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菊池寛原作・成瀬巳喜男演出『禍福』1937(昭和12)年を見る [ドラマ]

菊池寛原作・成瀬巳喜男演出『禍福』1937(昭和12)年公開映画を見る。

Learn from Experience, Part 1 / 禍福 前篇 (1937)
https://www.youtube.com/watch?v=NiCCrFT9Oxw

Learn from Experience, Part II / 禍福 後篇 (1937)
https://www.youtube.com/watch?v=PIlqAtjXsVg

タイトルは「禍福は糾える縄の如し」という故事からきているのだろう。「禍」と思われたモノが「福」に転じたり、その逆に「福」と思われたものが「禍」となったりするのは、人生の実相と言っていい。

当該映画で「禍」は何かといえば、結果からいくと主人公男女の出会いであろう。だが、それは当初「禍」か「福」か分からない。

「禍福」は物事の裏表であり、表裏一体であると理解するのであれば、「禍」で憂い嘆き、「福」で喜ぶのは、安直な反応であると言える。自分の人生に淡々とできるなら、それが一番いいのかもしれない。とは言うものの、やはり、悪いことがあれば思いわずらうし、いいことがあれば嬉しい。それが人というものだ。

人生を生きている以上、禍福がつきまとう。だが、それが自ら招いたものである場合もある。「禍」にいたるタネを撒いて、「撒いた種を刈り取る」。それでいて、みずから蒔いたものであるにも関わらず、そうでないかのように嘆いたりする。他人のせいにしたりする。

当該映画では(それではあんまりにもあんまりだと言われそうだが)ひとことで言うなら若い時に陥りがちな愚行が描かれている。

もう少しヒロインが慎重であったなら、ヒロインの女友達が男を紹介しなければ、男に会いに連れ出さなければ、それに応じて出かけなければ、「禍」は生じなかったにちがいない。

しかし、それではドラマは生じない。

このようなドラマを通して、人生に対して慎重であるべきことを学ぶといいのかもしれない。


この時期の映画には、当映画と類似のパターンがよく出てくる。「書生さん」が将来有望と見なされた時代の話である。優秀な「書生さん」は、婿養子となって立派な家に迎え入れられた頃の話である。

当映画のヒーローは大学卒業間近で、外交官試験に通って未来の「外務大臣」と友人たちから見なされている。ヒロインの父親は年金生活者で、絹織物(当時の外貨を稼ぐ花形的産業だったのではないだろうか)を家業とする男の家とは家格が合わない。

男の「家」から見て、家格が合わない。あるいは、恩義ある人から別の女性(資産家)との縁談を勧められる。男の両親が女の出自を理由に家に入れるのを拒む。などなどの理由で結果、好きな男と結婚できずに終わる。それで、おまけに・・・というパターンである。いずれにしろ女性の方が苦労する話が多い。例をあげようとすれば、いくつも思い浮かぶ。


平穏なドラマであれ、「疾風怒濤」のドラマであれ、自分をドラマの主人公と見なせば(仮想すれば)、どんな嵐でも乗り切れる。なにがあっても面白がっていられる。

映画で描かれているのは、どこまでいっても、スクリーンの中のお話であるから、面白ければ面白いほどいい。「疾風怒濤」大歓迎である。

そして、その方が、誇張されていることも大いにあるだけに、分かりやすいし、学ぶこともできる。

このようなドラマを通して人は、自分の身にホンモノの嵐が襲ってきたときの備えとしてきたのかもしれない。

46 The Perfect Storm
https://www.youtube.com/watch?v=r16WcjrPEtU

North Sea Big Wave
https://www.youtube.com/watch?v=gPy2DHHnlqQ


南総里見八犬伝 全10冊 (岩波文庫)

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  • 作者: 曲亭 馬琴
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  • 発売日: 2021/02/22
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野村浩将監督『人妻椿』1936年を見る [ドラマ]

『人妻椿』
小島政二郎原作、野村浩将監督作品
1936(昭和11)年(前篇:10月4日、後篇:10月29日)公開映画。
The Married Woman's Disastrous Incidents (1936)
https://www.youtube.com/watch?v=dj0O5MyK-sw&t=70s

川崎弘子主演。川崎は貞淑な妻、佐分利信がその夫役。どちらもたいへん優れた人間として描かれている。零落しても美しく立派である。あまりにも立派に過ぎるので、ドラマ結末がもの足りないことになった。それほど立派でなければ、泥くさい裁判沙汰になって、よりリアルな人間ドラマとなったことだろう。そうなると、前・後編だけでなく、少なくとももう1本は必要になったにちがいない。

印象としては、はっきり言って「電動紙芝居」レベルである。たいへんスジの展開が面白く、それだけでも高評価に値すると思うが、ところどころに無理がある。たいへん無理がある。面白くするための誇張や飛躍がある。その点で、原作はどうなのだろうかと興味がわく。

先に「電動紙芝居」と書いた。後編冒頭で「前編の梗概」が語られる。それを聞いたとき、子どもの頃に聞いた紙芝居屋の小父さんのだみ声が重なって聞こえてきた。紙芝居もスジの展開が面白く、イイところで「つづき」となる。それでまた、小父さんが自転車でやって来るのを楽しみに待つわけだが、その小父さんの声色が蘇ってきた。映画冒頭の挿画は、有名な(挿絵)画家のものだろう。それを連続させた印象である。それは絵コンテに相当するものに思える。「ーキートルーオ」(右から左に読んでください)をウリ物にしている作品であるので、サイレント時代の名残も大きいのだろう。演技やセリフに、「これは演技です。これはセリフです」と軽い注釈が付いている感がする。

とはいえ、デパートの火事シーン、砂浜から漁に出る船を押し出す様子などリアルで見ごたえがある。エキストラも多く出演し臨場感たっぷりである。

立派な人間とそうでない人間がはっきり色分けされている。立派でない人間は自己変革を必要とする存在として描かれている。反省し、変化を遂げさえすれば、過ぎたことは水に流そうという人間観である。

このような映画を見ながら、当時の人々は処世術をいい意味で学んだのかもしれない。「ああいういけ好かない人間になるのはイヤだ」、「ああいう人間になりたいものだ」と思いつつ見たのだろう。

この映画でも佐分利信はウルトラ善人役である。いいとこ取りである。実際の佐分利はどんな人だったのだろう。この映画にも出ている(加山雄三の父親)上原謙はウルトラ「二枚目」でありながら、そうではない面を見せるのを憚ることのないオモシロイ人物だったようである。それにくらべ、佐分利信の家族のはなしや当人のエピソードはあまり知られていない。それがかえって興味を呼び起こす。

・・と思って、「佐分利信 エピソード」でネット検索したら、『佐分利信 〜得難い風格と貫禄〜』と題して阿部十三氏が(自身のブログ 『花の絵』に)書いているのを見出した。「佐分利信・賛」とも言うべき内容だ。実際の人物もたいへん魅力的な方だったようである。

佐分利信 〜得難い風格と貫禄〜
http://www.hananoe.jp/movie/meiga/meiga058.html



人妻椿 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ケイメディア
  • 発売日: 2012/03/01
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名子役総出演 清水宏監督『風の中の子供』1937年を見る [ドラマ]

1937(昭和12)年11月11日公開 坪田譲二原作・清水宏監督『風の中の子供』
Children in the Wind (1937)
https://www.youtube.com/watch?v=PmHihB5lfJA

子どもの世界が描かれている。この時期の映画には子どもがよく出てくる。『風の又三郎』のように子どもたちの世界を描く映画もある。当該映画も、そのように括ることができそうだ。

当時、名子役として知られる者は多い。この映画に出演している 善太:葉山正雄 、三平:爆弾小僧 、金太郎:アメリカ小僧 、幸助:末松孝行 、正太:突貫小僧もそうだ。

『ウィキペディア』をみると〈菅原秀雄、「突貫小僧」こと青木富夫、「爆弾小僧」こと横山準、「アメリカ小僧」こと末松孝行、あるいは加藤清一(旧芸名加藤精一)とともに同時代の「松竹蒲田の名子役」として重用された〉と、(葉山正雄の項目に)出ている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%89%E5%B1%B1%E6%AD%A3%E9%9B%84

「アメリカ小僧」が末松孝行であるとすると、実際のところは名義を二つ使って末松が「幸助」と「金太郎」の二役をしているのだろうか。「あるいは加藤清一」とあるので、「アメリカ小僧」は加藤かもしれない。もし「金太郎」が加藤であるとすると、この映画には、菅原秀雄を除いた当時の「松竹蒲田の名子役」がフル出演していたことになる。(もしかすると、菅原もクレジットされていないだけで出演していたかもしれない)。彼らの演技をみるのも当該映画の楽しみのひとつである。

物語は、善太と三平の兄弟が、父親の不在(私文書偽造の嫌疑を受けて拘置された)期間の出来事である。一家の頭であり稼ぎ手である父親を失う時に家族が一気に「現在」を喪失し迷走していく様子が示される。嫌疑が晴れて「お父さん」の帰って来たことを喜ぶすがたは、今のおとうさんの多くにとってうらやましい限りなのではないだろうか。今般、こんなに素直に喜びをあらわしてくれるのは、愛犬くらいかもしれない。

私ごとだが、父親は昭和5(1930)年生まれである。それゆえ、この公開年をみると少年「三平」と父親が重なってみえる。映画のなかでオリンピックと前畑選手のこと、『ターザン』のことが話題にでる。水泳の実況中継を模して兄がしゃべり、弟「三平」が布団の上で泳ぐシーンがある。当時、シリーズとして公開されていたアメリカ映画『ターザン』を演じるジョニー・ワイズ・ミューラーが元オリンピック水泳選手だったとオヤジから聞いたことを思い出した。自身水泳選手だったので、ひとこと言いたかったのだろう。

子どもが子どもらしく輝いている。兄弟喧嘩や親と子の会話のちぐはぐもオモシロイ。


あの頃映画 風の中の子供 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 松竹
  • 発売日: 2013/05/29
  • メディア: DVD



風の中の子供 (坪田譲治名作選)

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  • 出版社/メーカー: 小峰書店
  • 発売日: 2005/02/01
  • メディア: 単行本




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夏川静江主演『放浪記』1935年を見る [ドラマ]

Wandering notes(1935)
https://www.youtube.com/watch?v=6zqL04rolpA&t=273s

『小島の春』で女性医師を演じた夏川静江が主演している。監督は木村荘十二。

小川正子原作『小島の春』1940年を見る
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2021-02-13


『放浪記』は成瀬巳喜男監督・高峰秀子主演で1962年にも公開されている。だが、そちらとはだいぶ趣がちがう。夏川主演版のほうが高踏な印象だ。高峰版(予告篇しか見ていないが)は、俗っぽさが出ていて、より原作・実際にちかいのではないか。簡単に言えば「泥くさい」。

Trailer 放浪記 (1962)
https://www.youtube.com/watch?v=ZzFF5X1THcs

夏川版は、フィルター処理されている印象だ。そこが戦前と戦後のちがいかもしれない。倫理観のちがいが出ているのだろう。泉鏡花原作『白鷺』の戦前の入江たか子版と戦後の山本富士子版のちがいも、そこにあるように思う。

泉鏡花原作/入江たか子主演『白鷺』1941年を見る
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2021-02-10


夏川版を見ていると(きっと、それは高峰版でもおなじに思うが)、主人公は「男を見る目がないなあ」と思う。つまらない男に肩入れして騙され、しっかりした男を袖にして損している。

当方は、林芙美子の作品を読んだことがない。それでも、どこで読んだものか忘れたが、記憶に残る林の言葉がひとつある。執筆の満足感について述べた言葉だと思う。

「仕事の終わった朝は、男なんかいらない」。


ついでながら、当該映画1:01:03~1:02:00で、主人公小林(夏川)と女給仲間(おトシ=堤真佐子?)とのやりとりが出ている。そこを見て、吉屋信子と「事実上のパートナーで戸籍上は養女となっていた秘書の千代」との関係は、このようなものではなかったかと思った。なんの根拠もないが、直観である。

吉屋信子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E5%B1%8B%E4%BF%A1%E5%AD%90

以下、当方未読

放浪記 (新潮文庫)

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  • 作者: 芙美子, 林
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1979/10/02
  • メディア: 文庫



自伝的女流文壇史 (講談社文芸文庫)

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  • 作者: 吉屋信子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/01/13
  • メディア: Kindle版




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製作主任 黒澤明『馬』1941年を見る [ドラマ]

Horse(1941)
https://www.youtube.com/watch?v=AlNNWsw9bjM

山本嘉次郎監督作品であるが、『ウィキペディア』によると、事実上は製作主任であった黒澤明作品と言っていいものであるらしい。

馬 (映画)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%AC_(%E6%98%A0%E7%94%BB)

戦時下の映画らしく、冒頭「心で感謝 身で援護」という標語が、それから、映画会社名が、さらに「東宝映画株式会社 合資会社 映画科学研究所 共同作品」と表示される。

「配役」など示された後、「東條陸軍大臣の言葉」と題して「飼養者の心からなる慈しみに依ってのみ優良馬-将来益々必要なる我が活兵器-が造られるのである」と出る。

馬が「活兵器」とされている。「いきへいき」と読むのだろうか。ゆえに本作品は「活兵器」の物語である。だが、作品そのものは、それほど軍事色はない。山本監督が「企画を通すために奇策を弄して、軍馬の育成を描く映画を作るべきだと軍に働きかけ、軍から映画会社に製作を命令させた」とウィキに出ている。(当時フィルムが配給制だったかどうか知らないが)2時間を超える情感ゆたかな映画にできたのも「奇策」のお蔭かもしれない・・。

内容は、東北(岩手)の四季を背景に、少女が馬を育てる物語である。

家族は、少女ほど馬を好きではない。彼女の気持ちを理解しない。そのような中、仔馬を育て上げる労苦が示される。

少女(小野田いね)を演じる高峰秀子は、当時16、7歳といったところである。その演技にはこころ揺さぶるものがある。いっしょに仔馬の成長を見守る気持ちになる。


黒澤明 DVDコレクション 31号『馬』 [分冊百科]

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  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2019/03/12
  • メディア: 雑誌




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成瀬巳喜男監督『はたらく一家』1939年を見る [ドラマ]

The Whole Family Works 1939)
https://www.youtube.com/watch?v=0f-w45p1_Iw

徳永直原作、成瀬巳喜男監督『はたらく一家』を見る。

昭和14年公開映画である。当時の庶民生活にたいへん近いように感じるが、いかがであろう。こうした羽目板の木造建築は、昭和40年頃もまだ残っていた。当方の目にも焼き付いている風景だ。

映画は、その羽目板の家々に新聞配達がジグザクに走る早朝の風景から始まる。それから、ちゃぶ台を囲んだ食事のようす。あわただしく食事をしているのは父親と働きに出ている息子たち3人。母親は、4人分の弁当箱にいそがしく飯を詰め込んでいる。

長女が「おかあちゃん」と呼びかけ、そのすぐ上の兄(5男)が「もう起きてもいい」と言うと、「まだ早いよ。もすこし寝てな」と母親に言われる。お爺さん、お婆さん、いちばん下の赤ん坊がコタツにいるのが映される。みな、男たちの食事が済んで、でかけるのを待っている。食事は、働く者のあとである。

徳川夢声が父親を好演している。いい役者である。セリフの間合いがすばらしい。『宮本武蔵』の朗読をおこない、当時の人々をラジオにくぎ付けにしたと聞いてはいたが、なるほどそうであろうと了解できる。それで、「ユーチューブ」に、夢声朗読の音源を探したが、ない。誰かアップしてくださると嬉しい。

11人家族の家計は、男4人が稼いでいるが、食うだけで精いっぱいである。母親は尋常小学校にかよう四男のわずかばかりの貯金をあてにしている。しかも、去年借りた分をまだ返していない。

そういう状況のなかで、長男は、将来を不安視し、家を出て勉強したいと言い出す。それが、この映画のストーリーの核になる。それを許せば、稼ぎ手をひとり失い、食うに困る状況になるのは分かり切っている。両親は思案する。母親は反対である。次男、三男は、兄が許しを得られれば自分たちの道も開けるように思っているようだ。みな向学心があり、成績優秀であるが、家計の問題から進学できずにきたようである。

こうした家庭は多くあったにちがいない。当方は北野武の家を想起しつつ見ていた。たけしの家も貧しかった。だが、母親のさきサンは、学問を身につけることが八方塞がりを打開する唯一の方法と考えた。だから、進学をすすめる。「まさる兄ちゃん」が勉強できるように、街灯の下に机を持って行き、懐中電灯で照らして勉強を助けたと聞いている。家計の苦しさの違いもあるかもしれない。子どもたちの優秀さ・可能性のちがいもあるかもしれないが、この映画の母親は現状を乗り切ることしか頭にない。

そういう苦しい暮らし向きながらも、父親は居酒屋で飲んでいい気分で歌をうたい、その報告をちいさな子どもたちから受けると母親は喜んでいる。息子たちは喫茶店に出向いてコーヒーを飲む。苦しい家計のなかでも、たのしみはそれなりに取り分けておきたいものなのだろう。苦しいから、なおさら娯楽が必用なのかもしれない。

当映画中、次男が喫茶店の娘と映画に行く約束をする場面がある。最近、昭和11年に東京調布に生まれたご老人(85歳)とお話しする機会があった。ご老人の子供の頃、映画は3本立てで、ニュースを入れてほぼ4時間だったこと。家族で見に出かけることのできる、今よりずっと身近な(お金のかからない)娯楽だったことなど伺うことができた。

ラストシーンは、希望と喜びの表現として、息子たちが繰り返し「でんぐり返し」をおこなう。森光子が『放浪記』のなかで、でんぐり返しをやったのは、もしかして、このシーンに触発されてのことからかもしれない。






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宮澤賢治原作『風の又三郎』1940年を見る [ドラマ]

Wind Mata Saburo(1940)
https://www.youtube.com/watch?v=bhJggNZWOVY

宮澤賢治の『風の又三郎』を映画化したものだ。

1940(昭和15)年の映画である。この時期の映画には子どもが給仕役でよく登場する。本映画では子どもがおおぜい登場する。描かれているのは子供たちの世界である。みな、子供らしく元気でいい。

転校生は、世界を異にする存在に見える。異世界を運んでくる雰囲気がある。又三郎は異界の存在。そういう感じがよく出ている。

監督は、島耕二。又三郎(高田三郎)は、監督の実子である片山明彦が演じている。

見ていてオヤッと思ったが、やはりそうだった。大泉晃が「一郎」役ででている。

嘉助のきれいな姉さん役を風見章子が演じている。

新編 風の又三郎 (新潮文庫)

新編 風の又三郎 (新潮文庫)

  • 作者: 賢治, 宮沢
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1989/03/01
  • メディア: 文庫


以下、当方未読

謎解き・風の又三郎 (丸善ライブラリー)

謎解き・風の又三郎 (丸善ライブラリー)

  • 作者: 天沢 退二郎
  • 出版社/メーカー: 丸善
  • 発売日: 1991/12/01
  • メディア: 新書



宮沢賢治論 心象の大地へ

宮沢賢治論 心象の大地へ

  • 作者: 岡村 民夫
  • 出版社/メーカー: 七月社
  • 発売日: 2021/01/09
  • メディア: 単行本




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山本嘉次郎監督『希望の青空』1942年を見る [ドラマ]

Hope youth(1942)
https://www.youtube.com/watch?v=12aC4Q-2ujI

コメディー映画である。

だが、しんみりする場面もある。人生について考えさせられもする。

錚々たる人たちが出演している。主演級がぞろぞろ出ている。高峰秀子 / 池部良 / 原節子 / 入江たか子 / 山本礼三郎 / 花井蘭子 / 霧立のぼる / 二葉かほる / 藤原鶏太 / 英百合子 / 中村メイコ / 大日方伝 / 音羽久米子 / 江川宇礼雄 / 月田一郎 / 佐伯秀男 / 高田稔 / 岸井明 / 細井俊夫 / 沢村貞子 / 大川平八郎 / 矢口陽子 / 羽鳥敏子 / 河野糸子 / 嵯峨善兵 / 深見泰三 / 伊達里子 / 進藤英太郎 / 小杉義男 / 御橋公 / 真木順 / 一ノ宮敦子といった面々だ。

お話はメーテルリンクの『青い鳥』を下敷きにしているようだ。

若いふたり(高峰秀子と池部良)の結婚話が持ち上がる。ふたり共に学生であり、まだ結婚には早いと感じている。ふたりの家族双方がイイ「縁」談であると応援する。それで、実際の結婚生活はどのようなものか、ふたりで池部の家の兄家族を訪問してみることにする。

ところが、みんな幸せそうでない。それにも関わらず結婚生活を維持している。若いふたりは訳が分からなくなる。

映画のラスト、これから嫁ごうとする姉(原節子)が花嫁衣裳姿で、若いふたりが結婚するにふさわしい(状態にある)ことを教えていく。ふたりは「青い鳥」を見つける。
1:29:45~1:34:10

縁談は「縁」がないと始まらない。そして、ふさわしい状態でないと結ばれない。

そんなことを考えさせられる映画だ。

青い鳥 (新潮文庫)

青い鳥 (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/02/15
  • メディア: 文庫



カツドウヤ自他伝 (1972年)

カツドウヤ自他伝 (1972年)

  • 作者: 山本 嘉次郎
  • 出版社/メーカー: 昭文社出版部
  • 発売日: 2021/02/15
  • メディア: -




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『渋沢栄一の原点』を見る [ドラマ]

昨日(2/14)の新聞掲載広告(鹿島建設)を見て知ったのだが、渋沢栄一をめぐる大河ドラマが始まったらしい。当方宅にはテレビがないので、広告を見なければ知らずじまいだった。

【追記(2021・4・12)広告主は鹿島建設ではなく、別の会社のもようです。清水?】

渋沢栄一については、しばらく前に、NHKラジオ R2『文化講演会』で二人の方から話を聞いた。一人は孫娘(鮫島 純子)さん。もう一人はフランス文学者の鹿島茂さん。

どちらの話からも、立派な人物であることを窺いしることができた。

誰にも分け隔てすることなく(つまり差別することなく)接した方であり、そして、いわゆる「スジを通す」方であったらしい。

孫娘さん(「娘」と言っても100歳ちかい方)は次のようなことを話された。

亡くなる直前、風邪をひいて伏せっていたが、面会(嘆願)にきた方(たしか母子家庭の生活向上をはかる会の方で、女性ではなかったか?)に、髭ぼうぼうのどてら姿で面会し、その後、そのことで関係する省庁に出向いたという。役所からは「出向くには及びません。こちらから出向きます」と言うのに、「お願いするのは私なのだから、こちらから伺います」と言って出向いたという。それで風邪をこじらせ、それが元で亡くなった話であった。(MDに録音してあったのですが、プレイヤーが壊れて再生できないので、記憶に従っています。ですから、不確かなところがあるかもしれません。・・)
【2017.08.20 あるがままの 生き方・祖父 渋沢 栄一に 学んだこと/鮫島 純子・さめじま すみこ・エッセイスト NHK 文化講演会】

最近の女性蔑視発言の誰かさんとは大いに異なるように思うし、人間的にたいへん謙遜であったことが伝わってくる。

孫娘さんの話していたことのなかに、平岡円四郎が出てくる。渋沢が一橋家(徳川慶喜が養子に入った)に士分で入るのに骨折った人物である。その方は、幕末のどさくさで早くに亡くなって(暗殺されて)しまった。後に、出世した渋沢は平岡円四郎への恩義を忘れず、平岡の娘さんを、(お金をただ上げて援助するというのでなく)書道の先生として孫たちが学べるように派遣し、つまり仕事のお世話をしていたということであった。

平岡円四郎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E5%B2%A1%E5%86%86%E5%9B%9B%E9%83%8E


そうした渋沢の生き方の原点には『論語』があった。渋沢には『論語と算盤』という著書があるので、渋沢が『論語』に親しんでいたことは多くの方に知られているが、実のところ『論語』全体を暗唱するほどであったらしい。そして、知識として所持しているだけでなく「三省」を日ごとに実践していたという。昨日、いつもどおり古い映画を見ていたら、渋沢の生地である深谷市(あるいは埼玉県)が製作したビデオに出会った。そこで、新井慎一氏が話していた。

渋沢栄一の原点 ~幕末・パリ・血洗島~
https://www.youtube.com/watch?v=ZfsEWAX5o74&t=461s

渋沢の場合『論語』ということになるが、いわゆる「座右の書」「座右の銘」があると、それはその(スグ「左」にいる)人物の生活・習慣に影響を与えるものとなり、それは生き方となり、ついには人格となる。渋沢は、その見事な事例といえよう。

当方としては、その点で『聖書』をお勧めしたい。聖書を「座右の書」とすれば、イエス・キリストのような人格を成長させることができる。・・

日本語・現代語訳聖書のお勧め・・
https://wol.jw.org/ja/wol/binav/r7/lp-j

舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

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  • 作者: 日本聖書協会
  • 出版社/メーカー: 日本聖書協会
  • 発売日: 1993/11/01
  • メディア: 大型本




先にあげた鹿島茂氏の講演がユーチューブにアップされている。

1/4 2020 04 19 渋沢栄一・その思想と 実践/鹿島 茂・かしま しげる・明治大学 教授 NHK 文化講演会
https://www.youtube.com/watch?v=aGCxKEC4ByY

孫娘さんのラジオ出演したものもユーチューブに紹介されている。残念ながら『文化講演会』はアップされていないようだ。

1/3 2020 03 01 祖父・渋沢 栄一の教え/鮫島 純子・さめじま すみこ・エッセイスト 明日へのことば NHK ラジオ深夜便 4
https://www.youtube.com/watch?v=Rb_j2VYq-yg

インタビュー 祖父・渋沢栄一の教え エッセイスト 鮫島純子さん
https://www.youtube.com/watch?v=dhiXezPplJc&t=177s



論語と算盤 渋沢栄一叢書

論語と算盤 渋沢栄一叢書

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2021/01/13
  • メディア: Kindle版





共通テーマ:日記・雑感

大佛次郎原作『雪崩』1937年を見る [ドラマ]

Avalanche(1937)
https://www.youtube.com/watch?v=elV8zS2C4W4

大佛次郎原作の長編を映画化したものだという。

中学生の頃、45年ほど前になるが、おなじく大佛の『帰郷』を読んだことがある。感動した覚えがあるのだが、筋はまったく覚えていない。

帰郷 (新潮文庫)

帰郷 (新潮文庫)

  • 作者: 大佛 次郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/02/15
  • メディア: 文庫



監督・脚本は成瀬巳喜男だという。長編を凝縮したためか、「いかにもセリフ」といったセリフ、「セリフのためのセリフ」が多い気がする。また、ところどころ個人の心理状態が示される。ストップモーションになって内面を吐露するスタイルをとる。変わった演出をしたものだと思う。斬新といっていいのかもしれないが・・。

全体の印象としては安いメロドラマ風である。途中で見るのをよそうかと思ったがひととおりお付き合いした。セリフもスジも現実離れして感じられるからかもしれない。

総じて扱われているのは「生き方」の問題と言っていいだろう。

日下五郎はお金持ちの息子で苦労を知らない。自分の心の赴くままに生きようとする。その父親は、彼を知る人たちから次のように言われている。「封建時代のいい意味での影響がまだ残っている」「他のカネ儲け一途のきたない奴らとはちがっている」「あの男はむかしから気骨があった」。自由奔放に生きようとする息子とその父親との対決が「生き方」の問題をあぶり出す。

日下五郎役の佐伯秀男は、『女の哀愁』でヒロインの幼馴染で、彼女を理性的に諭す役を演じている。あちらとはだいぶ趣の異なる役だ。そして、当該映画のヒロインである霧立のぼるとは一時期結婚関係にあったという。


当該映画について面白い論考がある。日下五郎という「ばかげたナルシストのお坊ちゃん」は、大佛が学生時代に指導者と仰いだ有島武郎を投影しているという内容だ。
以下、参考まで・・

大佛次郎「雪崩」を読む 04 有島武郎の影
http://goodfeeling.cocolog-nifty.com/camarade/2008/03/04_e925.html

以下、当方未読

有島武郎: 世間に対して真剣勝負をし続けて (ミネルヴァ日本評伝選)

有島武郎: 世間に対して真剣勝負をし続けて (ミネルヴァ日本評伝選)

  • 作者: 亀井 俊介
  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2013/11/10
  • メディア: 単行本




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