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渋谷実監督「十日間の人生」(1941)を見る [ドラマ]


渋谷実監督「十日間の人生」
Life in ten days
https://www.youtube.com/watch?v=PoSwPh-xDqE&t=122s

松竹映画でほぼいつもの出演者なのだが、映像の空気感がちがう。フィクションとしてではなく、ドキュメンタリーとして描こうとしているからだろうか。

エトロフ島でサケ・マス漁の仕事に出ることになったヤス(田中絹代)の出漁までの10日間の出来事。

それは漁を引退したばかりの老船長の10日間と重なる。

ヤスの父親をめぐる出来事によって、老船長とヤスとが交差する。

老船長は、息子との生活を楽しみにしていたが、それが結局のところ出来なくなる。


小林多喜二の『蟹工船』前夜という感じだ。描かれる「人生」は暗いが、陰々滅滅ではない。それは全編をヒューモアが覆っているからだ。とりわけ、老船長の人間味が救いとなっている。

社会保障もろくにない時代である。こうして皆が助け合って暮らしていたのだろう。そこに救いがあった。

老船長役の井上正夫をこの映画ではじめて知った。いい役者だ。このとき実年齢60歳。

井上 正夫(いのうえ まさお、1881年6月15日 - 1950年2月7日)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%95%E4%B8%8A%E6%AD%A3%E5%A4%AB


ヤスとその父親、老船長とその息子(高田浩吉)との関係から、親子とは何か考えさせられる。

また、男とはこうあるべきという理念が生きていたことが分かる。

老船長の犠牲は大きいが、展望はあかるい。



渋谷実 巨匠に渋谷実して異端

渋谷実 巨匠に渋谷実して異端

  • 出版社/メーカー: 水声社
  • 発売日: 2020/10/26
  • メディア: 単行本