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自ら命を絶つのは美しい? [本・書評]

日本人の品格 』という本を図書館で見出した。

最近バカ売れした『国家の品格』の二番煎じかと思いつつ手にしたのだが、そうではなさそうだ。

太平洋戦争(中・終結)時に自決した人々についての本である。

 

「まえがき」をみると・・・

 

「終戦時に自決した軍人軍属は、『世紀の自決』によると五百六十八柱、さらに戦時中(玉砕地などで)おびただしい数の同朋が自決している。

その原因は・・・日本民族が連綿として受け継いできた美意識にある。

日本人のこの美しさは、自己犠牲という格調高い精神から生まれている。自己犠牲とは、自己保身や自己弁護の対極に立つ概念で、日本人の心性の美を象徴する言葉でもある。これは武士道の言葉でいえば『捨て石』である。名も求めず、立身栄達も望まず、天下国家のためなら、一身の安全などけしつぶのようなものだとする凛冽な無私の精神である。

人間の生命は何よりも尊い。だが、その尊い生命を捨ててもなお守らなければならぬものが人間にはある。それが究極的には、人間の人間たる所以といえる。

(中略)

戦後の日本はかの戦争に対する反省から、平和国家建設を目ざし、経済復興に全力をあげた。そして今日、世界有数の経済大国となったのだが、その代償として独立自尊の矜持を失い、誇り高き民族精神を忘却してしまった。これでは日本は、金はあるが心のない二流国とみなされても仕方がないし、経済万能、金権第一で進めば、やがて日本が国際社会から孤立するのは目に見えている。

それを防ぐためにもっとも重要で、かつもっとも有効な方法は、民族としての誇りを日本人全体が取り戻すことである。

現代の日本は、生命第一主義である。それはそれでよい。だが当然、そのアンチテーゼとして、生命尊重のみで魂は腐ってもよいのか、といった論が出てくる。人間が人間らしく生きるためには、魂の躍動、魂のきらめきが必要である。人間の魂がもっとも躍動し、もっともきらめくのはどんな時か。

それは、自己の生命と引き換えに他者の生命を救う時である。あるいは自己の生命と引き換えに、国家や国民の正しい在り方を示唆する時である。自決はその象徴的行為として位置づけられなければならない。なぜならば民族の誇りがそこに厳存するからである。

本書には様々な自決が取りあげられているが、世界史上でこれほど美事な自決者を輩出した国は、わが国以外にはない。人間性の尊厳あるいは人間の品格というものを考えるとき、この事実は千鈞の重みを持つし、日本人はこの事実を世界史上の偉観として誇りに思い、真に平和な世界を建設するための礎として、永く語り継いでゆかなければならない。」

 

当初、旧弊で偏った国家主義を煽る、旧軍賛美のアヤシゲな本かと思い、少々警戒したのであるが・・・

「日本民族が連綿と受け継いできた」はずではあるものの、今や過去のものとなってしまったかにも思える「恥を知る」こころ、「名こそ惜しけれ」の美意識や誇りについて、遠い民族的記憶を呼び起こさせる本として、素直に読んでよいもののように思える。

不祥事が生じるたびに、ミンナでアタマを15度傾ければ、責任問題はナントカ片付いてしまうようになった今日、責任を果たすとはドウイウことか考えるイイ刺激になるかもしれない。

日本のいちばん長い日 

「一死以テ大罪ヲ謝シ奉ル」と書き遺して割腹した阿南惟幾陸軍大臣など将官クラスから一兵卒までの様々な自決が取り上げられている。

 

 

スピルバーグの『太陽の帝国』で、捕虜となったアメリカ人の子どもが、日本軍の基地から出発する零式艦上戦闘機を見送るシーンがある。

それは特攻機であり、別れの水杯をして搭乗員は飛び立つのだ。

太陽の帝国 それを見送るアメリカ少年が、敬礼をするのである。

自分が捕虜として収容されている敵の陣営から飛び立つ敵の飛行機に敬礼をして見送るのである。

個人を超えたもののため、崇高な目的のために命を燃やすことソノモノへの、人種や敵・味方を越えた畏敬のようなものがよく描かれていたように思う。

 

・・などと書いてきて・・

オオ危険だ!とも、思う。

命を捧げるのは結構だが、"何のために"ソウスルカについては、知性をよくよく磨き、理性を働かせて選択・決定せねばオソロシイことになりかねない。

「国家のため」、「世界のため」・・・、こうした言葉が、チッポケな自己を燃焼させる大儀名分となりうるし、なってきたのだが、また、為政者たちが、自国民を戦争などに駆り出す際に用いてきた有効な言葉でもあるが・・・、それが結果として命を投げ出すに値しないモノであったと後に検証される場合も少なくない。

その点、よくよく警戒が必要である。

日本人の品格

日本人の品格

  • 作者: 北影 雄幸
  • 出版社/メーカー: 光人社
  • 発売日: 2006/05
  • メディア: 単行本


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