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泉鏡花原作/入江たか子主演『白鷺』1941年を見る [ドラマ]

The Egret (1941)
https://www.youtube.com/watch?v=9sSRK0-5r1A&t=67s

【疑似カラー&疑似ステレオ】 映画『白鷺』(1941年公開)
https://www.youtube.com/watch?v=UKgpv-0j9BQ&t=17s


『白鷺』。原作は泉鏡花。いわゆる文芸作品の映画化である。

ここで、入江たか子は没落していく家のお嬢さま役。お嬢様は、絵描きを敬愛し、絵描きもお嬢様を大切にしている。絵描きは亡くなり、お嬢様は、その一番弟子に好意を寄せるようになる。

お嬢様はたいへん優しい。だが、軟弱ではない。内面は強い。自分の意志を通す。弱い者を助けずにいられない。ついには、それが自分の首を絞めることになっていく。女中へ、芸者へと零落していく。とはいえ、それは他の人たちを助けるために選んだ道なのだ。

入江の美貌と、美貌とは不似合いな気性の落差が大きいだけに、当方は遠い明治を偲ぶ気持ちになる。当方の親しく知る明治女はみんな「強情」だった。

日曜美術館:小倉遊亀と梅
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2010-05-17

『白鷺』は、20年ほど後に再び映画化された。カラー作品で山本富士子主演である。その予告篇を見たが、とてもとても入江主演時とは趣が異なる。まったく別物になってしまっている。当方は、全篇を見ることができるとしても、見ようとは思わない。予告篇で十分。うんざりである。

「白鷺」(公開年月日 1958年11月29日) 予告篇
https://www.youtube.com/watch?v=PzGkOmdYGY0

入江主演の場合、映画全体がキリリと引き締まっている。原作者の意図をたしかに了解する人々が脇を固めているからであるにちがいない。背景となる時代を空気として肌身に知っている人たちが関わっている。役者たちもそうであるし、製作サイドもそうである。「台詞 久保田万太郎」とある。時代考証もしっかりなされているにちがいない。

ちなみに、最後は、たいへん泉鏡花らしくなる。つまり、怖い作品でもある。

鏡花原作ということであれば、入江たか子主演で『高野聖』を残してほしかった。脚本さえまちがえなければ、身震いするような妖艶な作品になったことだろう。


高野聖

高野聖

  • 作者: 泉 鏡花
  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2012/09/28
  • メディア: Kindle版




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