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向田邦子/ドラマ「我が母の教えたまいし」を見る [ドラマ]

向田邦子ドラマ劇場「我が母の教えたまいし」 田中裕子 小林薫 加藤治子
https://www.youtube.com/watch?v=mtZO8cfF8_s&t=1139s

昨日更新した『いとこ同志』が1994年で、当該作品は1989年というから、主演する田中、小林ともに5歳わかいことになる。いずれの作品でも、二人は結婚するかと思える役回りだから、その距離感が大事になる。その演技がひとつの見どころになる。

当該作品で、二人は結婚を前提につきあって3年になる。なかなか結婚できないでいる。その理由は、祝子(田中裕子)の病気にある。医師からはもうだいじょうぶだと言われているが、自分の身体(肉体)に自信が持てないでいるのだ。そして、それだけでなく、さらに理由がある。

「我が母の教えたまいし歌」はドボルザークの美しい曲だ。そのテーマを背景に、母親の「女」が語られていく。その「女性」性によって、「女だけのわが家」に疑惑が生まれ、影響が及ぶ。それは、教えられなくとも、子どもたちに受け継がれる。その受け渡しを仕方がないものと受け留められれば悩む必要はないが、自分もその「だらしない」面を受け継いでいるであろうと、祝子は悩んでしまう。

この作品のテーマは、当方に言わせれば「女」であり「肉体」である。人間を閉じ込めている肉体という枷に焦点が合わされる。そこから逃れようがないモノが示される。ドロドロした世界である。「女だけのわが家」で、初潮、つわり、妊娠、などが話題となる。肉体に注目している以上、物語は人間の世界から飛翔しようがない。「あなたはどうなの?」と問いかけられる。「おんなじ人間でしょ?」と問い詰められる。逃げ場を奪われる。否応なく考えさせられる。

まだ、向田作品のほんの一部しか見ていないが、そのような作品のテーマや傾向は、本作品に如実に示されているだけで、向田作品全体の特性ということになるのだろう。そして、実際のところ、人間は綺麗ごとだけではすまない。

結局のところ祝子は、満州にいる婚約者川島(小林)のもとに向かう。息を引き取る間際の「我が母の教え」がこころに響いたのだろう。母親をトータルに見ることができるようになったからということもできるかもしれない。人間はわるい面ばかりではない。いい面も多々ある。ともすると、身近な人間ほどわるい方ばかり見がちになるものだ。

以下、当方未読

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