SSブログ

屋根裏に誰かいるんですよ / ウディ・アレン自伝 [本・書評]

精神科医師の書いた以下の本のレビューを投稿。


屋根裏に誰かいるんですよ。 都市伝説の精神病理 (河出文庫)

屋根裏に誰かいるんですよ。 都市伝説の精神病理 (河出文庫)

  • 作者: 春日武彦
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2022/10/05
  • メディア: Kindle版



ウディ・アレン自伝を読み始める。

唐突ながら: ウディ・アレン自伝

唐突ながら: ウディ・アレン自伝

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2022/11/29
  • メディア: 単行本


アレンは、もともとはギャグ・ライターであったという。本書はその延長線上にあるようだ。ギャグに満ちている。人の死でさえも、深刻には記されない。以下は11歳のころの話を語るなかで記された部分。

《アンドルーもショービジネスの世界に少し憧れていた。顔立ちのいい男の子で、両親から小遣いをたっぷりもらっていた。ぼくも甘やかされていたが、それよりもずっとひどい甘やかされようだった。どれくらいひどいかというと、20代になって現実世界が不気味な笑みを浮かべて姿をみせたとき、それに耐えきれず窓から飛び降り自殺したほどだ。かわいそうなアンドルー。麻薬に依存して現実逃避し、最終的に病院の窓を開け放した。それはさておき、あの頃ぼくは夢見がちなませガキで、たまに地下鉄でタイムズスクエアまでいくと、街をぶらつき、映画を物色し、へそくりを使い切るまで遊びまくった。・・》p044

友人の自殺方法が(死傷者を収容する)病院の窓から(外に向かって)の飛び降りである。話を盛っているのだろうか。事実そうであったとしても、ブラックユーモアの類である。それでも、ちゃんと「かわいそうなアンドルー」と一言入っているので(死を軽く扱い、話題をすぐに切り変えていても)不謹慎の印象はあまりない(ように思う)。そもそも読者は、どこまで本当なのかわからないまま、それを楽しんで読んでいくような文章である。なにしろ、全体が以上のような調子なので、軽い話も深刻な話も、すべて矢のように流れていく感じである。このままのスピードで、アレン自身も死に突入していきそうである。みんなどうせ死んでいくんだから、死なんてどうってことないよという声が聞こえてきそうな雰囲気だ。

話しが時系列ではなくあちこち飛ぶ。ころころ変わる。ほとんど躁状態であるが、言い方を変えれば「軽妙洒脱」である。この感じは英語で読むとどんなかなあと思う。


Apropos of Nothing (English Edition)

Apropos of Nothing (English Edition)

  • 作者: Allen, Woody
  • 出版社/メーカー: Arcade
  • 発売日: 2020/03/23
  • メディア: Kindle版




共通テーマ:日記・雑感