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海軍省後援映画『怒りの海』1944年 を見る [ドラマ]

【疑似カラー&疑似ステレオ】 映画『怒りの海』(1944年公開)
https://www.youtube.com/watch?v=-x8g4ehXXJ8

スタッフもキャストも示されずに、いきなり始まる映画は初めてだ。『東宝』映画株式会社と呈示されたあと、「後援 海軍省」「情報局選定国民映画」「昭和十九年五月製作」の文字列が示される。それだけである。エンディングにも関係者名は出ない。

海軍の艦船をつくる技術屋たちの働きを取り上げている。中心にいるのは「世界有数の軍艦設計者としてその名を知られ、『軍艦設計の父』と呼ばれ」た平賀譲(ゆずる・1878~1943)。
https://www.dhbr.net/articles/-/1480?page=4

ワシントン軍縮条約、ロンドン軍縮条約の締結によって、海軍は軍艦を廃棄処分せざるを得なくなる。それで、主要艦船に代わる巡洋艦、駆逐艦の能力を高めることに腐心する。5000トンの能力を3000トンに載せようとする。

以下のようなやりとりがある。軍縮会議に出席した人物と平賀とのものである。

「あんた方に申し訳ない。わしらの力が及ばんでの。八八艦隊の計画にはわしら思い切り無理を言い、また出来ぬ相談も持ち掛けた。しかし、あんたらはよくその無理を受け入れて立派にわしらの期待にそってくれた」(それにもかかわらず、せっかく建造した艦艇を処分することになってしまった・・)

「主力艦を抑え(られ)れば巡洋艦で補ってみせます。量を抑え(られ)れば質で戦ってみせます」


そのための設計上の無理が後々事故を引き起こしたようである。

友鶴事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8B%E9%B6%B4%E4%BA%8B%E4%BB%B6

第四艦隊事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E5%9B%9B%E8%89%A6%E9%9A%8A%E4%BA%8B%E4%BB%B6

当該映画では上記の事故については触れられていない。

また、軍縮条約の締結が日本の国益になったという視点もない。他の資料によると建艦競争のための膨大な軍事費が日本国民の生活を圧迫していたが、それから解放したかの話もあるが、それがない。軍縮とともに退役せざるを得なかった軍人たちの悲哀も少なからず描かれているところを見ると、当該映画の視点は、あくまでも海軍の立場からのものと言えそうだ。

映画のラストは、第13代東京帝国大学総長となった平賀の学生たちへの挨拶と臨終シーンである。

臨終の平賀の思いに去来した映像ということであろう。(以下は当方の想像だが)全速力で走る巡洋艦から見る航跡がしぶきを上げる。流れる音楽は、しめやかな曲ではなく、軍艦マーチである。


軍艦造りのプロフェッショナル・平賀譲とは? 海軍の職人魂ここにありhttps://bushoojapan.com/jphistory/kingendai/2020/03/08/95866


10:なぜ「市民」・・(『日本海軍 400時間の証言』/「海軍反省会」を見て)
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2011-07-06


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