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向田邦子『女正月』(1991年)を見る その1 [ドラマ]

向田邦子新春シリーズ『女正月』(1991年)
https://www.youtube.com/watch?v=Nwn9c42tRrc&t=72s

以下、上記ドラマを見ての覚書。

金子成人脚本。ドラマ冒頭と最後の方で、ワグナーの『トリスタンとイゾルデ』から「愛の死」が流れる。歌唱も入る。ビルギット・ニルソン+ハンス・クナッパーツブッシュ演奏によるものであるように思う。(追記:指揮はカール・ベーム https://www.youtube.com/watch?v=BaW_5qqCjCA

ワーグナー《トリスタンとイゾルデ》「愛の死」ニルソン (1)
日本語対訳付き
https://www.youtube.com/watch?v=FhtFbF02IVQ


トリスタンとイゾルデは、本来愛し合う仲ではないのに、しかも敵でさえあるのに、媚薬の働きによって愛し合うことになってしまった二人の話しだ。そのために、最終的に双方死ななければならなくなる。

トリスタンとイゾルデ (楽劇)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%82%A4%E3%82%BE%E3%83%AB%E3%83%87_(%E6%A5%BD%E5%8A%87)

その話を、下敷きにしているようだ。『女正月』はなかなか凄いドラマに仕上がっている。



『トリスタンとイゾルデ』は、ケルト起源であるという。いろいろ物語のバリエーションがあるようだ。それをワグナーが自身の音楽作品とした。しかも、それだけでなく、物語自体を書いている。たいへんな天才である。

ワグナーはたいへん惚れっぽい男だったようで、自分を世話してくれたパトロンの奥さんと親しくなってしまったらしい。それがプラトニックなものだったか、それ以上の道ならぬものだったかは知らない。それが、『トリスタンとイゾルデ』にも反映しているらしい。

これは余談だが、ギリシャ神話の最高神はゼウスということになっている。では、ゼウスが一番力が強いかというとそうではない。ゼウスも苦手とする相手がいる。恋心と性愛を司る神:エロースである。

Wikipediaの「エロース」の項目には、「ヘーシオドスの『神統記』では、カオスやガイア、タルタロスと同じく、世界の始まりから存在した原初神 (Greek primordial deities)である。崇高で偉大で、どの神よりも卓越した力を持つ神であった」と、ある。

エロースは、ゼウスでさえその力によって翻弄させられる手強い相手である。そのエロースがローマ神話に入って「クピド」「キューピッド」と同一視されるようになった。「背中に翼をつけて恋の矢(クピドの矢)を撃つ気紛れな幼児として描かれることが多い(Wikipedia)」が、実のところ、かわいい幼児などではない。その影響下に入って、道ならぬ恋に陥り、心中沙汰になることもあるだろう。実際のところ手怖い相手である。

(神話はこころの世界を具象化したものと聞く。古代の人々は、うまいこと形象化したものだと思う)


ついでながら、竹田 利奈さんの論文が、PDFでネット公開されている。
まだ全部読んでいないのだが、面白そうである。

『トリスタンとイゾルデ』における「愛の死」の考察
https://ci.nii.ac.jp/naid/120006580549


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