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菊池寛原作・成瀬巳喜男演出『禍福』1937(昭和12)年を見る [ドラマ]

菊池寛原作・成瀬巳喜男演出『禍福』1937(昭和12)年公開映画を見る。

Learn from Experience, Part 1 / 禍福 前篇 (1937)
https://www.youtube.com/watch?v=NiCCrFT9Oxw

Learn from Experience, Part II / 禍福 後篇 (1937)
https://www.youtube.com/watch?v=PIlqAtjXsVg

タイトルは「禍福は糾える縄の如し」という故事からきているのだろう。「禍」と思われたモノが「福」に転じたり、その逆に「福」と思われたものが「禍」となったりするのは、人生の実相と言っていい。

当該映画で「禍」は何かといえば、結果からいくと主人公男女の出会いであろう。だが、それは当初「禍」か「福」か分からない。

「禍福」は物事の裏表であり、表裏一体であると理解するのであれば、「禍」で憂い嘆き、「福」で喜ぶのは、安直な反応であると言える。自分の人生に淡々とできるなら、それが一番いいのかもしれない。とは言うものの、やはり、悪いことがあれば思いわずらうし、いいことがあれば嬉しい。それが人というものだ。

人生を生きている以上、禍福がつきまとう。だが、それが自ら招いたものである場合もある。「禍」にいたるタネを撒いて、「撒いた種を刈り取る」。それでいて、みずから蒔いたものであるにも関わらず、そうでないかのように嘆いたりする。他人のせいにしたりする。

当該映画では(それではあんまりにもあんまりだと言われそうだが)ひとことで言うなら若い時に陥りがちな愚行が描かれている。

もう少しヒロインが慎重であったなら、ヒロインの女友達が男を紹介しなければ、男に会いに連れ出さなければ、それに応じて出かけなければ、「禍」は生じなかったにちがいない。

しかし、それではドラマは生じない。

このようなドラマを通して、人生に対して慎重であるべきことを学ぶといいのかもしれない。


この時期の映画には、当映画と類似のパターンがよく出てくる。「書生さん」が将来有望と見なされた時代の話である。優秀な「書生さん」は、婿養子となって立派な家に迎え入れられた頃の話である。

当映画のヒーローは大学卒業間近で、外交官試験に通って未来の「外務大臣」と友人たちから見なされている。ヒロインの父親は年金生活者で、絹織物(当時の外貨を稼ぐ花形的産業だったのではないだろうか)を家業とする男の家とは家格が合わない。

男の「家」から見て、家格が合わない。あるいは、恩義ある人から別の女性(資産家)との縁談を勧められる。男の両親が女の出自を理由に家に入れるのを拒む。などなどの理由で結果、好きな男と結婚できずに終わる。それで、おまけに・・・というパターンである。いずれにしろ女性の方が苦労する話が多い。例をあげようとすれば、いくつも思い浮かぶ。


平穏なドラマであれ、「疾風怒濤」のドラマであれ、自分をドラマの主人公と見なせば(仮想すれば)、どんな嵐でも乗り切れる。なにがあっても面白がっていられる。

映画で描かれているのは、どこまでいっても、スクリーンの中のお話であるから、面白ければ面白いほどいい。「疾風怒濤」大歓迎である。

そして、その方が、誇張されていることも大いにあるだけに、分かりやすいし、学ぶこともできる。

このようなドラマを通して人は、自分の身にホンモノの嵐が襲ってきたときの備えとしてきたのかもしれない。

46 The Perfect Storm
https://www.youtube.com/watch?v=r16WcjrPEtU

North Sea Big Wave
https://www.youtube.com/watch?v=gPy2DHHnlqQ


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