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バレンタインデーの起源(ヨーロッパ祝祭日の謎を解く) [本・書評]

ヨーロッパ祝祭日の謎を解く

ヨーロッパ祝祭日の謎を解く

  • 作者: アンソニー・F. アヴェニ
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: 単行本

共立女子大教授(仏文学)鹿島茂さんが上記書籍の書評を書いている。

書評では、特に、バレンタイン・デーの起源を例に挙げているのだが・・・

論議のおしまいに「今後、この種の『不思議発見』では不可欠の文献となるだろう」と締めくくっている。

薀蓄貯蔵ひけらかし派にとって無くてはならないホンということだ。

 

少し長いが、正月のなかばと言うのにバレンタイン・チョコも出回っている昨今、バレンタインの起源について書かれた書評をマルゴト、以下に引用する。

*********

今年も街では2月14日のバレンタインデー狂想曲が奏でられようとしている。チョコレートが殺到するモテ系男にはいい日だが、チョコゼロの非モテ系男には屈辱記念日以外のなにものでもない。「今年もチョコはひとつも届かなかった」という思いが、女性ではなくモノを愛するオタク志向を一段と強めたと告白する男性もいるほどである。

ところで、天文学と考古学を結びつけた考古天文学の泰斗である著者によれば、女性が意中の男性にチョコレートを贈るというこの習慣、その起源を辿ると、古代ローマのルペルカリア祭に行き着くというが、この祭は「バイアグラの効果を試してみるための祝日のようなもの」だったから、男女のパートは逆だったようだ。

2月14日、狼女神ルペルカルを祭った洞窟で生贄のヤギを捧げた若者はそのヤギの皮で性器を覆い「大声で笑いながら(これが大切な点だった)走って丘の周りを一周する」。若者たちは途中で女性に会えば「ヤギの皮紐で彼女たちを一人残らず鞭打つこととされていた」。この不思議なパフォーマンスは「女性の不妊を治し、真冬の間に活動を停止していたあらゆるものの繁殖力を呼び覚ますためだった」。死の季節・冬が終わって豊穣の季節・春が始まるのを促すための祭りだったのである。

 

では、この異教的な男女の求愛の祭典に聖バレンタインの名が付されたのはなぜかというと、これには色々な説がある。著者が有力候補として挙げるのは好戦的な皇帝クラウディウス治下の3世紀に生きた若き聖職者バレンタイン。皇帝は兵員不足解消のため既婚者は徴兵免除という制度の撤廃を目論んだが、バレンタインは従わず若者たちの結婚式を強行したため、捕らえられ、死刑の判決を受けた。だが、若者たちはバレンタインを支持し、獄中に花束や共感の手紙を送り届けた。このバレンタインの処刑された日が2月14日に当たっていることから、200年後、ローマ教皇によって聖バレンタインの祝日と認定された。

 

とはいえ、ローマ教会は古代ローマ的な肉欲愛との混同を避けたので、そのままバレンタインが「愛の聖人」となることはなかった。変化が起こったのは14世紀、イギリス・ルネッサンスを担った『カンタベリー物語』のチョーサーが「鳥たちすべてがつがいになる日、バレンタインの日はそのためにある」と歌ってからである。 「エリザベス朝のイングランドでは、恋に落ちた者は誰もがその対象に愛のしるしを贈ることが許される日とされていた」

 

現代のバレンタインデーのチョコレートはどうやらこのあたりに起源があるらしい。というのも、女性の中にはお目当ての男性に媚薬の効果を持つ食べ物を贈ろうと「片手にナスとニンジンとバナナ、もう片手にはカキやイチジク」を持参したりしたからだ。この媚薬の食べ物が変化したのがチョコレートである。「チョコレートには、フェニルエチアミンという『愛の分子』が含まれている」。これに目をつけたのが1890年代アメリカの菓子職人で、以来、「ハート型の箱に詰めたバレンタインチョコレート」がバレンタインデーの贈り物リストに加わることになる。

クリスマス、ハロウィーン、メーデー、イースターなど、今日でも盛んな祝祭日の起源が暦と人間の営みの関係という観点からやさしく、しかも、学術的な厳密さをもって説き明かされている。今後、この種の「不思議発見」では不可欠の文献となるだろう。

 


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コメント 6

benny

はじめましてー

勉強になりました!

自分はバレンタインに女性にプレゼントをしようと思うのですが、どうでしょうか?
海外では男性からもバレンタインにプレゼントをするというのを聞きました。

http://www.mondera.co.jp/

思い切ってアクセサリーでもプレゼントしようと思っています。
良かったらプレゼントされてみてはいかがでしょうか…

仲間を増やしたいだけなんですけど…
by benny (2007-01-17 02:49) 

環虚洞

bennyさま
ご訪問ありがとうございます。
起源を辿るといろいろ勉強になりますよね。当方もバレンタインデーに関してコレホド詳しく情報を得たのはハジメテのことでした。オモシロがっていただければサイワイです。この手のハナシを喜んでいただけるのであれば、たいへん嬉しいことです。また、遊びにおいでいただければと存じます。感謝感謝であります。
by 環虚洞 (2007-01-17 05:51) 

ともの

私が中学生のとき、社会科の授業でバレンタインデーの話が出ました。
その男性の先生はバレンタインデーにチョコを贈る習慣について、

「あれは不二家が、売上げを伸ばすために始めたキャンペーンがきっかけだ」

と言ってました。
「まさか」と思いつつもずっと頭の中に残っていたのですが、やっぱり不二家ではなかったんですね。
by ともの (2007-01-31 20:32) 

環虚洞

ともの様
今度、同窓会のおり、「情報捏造(?)恩師」にチクチクできますね。
もっとも・・・とものさんは、そんなイヤミなことをしないか・・・。
by 環虚洞 (2007-01-31 20:47) 

kimamana_neko

nice!です!

バレンタインデーのチョコレートはずっと日本のチョコレート産業の陰謀だと思ってました。とても勉強になります。

ではホワイトデーはどうなんでしょうね。というかホワイトデーこそ日本企業の陰謀っぽいです。

では良いバレンタインデーを^^。
by kimamana_neko (2007-02-13 21:48) 

環虚洞

kuronekOさま
訪問・Nice感謝申し上げます。
当方も、「バレンタイン」も「ホワイト」も[不二家の陰謀]と思っておりました。それで、罰があたったのだと・・・。(これはjokeです)。
今後ともよろしくお願いいたします。
by 環虚洞 (2007-02-14 06:14) 

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