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「歴史を語らせたら天下一品」と本郷和人がいう人物(サンデー毎日2023.7.2-9から) [歴史雑感なぞ]

本郷和人東大史料編纂所教授が、「掛け値なし」「古文書の解読能力は日本一」「歴史を語らせたら天下一品」「古文書に代表される歴史資料を、こんなに面白くみんなに伝えられる方は他にいない」という人物について『サンデー毎日2023.7.2-9』の連載「日本史 今までにない人物伝」p48,49で書いている。

サンデー毎日 2023年 7/2・9合併号【表紙:美少女戦士セーラームーン(イラスト)】

サンデー毎日 2023年 7/2・9合併号【表紙:美少女戦士セーラームーン(イラスト)】

  • 出版社/メーカー: 毎日新聞出版
  • 発売日: 2023/06/20
  • メディア: 雑誌


その人物は2020年から愛知大文学部長を務める 山田邦明氏。

どうして古文書解読に優れているかというと「書道を会得し」「草書体が頭に入って」いるからだという。多くの場合には草書体などに崩された文字をきちんと一字一句ときほぐすのではなく「ここは文書の決まりとして『恐々謹言』だな」「こういう内容が書いてあったら、次にはこの判断が出てくるだろうな」と予測しながら読み進めていくのだそうである。ところが山田さんは・・というわけである。

その山田邦明著『上杉謙信』を、本郷は「たいへんな名著」「戦国時代に興味のある方は、ぜひ買ってください。絶対のお薦め!」という。

上杉謙信 (307) (人物叢書)

上杉謙信 (307) (人物叢書)

  • 出版社/メーカー: 吉川弘文館
  • 発売日: 2020/08/31
  • メディア: 単行本


ところが、それに続く言葉は、「ただし、前もってお断りしておきますが、面白くはありません。え、名著なのに面白くないの はい、そうなんです。どういうことか、分かりますか?」である。


上記書籍は『吉川弘文館』からでている「人物叢書」シリーズの一冊。当方も数冊読んだが、「面白くは」ない。最近、読んだのものでは『南総里見八犬伝』と縁の深い『里見義堯(ヨシタカ)』、「遠山の金さん:遠山景元」の父上『遠山景晋(カゲミチ)』、黒田官兵衛また黒田如水こと『黒田孝高(ヨシタカ)』を読んだが、はっきり言って面白くなかった。

その理由を本郷は記していく。簡単にいえば歴史史実の確度の低いものを取り去り、庶民のねがいやら憧れやら、願望やらにもとづく物語性を排除すると、歴史的に立派な仕事ではあっても面白味のないものになってしまうということだ。

歴史の叙述スタイルの「編年体」と「紀伝体」、そしてさらに「卒伝」なる言葉をあげて本郷は説明していく。かんたんに言えば、歴史事実を箇条書きした本とわくわくどきどきの歴史物語とではどっちがオモシロイでしょうか、という話しである。『卒伝』について知りたい方は、どうぞ本文を・・

そうして本郷は次のように記す。「もう一度くり返しますと、山田さんはなにしろ歴史的なエピソードを膨大に頭に入れていて、しかもそれをどう利用したら話が盛り上がるか、演出のすべも熟知していた。にもかかわらず、確度の低い史料を拠り所にする方法を敢えて捨て、信頼できる上杉謙信像を叙述した。著者が一歩引くことで、これからずっと安心して参照できる歴史資料を社会に提供する。歴史学者として、とても立派な仕事だと敬服します」。

そして後、自分の連載の立脚点を示して結語としている。

「ただし、本コラムは山田さんの姿勢とは逆で、ぼくの思いを前面に押し出して書く、というものです。次回は、山田さんのお仕事も念頭に、ぼくなりの謙信のイメージを書いてみたいと思います」。

本郷の連載を知ってはいたが、実際に目を留め、通して読んだのは今回が初めてである。「古文書」と「吉川弘文館」「歴史叢書」といった言葉にからだが反応したのかもしれない。

なにはともあれ次回がたのしみである。

黒幕の日本史 (文春新書)

黒幕の日本史 (文春新書)

  • 作者: 本郷 和人
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2023/04/20
  • メディア: Kindle版



日本史を疑え (文春新書)

日本史を疑え (文春新書)

  • 作者: 本郷 和人
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2022/05/20
  • メディア: Kindle版



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