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スポーツと戦争(1939製作「チップス先生さようなら」から) [ドラマ]

きのうは「海の日」で、きょうは何だ?とカレンダーを見ると「スポーツの日」だという。

「スポーツの日って、体育の日があるだろうが?」と思ったら、10月10日の体育の日が、スポーツの日に名称を変えて、日付も変更したという。そもそも記念日は特定の日を思い起こすために取り決められるものであろう。それを恣意的に変更するというのはヘンなものだ。結婚記念日が、10月10日の夫婦が、記念日を7月24日に変更することは、まずない。・・

いちいち文句を言ってもしようがないのでよすが、スポーツについてちょっと御託を並べてみる。暇つぶしにお付き合いいただければ嬉しい。

「チップス先生さようなら」という映画がある。1939年に製作かつ公開されたイギリス・アメリカ合作の映画だ。そのなかで、クリケットの対校試合が行われる。その勝敗に関して激しい感情の動く様子が描かれる。それを見ながら、浮かんだ思いは、スポーツはプチ戦争、あるいは、戦争訓練・予行演習なのだな・・というものだ。

たぶん、そのように思ったのは、映画の設定されている時代背景が戦争の時代であることからくるように思う。

チップス先生の勤めるパブリックスクールの生徒たちが出征する。そして、愛する生徒が戦死する。それを追悼する場面がある。校長が弔辞を述べる。重厚な講堂の壁には亡くなった生徒・OBの名前を刻む特設プレートが設置されている。そうした映像が流れる。

映画そのものは、戦争の悲惨さを伝えるものだと評価する方もいる。たしかに、一見そのように見えもする。上に述べたように、愛する生徒が死ぬのだ。そして、その妻となった人の悲しみとその遺児のことが描かれる。しかし、当方は、映画の製作年代を考えると、別の意味があったのではないかと感じるのだ。どこかで、そのような主旨のことが書かれていたのを読んだように思い、ネット上を探したが見出すことはできなかったのだが・・・

特設プレートに刻まれた戦死者の名前は「名誉の戦死」というものがある、ということを暗に示しているように感じる。チップスとある新入生の卒業生をめぐってやり取りする場面からも、その思いは増し加わる。その学校のOBには、16世紀に活躍したキャプテン・ドレイクがいるのだ。私掠船船長、かんたんに言うなら海賊の親分だ。とはいえ、それはイギリスの国益に貢献した。その名前は、学校の石造りの壁にしっかり刻みこまれている。永遠と思われるかのようにである。(フランシス・ドレイクのウィキペディアの項を見ると、パブリックスクールを出たようには記されていないので、あくまでもお話として創作されたものだろう・・)

そして、ながらく同じ学校に勤め、引退してからもそこに住み、高齢となったチップス先生の臨終の場面がラストシーンとなっている。感動的な場面だ。そこでは、戦死した愛する生徒の遺児(のその遺児?)が登場する。「生命は、(戦争で)切り断たれるかもしれないが、たとえ、そうであったとしても、あなたの生命は、あなたの遺児を通して生き続ける」と主張しているかのように、である。たとえ子供がいないまま亡くなるとしても、(チップス先生がそうであるように)「あなたを愛する者たちの思い出のなかで、あなたは生き続けるので安心せよ」と諭しているようでもある。

映画の製作された1939年といえば、第二次世界大戦の勃発した年である。年表的には、4月27日 - イギリスで徴兵制導入 4月28日 - ドイツがドイツ・ポーランド不可侵条約破棄を宣言 と、ある。「チップス先生さようなら」が封切られたのは、イギリス 5月15日、アメリカ合衆国 6月8日になっている。その半年もしない9月「1日 - ナチス・ドイツとスロバキアのポーランド侵攻。アドルフ・ヒトラーがT4作戦を発令」とウィキペディアにはある。

映画制作時の時代背景を考えつつ見たせいもあるが、そのように思ったという話である。


チップス先生さようなら (1939年の映画)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%B9%E5%85%88%E7%94%9F%E3%81%95%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AA%E3%82%89_(1939%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%98%A0%E7%94%BB)

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