源氏物語翻訳への情熱:現代作家たちの [本・書評]
今年は源氏物語が書かれて千年になるそうで、いろいろなところで、その特集記事が組まれたりしている。日経新聞の元旦第三部は、まさにソレであった。
その特集のなかで、当方が、注目したのは瀬戸内寂聴さんの談話。
瀬戸内さんの小説家として経歴は五十年以上になる。いつぞや、毎日新聞の記事のなかで九十九歳まで現役だった小説家野上弥生子さんとの思い出を記されていたのだが、そこから読み取れるものは、寂聴さんの作家としてのなみなみならない自負心だった。
まだ寂聴さん若かりし頃(実際おいくつの頃かはわかりませんが)、野上さんから、自分と同じように、軽井沢の別荘にこもって「たったひとりで書き続けること、アナタできる?」と問われたこと、ソレに対して、こころのなかで「できますとも」と答えたということが記されてあった。
その寂聴さんが、源氏物語の現代訳を完成させた。もちろん創作ではない。小説家としての仕事ではない。おまけに、既に、源氏の現代訳は、与謝野晶子も、谷崎潤一郎も、円地文子も完成させている。
当方、ドナルド・キーンさんが、谷崎の源氏訳に費やした時間は谷崎の仕事としてはモッタイナイものであり、他にすることがあったろうという談話をラジオで聴いたりもしていたのだが・・・
ナンと、寂聴さんは、元旦第三部のなかで次のように記している。
「五十年間小説を書き続けてきたが、これが結局一番大きい仕事だったと思っている」
こうした寂聴さんはじめ、他の名だたる作家たちの源氏訳への情熱を見ると、源氏物語は、一度はやはり、目を通しておくべきものであるように思われる。
下記の本は、河合隼雄さんが、源氏物語を心理学的立場から検証したオモシロイ本です。源氏物語の入門書となるようにも思われます。