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三島由紀夫は遊び人(横尾忠則連載から) [生き方・人生]


週刊新潮 2023年8/3号

週刊新潮 2023年8/3号

  • 作者: 週刊新潮編集部
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2023/07/27
  • メディア: 雑誌


『週刊新潮』2023年8/3号に、以下のタイトルのグラビアページがでている。

札幌頭部切断殺人 娘の「狂気」の裏に「ロック医師」夫妻

「ロック医師」とはなにかと思ったら、娘の殺人をほう助した容疑の父親医師はコスプレ姿でステージに立ちロックを演奏する裏の顔があったというものだ。首を切断された被害者男性に女装趣味があったのは聞いていたが、切断を助けた容疑の父親には変装趣味があったということになる。この父親は、町医者ではなく、札幌市の中核病院の精神科医で、請われて講演もしていたという。それが表の顔である。

そのグラビアページは、詳細な記事の紹介部分となっている。残念ながら詳細記事の方は『楽天マガジン』に配信されない。「読みたければ紙の本誌を買って読んでね」ということだ。

少々落胆しつつページを繰っていくと、当該ブログ今回の更新のタイトルと関係するが、横尾忠則連載が出ている。この連載はもともとは『週刊朝日』に掲載していたものだ。『週刊朝日』が廃刊になるので執筆できなくなるのをさびしく思っていたら、『週刊新潮』が声をかけてくれたのだという。それでタイトルを「曖昧礼讃ときどきドンマイ」に替えて連載継続となった。『週刊新潮』もなかなか粋なことをやる。それだけ横尾さんの連載を高く買っていたからであろう。横尾さんは、著名人たちとの交際も広く裏話も多く知っているから、一読者として、雑誌を替えての継続を喜んでいる。

ということで、今回の横尾連載は、親しかった三島由紀夫に関するものだ。タイトルは

店内に響く大声で「もし、もし、三島由紀夫ですがね」

内容は、三島由紀夫には遊びの精神が全生活を覆っていたという話しだ。ちょっとした機会にも趣向をこらし演劇性を示す。それで、横尾さんをはじめ周囲の人たちを驚かせたりして楽しんでいたという。

記事は次のように始まる。

「多くの人が、悩み、苦しみ、悲しみ、怒りなどの感情から中々自由になれないのは『遊び』を知らないからではないでしょうか。(略)ここに行動そのものが遊びみたいな人がいます」

「行動そのものが遊びみたいな人」とは、もちろん三島由紀夫のことを指している。

「市ヶ谷の自衛隊に突撃するタクシーの中でも全員で高倉健の『唐獅子牡丹』を合唱するなんて、死を目前にしたその瞬間まで三島さんは遊んでいます。どこかで死を超越したところがなければ、本気で遊べないように思います。」

「三島さんは市ヶ谷の自衛隊駐屯地での切腹も、実に演劇的です。次々と集まってくる観客を前に、三島さんには切腹は苦痛というより快楽であったのではないでしょうか。三島さんの最後までもが、僕には遊びに思えて仕方がないのです。マッチョ的肉体美の創造も芸術行為でもありますが、芸術こそ最高の遊びです、と言えないでしょうか。」

と記事は終わる。

個人的に経験したこまごました事例を横尾さんはいくつも挙げているのだが、それは全部割愛した。三島には『札幌頭部切断殺人』の被害者、加害者とおなじく、変装趣味があった。三島の場合、『仮面の告白』などで公にしていたし、表の顔も裏の顔も周知されていた。

三島はローマ神話のヤヌスのような二つの顔をもつ自分の頭部を切断させた。被害者であり加害者でもあるような死に方をした。

その意識構造はどうなっているのか、今回の札幌の事件と重ね合わせて考えられるだろうか

そんな疑問が浮かぶ。

三島由紀夫であれば『金閣寺』を執筆したように、実際の事件を小説にして驚かせてくれたろう。

仮面の告白 (新潮文庫)

仮面の告白 (新潮文庫)

  • 作者: 由紀夫, 三島
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2023/07/27
  • メディア: 文庫



金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺 (新潮文庫)

  • 作者: 由紀夫, 三島
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2023/07/27
  • メディア: 文庫



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