明 DVDコレクション 59号『藤十郎の恋』 [分冊百科]

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  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2020/04/07
  • メディア: 雑誌




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