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向田邦子新春シリーズ『隣りの神様』(1990年) [ドラマ]

向田邦子新春シリーズ『隣りの神様』(1990年)
https://www.youtube.com/watch?v=AkFUHqGWnQ8

以下、上記ドラマを見ての覚書。

昭和初期、軍人のもとに嫁いだ長女(田中裕子)は子どもができないために離縁される。出戻りが恥ずかしいこととされた時代である。次女(国生さゆり)は心臓に持病がある。二階の窓から通りすがる青年(中村橋之助)を見てこころを寄せる。手紙をしたためるが、返事がない。傷心を増し加えることがないようにと、長女と三女(曽根由加)が画策する。家族への思いやりが“自然に”示されていく。

くり返し見る。たいへんいい出来である。

先の更新で、向田ドラマのワク(枠)などと書いた。昭和の文化、風物詩、四季のうつろい・行事が示されればワクができる。そこに、家族の出来事・エピソードを放り込めばドラマになる。その中心となるのは、男と女の問題だ。『男どき、女どき』のように、政治の動きをドラマの中心に納めようとするにはワクが小さすぎる。それで、“無理な”ドラマ・人物設定になって、「噴飯もの」になってしまった。向田ドラマのワクの中に、政治は家族に影響を及ぼし困惑させる程度に示されてちょうどいいのだろう。

本作品で、昭和初期の都市伝説・怪人「赤マント」が重要な役割りを果す。本作品の脚本は、金子成人である。『わが母の教えたまいし』と同じである。『わが母・・』では、母の着物の裏地の色が特別な意味をもってドラマが展開するが、本作でも色に対するこだわりが示される。
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2021-07-13-1

「赤マント」が三女の夢に出る。ラストシーンにも登場する。その姿は「噴飯もの」であるが、果たす役割は感動的である。

赤マント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B5%A4%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%88

脚本家の金子成人をWikipediaで調べた。《倉本聰に師事。1972年に『おはよう』(TBS)で脚本家デビューするも論壇からは評価されず、・・・1976年に執筆した『大都会 闘いの日々』の一篇「急行十和田2号」が向田邦子に注目され、向田を通じて制作会社とのコネクションを築く[2]。》とある。

その[2]をクリックすると、《「鬼平」脚本家 倉本聰から学んだ「嘘を書くな」の厳しさ》と題して、金子成人氏の談話がでている。なるほど、「嘘を書くな」と叩き込まれた人ならではの作品なのだと思う。

*****以下、その記事の抜粋*****

脚本を書く上で倉本さんに言われ続けたのが「嘘を書くな」。

「日々の生活は日常会話で成り立っているわけだから、『ふだん使わない専門用語や唐突な説明なんか入れるな』と。筋立てありきだと、自分の都合のいいセリフを書いてしまうから、その人の心情に忠実に書け、と言うわけ」(金子さん・以下同)

そのためには人物設定が不可欠だ。

「倉本さんには『まず登場人物の、生まれてからこれまでの詳細な履歴書を作れ』と言われた。1人につき原稿用紙数十枚は書いたかなあ。すると、『親はどういう思いでこの子の名をつけた?』『ファーストキスの相手は?』と聞いてくる。なぜなら『その人の歴史を知らなければ、そのセリフは出てこないから』と。それが『嘘を書くな』ということなんだよね」

*****引用ここまで*****

以下、ついでながら
林真理子が語る向田邦子「思い出トランプ』
https://www.youtube.com/watch?v=4WefnIuUjyM

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「鬼平」脚本家 倉本聰から学んだ「嘘を書くな」の厳しさ
2020.10.28 16:00  女性セブン

 いつの時代も人気ドラマにはたくさんの名ゼリフが登場する。大ヒットしたTBS系『半沢直樹』シーズン2でも「おしまいDEATH!」「詫びろ、詫びろ、詫びろ……」など、たくさんの名ゼリフが飛び出した。

 こういった名ゼリフを生み出すのは脚本家だ。脚本家は、どうやって一人前となり、どうやって名ゼリフを生むのだろうか──。脚本家の金子成人さんに話を聞いた。

『鬼平犯科帳』(テレビ朝日/フジテレビ 1969~2016年)、『剣客商売』(フジテレビ1973~1983年)はじめ、多数のテレビドラマの脚本を手がけてきた金子成人さん。倉本聰さんに師事し、1972年にデビューするものの、出来栄えは散々。倉本さんから「ドラマとは何かをわかっていない」と説教され、1年ほど、名作映画の脚本を書き写すことに没頭。八千草薫の運転手をしながら倉本さんの脚本の清書をし、修業を続けた。

 数年後、『大都会 闘いの日々』(日本テレビ 1976年)に執筆した1話が向田邦子さんの目にとまり、「向田さんが制作会社に紹介してくれて、ようやくひとり立ちできた」(金子さん・以下同)。

 脚本を書く上で倉本さんに言われ続けたのが「嘘を書くな」。

「日々の生活は日常会話で成り立っているわけだから、『ふだん使わない専門用語や唐突な説明なんか入れるな』と。筋立てありきだと、自分の都合のいいセリフを書いてしまうから、その人の心情に忠実に書け、と言うわけ」(金子さん・以下同)

 そのためには人物設定が不可欠だ。

「倉本さんには『まず登場人物の、生まれてからこれまでの詳細な履歴書を作れ』と言われた。1人につき原稿用紙数十枚は書いたかなあ。すると、『親はどういう思いでこの子の名をつけた?』『ファーストキスの相手は?』と聞いてくる。なぜなら『その人の歴史を知らなければ、そのセリフは出てこないから』と。それが『嘘を書くな』ということなんだよね」

 自身の脚本で気に入っているのは、『松本清張シリーズ 天城越え』(TBS、1998年)で、刑事が迷宮入りした事件の資料を運んできた犯人に「重かったでしょ」とかけるひと言。

「犯人だけど証拠がないその男に対し、“資料の重さ”と“犯した罪の重さ”をかけたもので、はからずも出た!という感じだったね」

【プロフィール】
金子成人(かねこ・なりと)/脚本家。1949年長崎県生まれ。倉本聰さんに師事し、数多くの脚本を執筆。1997年第16回向田邦子賞を受賞。現在は小説家としても活躍し、『付添い屋・六平太』シリーズ(小学館)を発表中。



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