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ポール・デルヴォー展 夢をめぐる旅 [アート・美術関連]

埼玉県立美術館に、デルヴォーを見にでかけた。

会期終了が迫っているのを知ってあわてて出かけた。

ご存知の方は、ご存知だろうと思うが、まさにデルヴォーであった。


人によっては、その作風を思い起こして、多少ウシログライ思いを抱くかもしれない。

豪華な着衣を身につけた親と子そして裸婦とが、おなじ画面にたたずんでいたりする。

夜明けのすがすがしい光のなかを機関車が走り、画面中央でははだかの女たちが、こちらに向かって列をなし、ランプをたずさえてやってくる。

展覧会のテーマにも「夢」とあるが、不思議な夢をみている気分に陥るのである。画面を見ているというより、見入られている気分になってくる。


デルヴォーは、こどもの頃、ロウ人形や骸骨(人間の骨格標本)におおきく心を揺すぶられる経験をして、それがのちのちまで響いていたようである。

なるほど、画面を構成している着衣の女にしてもはだかの女にしても、ふつう以上の大きな目をしているが生気がない。ふつうの人間であれば、自然に現れるはずの表情が瞳に映しだされない。そこに複数の人間がいても、大きく目を見開いているばかりである。見ようによっては、同じ場にいながら、てんでばらばらの世界を各自が夢見ているようでもある。

描かれているのは人間ではなく、人間のカタチをしたただの人形なのかもしれない。鑑賞する者らは、デルヴォーに騙されているのかもしれない。どんなに肉感的でエロティシズムに満ちたものとして描かれていようと、ソレらは、作者デルヴォーによって、骨格を与えられ、肉を盛られ、うつくしい肌を与えられているただの人形にすぎないのだ・・。

じっくり絵を見ていると、自分もその絵を構成する一員として、画面のコチラ側で、アチラ側の人間(人形)たちと同じく夢を見ているような気がしてくる。もしかすると、自分もアチラの人間どうよう、生きているつもりでいるものの、実は、人間のカタチをしたナニモノカにすぎないのかもしれない・・・。


晩年、デルヴォーは視力を失っていく。そうしたなかで描いた作品が3点紹介されていた。「カリュプソー」(ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』に登場するニンフ)と題されたものと、「無題」作品2点である。

無題2点中の人物の目は閉じられている。作者名を伏せられ、誰の作品か問われたなら、シャガールと答えたくなる作品だが、どこか東洋的で、観世音菩薩像風である。

人間行き着くところは、やはり、宗教的な世界なのかもしれない。


画集ではジツブツが再現されていない。陰翳の微妙な差違が消し去られ、のっぺりとした画面となってしまって、デルヴォーの魂といったものが、消し去られてしまっている。

埼玉県立美術館所蔵の「森」という作品が、展覧会パンフレットに印刷されているが、あまりにもひどい。その他も同様である。作者の苦心したであろう光(光線)の処理が、死んでしまっている。

やはり、実物を見なくては作者と出会うことはできない、と改めて思った。


(以下、「インターネットミュージアム」のURL)
http://www.museum.or.jp/modules/jyunkai/index.php?page=article&storyid=89


ポール・デルヴォー 〔骰子の7の目 シュルレアリスムと画家叢書〕 (シュルレアリスムと画家叢書 骰子の7の目)

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