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田中絹代・笠智衆出演『簪(かんざし)』(1941)を見る [ドラマ]

田中絹代・笠智衆出演『簪』(1941)清水宏監督
https://www.youtube.com/watch?v=GolBF-p97SI

温泉旅館を舞台にした映画。間仕切りが襖(ふすま)である。客の増減によって相部屋が許容、容認されていた時代の話だ。簪(かんざし)が縁で人間関係が展開する。

今日とは異なる人間関係の濃さを知る。人間があい寄れば、見知らぬ者どうしでも、すぐさま「身の上話」をはじめる。そんな時代だ。

「袖ふれあうも他生の縁」という言葉が活きていた時代なのだろう。ささいな出来事が、人生を左右する。左右するのを「縁」という言葉で善しとしていく。

映画冒頭で「お天道さまに照りつけられるのはいい気持ちのもんだわね」というセリフがある。「これから先どうするつもり」、「あてはないけど、おぼろげながら分かってくるような気がするの」というやり取りがある。

今日では、人生はもっとずっと目的のあるもので、それに紐付かないものは、切り捨てていく。自分の目的に都合のイイものだけを「縁」として繋がっていく。当該映画では、そうではない。

そういう「縁」にもてあそばれるのを善しとするのは、ある意味、高次の生きざまであるようにも思える。モノや損得にしがみついていないのだから、世俗を超えている。

原作は井伏鱒二のようである。井伏さんは、カミュを読んでいたのだろうか。そんな気がする。

勝手な思い付きである。

簪 (映画)
『ウィキペディア(Wikipedia)』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B0%AA_(%E6%98%A0%E7%94%BB)

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