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林芙美子原作映画『南風』渋谷実監督 1939年 [ドラマ]

南風
https://www.youtube.com/watch?v=-wU_vzXATX0

原作は林芙美子。主人公の名前は「太宰菊子」となっている。林芙美子と太宰治は親しくお付き合いしていたようなので、太宰のイメージ、あるいはダダイスト的性格を付与しようとしたのかもしれない。そして、「キク」は芙美子の実母の名前である。自身の生い立ちもふくめて、作品に投影しているのだろう。映画のなかで死ぬ赤子は自身の象徴かもしれない。以上は、まったくの想像にすぎないが・・・

林芙美子
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9E%97%E8%8A%99%E7%BE%8E%E5%AD%90
林芙美子記念館 太宰治文学サロン協働企画展 「太宰と芙美子」
https://www.regasu-shinjuku.or.jp/rekihaku/pastevents/pastevents-thisyear/96135/

いわゆるネタバレにならないように書いているつもりだが、それでも「ネタバレだ!」とお怒りの方もいるように思う。次々古い映画を見ているが、後々思い出すためのヨリシロ(依代)に当該ブログがなればいいと思っている。だから、自分の書いたものを見て、おおよそを思い出せないようではしようがない。ふたたび映画を見て、なにごとかを考えようとする時に、はじめに見た映画に辿りつくためには、ある程度ネタをバラシておかないと、自身が困る。

当方としては、少々ネタをバラしたくらいで、作品の感動・感銘が薄れるようなモノは大した作品ではないと思っている。推理小説の(実際にそういう読み方をしたことはないし、そもそも推理小説を読みもしないのだが)結末を先に読んでもイイと思っている。結末を知って、それから折り返して逐一作品を読んでも、結末に至るその展開にたびたび仰天するくらいでないと凄い作品とは言えないように思っている。

と、言い訳をしてから書くが、つまり以下はネタバラしである。

と、思ったが、やはりやめた。印象だけ書くことにする。

印象は「捨てる神あれば拾う神あり」といったところか。野良猫をみつけて獣医に連れて行き大枚はたいて避妊手術をする方がいる。奇特である。いわば「拾う神」である。田中絹代という稀代の名優が演じるのでヒロインは血統証付き名猫のように見えるが、演じている内容からすると野良猫である。ツマラナイ男にダマされてはらまされ、行き場を失った女である。やはり、猫でたとえるなら、野良猫になるだろう。それを、拾う男がいる。「幸せにしてやりたい」などという奇特な考えをもつ。いわば、前科があるような猫だから、またしてもノラの性分を発揮し、同じことをしないとも限らない。それにもかかわらず、由緒ある旧家の飼い猫にしようとする。その奇特な男の母親は、世間体を考えるあまり野良猫を迎え入れるのに反対するのだが、あることをきっかけに息子の説得に応じる。回心する。そして、旧家の嫁として迎え入れることを暗示する場面で映画は終わる。新居の2階の窓が象徴的に用いられている。そこから入るあたたかい風が『南風』なのだろう。「捨てる神あれば拾う神あり」。拾う神様のあたたかい温情が、どうも『南風』ということのようだ。

渋谷実監督作品を、これまでいくつか見てきたが『本日休診』といい『或る女』といい暗い現実を描いているのだが、暗いままでおわらない。終わらせない。人生を肯定する包容力を感じさせる。楽観的なものが底流にある。映像もいい。演出もいい。いい監督である。


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