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五所平之助監督「伊豆の娘たち(1945)」 [ドラマ]

五所平之助監督「伊豆の娘たち(1945)」
The daughters in Izu (1945)
https://www.youtube.com/watch?v=wzrjghmBUQ8


当該映画に関して「戦意高揚を目的に製作されたが、結局戦時中はお蔵入りとなり、戦後初の封切映画となっ た」と『渋谷文化』サイトに示されている。
https://www.shibuyabunka.com/soft.php?id=9710

父親を河村黎吉、長女(25歳)を三浦光子が演じる。ふたりで料理屋を切り盛りしている。その関係から吉村公三郎監督『南風』の親子を思いだす。その映画では娘を高峰三枝子が好演している。あちらはちゃきちゃきの江戸っ子娘だが、こちらは伊豆の田舎娘である。当たり前だが、どちらも美人だ。

吉村公三郎監督『南風』
South Wind (1942)
https://www.youtube.com/watch?v=sen1MH5RTzA
9分10秒~

三浦光子の出演する映画は他に清水宏監督『家庭日記』を見ているが、まったく印象に残っていない。やはり主演格になると印象が断然ちがってくる。本映画を見て、はじめ川崎弘子と勘違いした。しかし川崎弘子より垢抜けした感がある。妹役の四元百々生もそうだ。二人ともタカラジェンヌっぽい。当時の(今はどうか知らないが)伊豆の田舎にこんな美人姉妹は生息していないだろうと思いつつ見る。

いつものことだが佐分利信がもてる役を演じている。料理屋の離れに住むことになった技師の役。会社の部長をはじめ、女工からの評判もいい。部長の娘も適齢期だ。

そういう中で、それまで20年来酒を飲まなかった父親が酒を飲むようになってモンダイが起こる。結婚をめぐる問題だ。仲人が大きな役割を果たしていた時代ならではのモンダイと言えるだろう。当人の意志などお構いナシに勝手に周囲が動く。そのドタバタが描かれる。桑野通子はシッカリ者の叔母さん役で出ている。世間(の噂)から姪っ子たちを守ろうとする大学出の産婆さんという役回りである。村の産婆さんには権威があったことが伝わってくる。

総じて言えば、コメディータッチの家庭映画ということになるだろう。日本女性とはこういうものでしたという標本のような映画とも言えそうだ。

戦後アメリカから敗戦国日本に進駐したアメリカ兵たちは、日本女性と接してメロメロになったそうである。アメリカ女性にはすでに失われてしまった女性性に参ってしまったらしい。高等教育などの関係で、いわゆるユング心理学にいうアニムスにアメリカ女性はやられていたが、日本女性はその影響を受けていなかったからだ。ちなみに、三浦光子さんのWikipedia記事によると「戦後の1946年、米軍中尉日系二世と結婚し渡米、のち離婚[2]。帰国後再び映画界に復帰する」とある。その米軍中尉も三浦光子の女性性にやられたのだろう。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E6%B5%A6%E5%85%89%E5%AD%90
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