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「兵役を拒否した日本人」がいた [歴史雑感なぞ]

ここのところ、当該ブログは終戦の日を控えて戦争特集のようになっている。

横井庄一、奥崎謙三、山口淑子、小野田寛郎、神風特攻兵などを話題にとりあげてきた。皆さん、戦争で苦しんだ。イヤな思いをした。戦友を失った。望んで戦争に行ったわけではない。やむなく出向いただけだ。そのような感想を述べている。

まとめれば、戦争はご免だ。こりごりだ。ということになる。それは、昭和一桁以前で(職業軍人は別とし)戦争を多かれ少なかれ経験した方にほぼ例外なく共通していえるように思う。

先の更新で、特攻兵に仲間を158人も一度に殺された元・米駆逐艦乗員と、元・特攻兵が面談した時のことを記した。〈目の前にいるのは、自分と同じ人間だ。戦争というルツボに放り込まれて、やむなく「敵」になっただけだ・・〉そういう実感が、互いの敵意、わだかまりを解く土台になった。https://bookend.blog.ss-blog.jp/2021-08-13-1

戦争は究極的には殺し合いである。参加する以上、殺すことになる。殺人である。それが、イヤなら、最初から参加しなければいい。戦争というルツボに入らなければいい。

国から、召集令状が届く。「赤紙」と言われた。誰もが内心は悲嘆しながらも「お国のため」と受け入れる。歓呼の声に送られて、嫌々ながら、しかし本心を顔に出すことなく入隊する。初年兵イジメなどというものがあって、たいした理由もなく殴られる。死ぬ覚悟をさせられる。「殴られるのがいやで、貴様、死ねるか」ということなのだろう。「貴様」と呼ばれて、ぶんなぐられる。入隊すればどうなるかわかっているのである。暗い気持ちになるのは当然である。送り出す家族にとっては、大事な夫、息子、兄弟を戦争にとられる。労働力を失う。戦地で果てるかもしれない。内心はイヤなのだが、それでも、赤飯を炊いて送り出す。

ほぼ皆して、いやいやながら、戦地に出向き、送りだしてきたのだ。それなら、初めから行かなければいい。送りださなければいい。

しかし、そんなことは口が裂けても言えない。法律などなくても、世間が許さなかった。「だって、みんなそうしてるんだよ」という話しになる。日本人のいちばん弱いところである。みんながそうしているとあらば、荒れ狂う海にも飛び込む。
「沈没船ジョーク」https://toeic-town.net/titanic-joke/

ここのところ見てきた動画から、徴兵されるとは「死」と似ていると思った。死は受け入れがたい。しかし、避けようがない。誰もが例外なく死ぬ。自分もいずれ逝かざるをえない。イヤなことだが、引き受けざるを得ない点で、死と似ている。ちがいは、困難はともなうものの、徴兵・兵役は拒否することもできなくはないということだ。

歴史をみていくと、戦時下という、同調圧力がはなはだしく強まる時にも、個人として選択する自由を行使し、兵役を拒否した人々がいた。もっとも、そのために国家から(世間から)自由を奪われた。弾圧を受け、収監された。当方は、それを岩波新書の『兵役を拒否した日本人―灯台社の戦時下抵抗』で知った。

兵役を拒否した日本人―灯台社の戦時下抵抗 (岩波新書)

兵役を拒否した日本人―灯台社の戦時下抵抗 (岩波新書)

  • 作者: 真美, 稲垣
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1972/07/20
  • メディア: 新書



『灯台社』の人々が兵役を拒否したのは、もっぱら信仰上の理由によるものだ。聖書の教えに照らして兵役を拒否した。彼らは第二次世界大戦下の日本・ドイツ・イタリア の 枢軸国陣営 においても、 アメリカ・イギリス・フランス・中国・ソ連 などの 連合国陣営 においても、その信仰のゆえに弾圧を受けた。

彼らは、今日でも活動している。『灯台社』とは、 ❝Watchtower❞ : Watch Tower Bible and Tract Society のことである。「灯台社」は戦後、名称を変え「ものみの塔聖書冊子協会」として現在も活動している。宗教法人としての彼らの活動が日本において制限弾圧されるようなことは生じていないが、現在『ロシア』においては、<"過激主義"組織の活動を組織し,それに参加し,または資金を提供した容疑がかけられて>、法人財産が没収され、多くが投獄されている。

信仰ゆえに投獄される
https://www.jw.org/ja/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9/%E6%B3%95%E7%9A%84%E9%80%B2%E5%B1%95/%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E5%88%A5/%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2/%E3%82%A8%E3%83%9B%E3%83%90%E3%81%AE%E8%A8%BC%E4%BA%BA-%E6%8A%95%E7%8D%84/

長くなった。言いたいことは、「戦争というルツボに入らナイ」選択は可能であり、そうした人々は実際にいるということである。

以下、当方未読

良心的兵役拒否の潮流―日本と世界の非戦の系譜

良心的兵役拒否の潮流―日本と世界の非戦の系譜

  • 作者: 真美, 稲垣
  • 出版社/メーカー: 社会批評社
  • 発売日: 2021/08/14
  • メディア: 単行本




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