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成瀬巳喜男脚色・演出『旅役者』1940年を見る [ドラマ]

成瀬巳喜男脚色・演出『旅役者』を見る。

昨日更新の『歌行灯』と同じく成瀬作品だが、

だいぶ雰囲気は異なり、こちらはユーモア感たっぷりである。

Travelling Actors (1940)
https://www.youtube.com/watch?v=hd_cPxXKT24

原作は宇井無愁の『きつね馬』。

原作者 宇井無愁は『20世紀人名辞典』に次のように示されている。

《「昭和期の小説家,落語研究家。・・(昭和)14年には「きつね馬」が直木賞候補作となる。15年の第1回ユーモア賞受賞を機に、以後ユーモア作家として文筆活動に専念する。ほかの著書に「パチンコ人生」「日本人の笑い」「落語のふるさと」などがある》。

日本人の笑い (1969年) (角川選書)

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  • 作者: 宇井 無愁
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2021/02/25
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当該映画は、(「尾上」ではなく)「中村菊五郎」という怪しげな旅回り一座で「馬」の役に扮する二人に焦点を当てている。馬の着ぐるみに入って、前脚と後ろ脚をする役である。

一座がかけている演目は、三遊亭円朝作『塩原多助一代記』の「青(馬)の別れ」(当方は、古今亭志ん生の落語を聞いていたので、ソレだと分かった)。

古今亭志ん生 塩原太助一代記 青の別れ
https://www.youtube.com/watch?v=Ajfsl0WLoNY


塩原多助一代記 青馬の別れ

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  • 出版社/メーカー: SMDE
  • 発売日: 2018/04/25
  • メディア: Audible版



そのハナシで「馬」の役目は重要だ。

その役にかける役者の一途さ、一生懸命さが可笑しさを誘う。

その大事な役をホンモノの馬に奪われるハメになってしまうのだが、そのときの台詞がいい。

唾棄するように言う。

「ほんとうの馬に馬ができてたまるかってんだ」
46:15~46:30

座頭 中村菊五郎役を、『丹下左膳餘話 百萬両の壺』でクズ屋を演じ、なんとも言えないおかしみをだしていた高勢実乗(たかせ みのる)。馬の前脚を務める市川俵六を藤原鶏太(鎌足)、後脚を務める中村仙平を柳谷寛が演じている。

音楽もなんともトボケタいい味わいである。

昨日更新した『歌行灯』が能役者の至芸の世界とすれば、こちらは大衆演劇の世界である。芸を示し感動を引き起こすには、また、役を失うことにならないためにも、営為努力創意工夫が必要である。・・

・・などという陳腐でありながら大切なことを考える機会になった。


ついでながら・・
原作者 宇井無愁をネット検索していたら、次の論文に出会った。昭和初期を知るうえで参考になった。

昭和初期ユーモア文学における笑い
執筆者 金森 梓
http://rp-kumakendai.pu-kumamoto.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/1819/1/5705_kanamori_65_86.pdf


丹下左膳餘話 百萬両の壺 [DVD]

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