SSブログ

井上荒野、父・光晴を語る(NHKラジオ文化講演会) [講演会]

NHKラジオ文化講演会に井上荒野が登場し、「幸福の絶対値」(だったかな?)というテーマで話をした。

はじめ、「ウソツキみっちゃん」の娘だ。まあ、(聞かずとも)イイか・・、と思ったのだが、まさに父上・井上光晴のことがカタラレテイルのを知って、聴くことにする。


講演は不慣れなのであろう。つまりつまりエエなどとウナリながら話していく風なのだが、オモシロイ。

それほどオモシロイ内容を話しているわけでなくても、なんとなく笑ってしまう。きっと、人生のおかしみをいつも探っているような人なのであろう。そこはかとなく漂ってくるユーモアに運ばれて笑ってしまう感じである。


講演テーマにそって要約すれば、

話者の家族は世間的に変(ヘン)な家族であったが、育つ過程で変(ヘン)だと思ったことはなく、変(ヘン)だと思うようになったのはずっと後年になってからで、話者が、世間の基準をもちだして「フツウはこうだよね・・」とか、「ミンナはああしてる・・」などという言葉を持ち出すと、父・光晴は、「フツウってなんだ?ミンナってだれだ?」という風に、問い返し、そのような世間的な基準というものに振り回されることの愚かさを戒める風であった。思うに、ほんとの幸福というのは、世間標準や対世間のなかにアルのでなく、もっぱら個人に属するものではないか・・というような話だ・・、と要約できる。


が、父・光晴のウソツキぶりは群を抜き、さすがである。なにしろ、自分の出自までウソをついていたのだ。文学辞典など参照すると、「旅順」生れ、などとなっているが、実は久留米なのだという。

講演中紹介されていたが、子供の頃に、荒野が「カレーの国のお姫様」(だったかな?)という作品を書いたと父・光晴は作家仲間に自慢ぽく吹聴していたらしい。それを、親しかった瀬戸内寂聴が聞いて、エッセイなどで、荒野のことを書く際に、すでに紹介してきたのだが、たぶん、「ウソツキみっちゃん」のウソツキぶりを、これから出かける講演に先立ち突如思い出したのであろう。「これから講演で、荒野ちゃんのことを話すのだが、話していい?『カレーの国のお姫様』って書いたわよね・・」と聞かれたので、ナイと答えたという。

憎めないウソというやつであろう。小説などというものは、これはウソですからね、ウソなんですよ、どこまでいってもウソなんですからネ・・というのが前提でなされる所業である。だから小説家はウソツキに決まっている。

ウソも、「ほら男爵」ほどのホラであれば、もうただ笑うしかない。


ひどい感じ―父・井上光晴

ひどい感じ―父・井上光晴

  • 作者: 井上 荒野
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2002/08
  • メディア: 単行本



ほらふき男爵の冒険 (偕成社文庫2074)

ほらふき男爵の冒険 (偕成社文庫2074)

  • 作者: ミュンヒハウゼン
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 1983/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



nice!(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

トラックバック 0