SSブログ

渋谷実監督『自由学校』松竹1951年を見る [ドラマ]

自由学校
https://www.youtube.com/watch?v=zOe51pgYQF8&t=202s

トットちゃんのいた「自由学園」の話かと思ったら、大違い。獅子文六の新聞連載小説を映画化したものだという。(と、書いてから調べたら、トットちゃん(黒柳徹子さん)の行ったのは「トモエ学園」だった。勘違い。)

映画の公開された1951(昭和26)年、日本はまだGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)支配下である。『ウィキペディア』によると、〈1951年(昭和26年)4月11日にアメリカ合衆国大統領のハリー・S・トルーマンがマッカーサーを解任した後、米陸軍のマシュー・リッジウェイ中将(就任直後に大将へ昇進)が最高司令官に就いた。翌1952年(昭和27年)4月28日のサンフランシスコ講和条約発効(日本の主権回復)とともに連合国軍最高司令官総司令部は活動を終了し、解体された。同時に、日本はイギリスやアメリカなどとの2か国間協定を結び、たとえば(旧)日米安全保障条約に調印して、アメリカ軍の継続した国内駐留と治外法権などの特権を認めた〉とある。だから、1951(昭和26)年は、ほぼ7年におよぶGHQ支配の最晩年である。日本国民は、良くも悪くもおおきな影響を受けた。

映画は、価値観の転倒した社会の夫婦の様態を描いている。夫が主で、妻はそれに従属するという夫婦のカタチが戦後ひっくり返った。社会の根幹を為す家族制度の転倒をシニカルに表現している。と同時に、日本の文化に及んだ価値観の転倒による多大な影響を示している。

映画のなかで「自由」は、誰からも後ろ指さされることなく昼寝を楽しめるかどうかで表されている。夫の給料では足らないとあくせく働く妻は、夫に昼寝を許さない。喧し屋のすさまじい妻を高峰三枝子。通信社を勝手にやめてしまった夫を佐分利信。家を追い出された(飛び出した)夫が、弟子になった浮浪者(モク拾い)を東野英治郎。当時の若者を象徴するかの男女を佐田啓二と淡島千景・・・。すごい顔ぶれである。そして、みな上手い。

獅子文六は、文学座の創立者のひとりである。「1922年に渡航。現地ではジャック・コポーが主宰するヴィユ・コロンビエ座や、ジュール・ロマンに代表されたフランス現代劇の観劇、研究に没頭(ウィキペディア)」したという。それが原作にも反映しているのだろうか。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8D%85%E5%AD%90%E6%96%87%E5%85%AD

フツウとは異なる前衛的な(つまり、変わった異色の)製作スタイルを見て、黒澤明の『どですかでん』を思い出した。

『自由学校』には、本作「松竹版」と「大映版」があるという。「大映版」も見てみたいものだ。

1951(昭和26)年
https://ja.wikipedia.org/wiki/1951%E5%B9%B4

連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%A3%E5%90%88%E5%9B%BD%E8%BB%8D%E6%9C%80%E9%AB%98%E5%8F%B8%E4%BB%A4%E5%AE%98%E7%B7%8F%E5%8F%B8%E4%BB%A4%E9%83%A8


自由学校 [VHS]

自由学校 [VHS]

  • 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
  • 発売日: 1991/09/22
  • メディア: VHS



日本の「アジール」を訪ねて: 漂泊民の居場所

日本の「アジール」を訪ねて: 漂泊民の居場所

  • 作者: 功, 筒井
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/10/24
  • メディア: 単行本




共通テーマ:映画