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今井正監督『沼津兵学校』(1939)を見る [ドラマ]

The Numazu Officer Academy (1943)
https://www.youtube.com/watch?v=ZHTesjMJvj4&t=4533s

上記サイトでは、映画の公開年を1943年としているが、ウィキペディア allcinema など複数のサイトでは、1939(昭和14)年になっている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%BC%E6%B4%A5%E5%85%B5%E5%AD%A6%E6%A0%A1

実際にあった学校の話である。江戸・徳川が倒れたあと、徳川が移封された駿府・静岡に建てた学校だそうである。1868年(明治元年)開校であるという。映画冒頭、その説明字幕がでる。

徳川幕府が倒れた直後、"徳川の”しかも「兵学校」を、よく新政府が許可したものだと思う。秋月の乱、神風連の乱、萩の乱、西南戦争などの士族反乱が、この後、各地で起こるのである。とはいえ、開校してすぐ、「1870年(明治3年)に兵部省の管轄となり、1872年(明治5年)には政府の陸軍兵学寮との統合のため東京へ移転した(ウィキペディア)」とあるし、映画の中で大村益次郎も登場するので、開校時点において、ゆくゆくは政府軍として統合されることが見こされていたのかもしれない。原則として徳川の子弟が入学したことを考えると、主君(徳川慶喜)同様、彼らも新政府への恭順に徹するものと見なされていたのであろう。映画冒頭、彼らが薩長の人間:下役人に軽んじられる場面がでてくる。彼らはハラを立てはするものの、いさめられ、自制して矛を収めているのが印象的だ。

時代がおおきく変わり、士族と町人が同じ青雲の志をもつことができるようになった。とはいえ、今までもっていた価値観を変えるのはたいへんである。その軋轢、葛藤が描かれる。その狭間に身をおいたひとりの女性はたいへん苦しむことになる。

沼津兵学校の頭取:西尾周三は西周(にしあまね)を指している。演じるのは丸山定夫。井上ひさしの芝居『紙屋町さくらホテル』の中で劇団「さくら隊」を率いた実在の人物であることは知っていたが、当該映画ではじめて名前と顔が一致した。広島に投下された原爆で亡くなっている。

紙屋町さくらホテル
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%99%E5%B1%8B%E7%94%BA%E3%81%95%E3%81%8F%E3%82%89%E3%83%9B%E3%83%86%E3%83%AB

葛藤する士族と町人の間に挟まれて苦悩する女性役を花井蘭子が演じている。『丹下左膳 百萬両の壺』で、コミカルな役を演じていたのとは対照的である。

ちなみに、本映画は「今井正の第1回監督作品」。

今井正監督映画「 ひめゆりの塔」を見て、大いに笑う
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2020-09-10


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