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明治おんなは凄かった [本・書評]


田中清玄 二十世紀を駆け抜けた快男児 (文春e-book)

田中清玄 二十世紀を駆け抜けた快男児 (文春e-book)

  • 作者: 徳本 栄一郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2022/08/26
  • メディア: Kindle版



上記書籍に田中とその母親のことが記されている。

哲学者の鶴見俊輔が母親について語ったことに似ている。

吉田松陰と後藤新平と小沢一郎
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2009-07-06

田中は1906(明治39)年、鶴見は1922(大正11)年の生まれで、母親はどちらも士族出の明治女である。

明治生まれの母親がどんなだったか知ることができる。

いまのおかあさんたちはどのように感じるだろうか。

******以下、引用**********

「函館の小学校に入学した頃、その余りの腕白ぶりに業を煮やしたアイは、田中を教会に通わせることにした。そこの日曜学校で、少しは素行がよくなると期待したのだが、それは見事に裏切られた。「この子は本当に言うことをきかん子だと。あんまりきかないからというので、メソジスト教会にもやられた。小学校四年か五年の時だった。しかし、牧師の言うことなんか面白くもなんともないんだよ。日曜日の朝九時からの日曜学校だった。行った印にルカ伝の言葉とかエホバの言葉などの入ったカードを毎回くれるんだが、いわばこれが出席証明書のようなものだ」(大須賀瑞夫『評伝 田中清玄』勉誠出版)

「俺は教会から帰る子供を待ち受けていて、カードを取り上げるとそれを家に持って帰って『行った』ということにして、本当はそこいらで遊びほうけていたわけだよ。ある時、牧師と会った母が、『息子がご厄介になっています。きかなくてさぞご迷惑でしょう』と言ったら、『いや、お宅の坊やは二回来ましたね。一度はお母さんと。もう一度は一人で。その後は全然来ませんね』。それを聞いて母は激怒したんだな。俺をひい爺さんの田中玄純の墓前に引きずってゆくと、首に短刀を突き付けて、ここでお前の首を刎ね自分は腹を切って先祖にお詫びすると。短刀といっても真剣だからね。本当に怖かった。謝ったよ。それからは行儀をつつしんで教会へ行った」(同)p86

田中はのちに共産主義革命に熱心になる。武装闘争をおこなう。そのことで母親は自決(自殺)するに至る。以下は、その遺書。

「私はお前のために死んでゆく。お前は私を裏切った。なぜなら、お前は共産主義者になって、上は神を冒瀆し、下は国民の皆様に非常な迷惑をかけている。このような非国民を出したのは私の責任である。私は、先祖及びお前の亡き父に対して申し訳がない。そこで一身に代えてお詫びを申し上げる。お前は、私の死を空しくすることなく、犯した罪はいかなる罪であろうと、全部申しあげ、刑はいかなる刑であろうとも、臆することなく立派に服し、もし死刑を宣告されたなら、会津の家老の孫らしく、潔く刑に就け。それが、母の願いである」p82

「田中が共産主義を捨てる「転向」を宣言したのは、(母親)アイの死から四年後、一九三四年三月である」。p84

評伝田中清玄 昭和を陰で動かした男

評伝田中清玄 昭和を陰で動かした男

  • 出版社/メーカー: 勉誠出版
  • 発売日: 2017/02/28
  • メディア: 単行本



舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

  • 作者: 日本聖書協会
  • 出版社/メーカー: 日本聖書協会
  • 発売日: 1993/11/01
  • メディア: 大型本




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