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清水宏 監督映画『女医の記録』(1941)を見る [ドラマ]

Female doctor's record(1941)
https://www.youtube.com/watch?v=xuKlUktKzd0

田中絹代が女医、佐分利信が小学校教師(訓導)の役をしている。

田舎に赴いた(特派されたと言っていいだろう)女医たちは、へき地医療ならではの問題に直面する。そこでは、癒しを得るために、未だ「ご祈祷」に頼っていたりする。西洋医学をゼニのかかる治療と敬遠する。健康・医療面だけでなく文化的な啓発をまだまだ必要としていた。

胸の病:結核が死病として恐れられていたころだ。罹患したことより、それを知られることを人々は怖れている。ツベルクリン注射を受けることも、単なる検査であるにも関わらず敬遠される。人々は、世間体・外聞を、ある意味、いのちよりも重視している。

善意で無償の医療が施されるにも関わらず、病気を伝え聞き訪問した女医たちを排斥しさえする。


1941年は戦時中である。昭和16年にあたる。田中絹代は1909年生まれだから、単純に計算して32歳である。

わたくし事になるが、当方の祖母は1910(明治43)年生まれで、絹代とほぼ同年齢である。母親は1933(昭和8)年生まれなので、映画中に出てくる子どもたちと交じっていても不思議ではない。実際、若いころの(もちろん、絹代さんのように美しくはないが)祖母や母親が出ているような思いで見ていた。

絹代扮する女医と佐分利扮する訓導はどうなるのだろうかと見ていたら、予想どおりに展開した。もちろん、監督の演出もあるだろうし、脚本にそう記されているのだろうが、絹代さんの一瞬の感情の変化から展開が読み取れる。それを表現できるのだからいい役者である。結末をすべて明かさないところも奥ゆかしくていい。

この映画でも、医学的知識を身に付け、教養を身に付けた医師や訓導の姿に「ノブレス・オブリージュ」を見たような気がする。そして、やはり、そうでなくてはならないと思う。また、そのような映画として仕上げられてあることを高く評価したい。

ノブレス・オブリージュ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%96%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A5

清水宏 (映画監督)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E6%B0%B4%E5%AE%8F_(%E6%98%A0%E7%94%BB%E7%9B%A3%E7%9D%A3)#%E4%BB%A3%E8%A1%A8%E7%9A%84%E3%81%AA%E6%98%A0%E5%83%8F%E4%BD%9C%E5%93%81

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田中絹代・笠智衆出演『簪(かんざし)』(1941)を見る
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2020-10-30

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