SSブログ

李香蘭・木暮美千代『迎春花』1942年 佐々木康演出 満州映画協会 を見る [ドラマ]

迎春花
https://www.youtube.com/watch?v=2Nj1TyzwPzM&t=49s

はじめて李香蘭(山口淑子)の映画を見る。しかも、満州映画協会による作品。

女の友情を描いた作品と言えそうだ。恋の三角関係を描いたとも言えるが、見終わっての印象は「女の友情」である。実質的に、観客にとっては、当時の人気女優のふたり李香蘭と木暮美千代をみるための映画であったのではなかろうか。主人公の近衛敏明は、満州の叔父の運営する会社にやってきた帝大出の優秀な男性の役回りである。だが、あくまでも李香蘭と木暮美千代の引き立て役にしか見えない。コメディータッチのロマンス映画といったところか。

佐々木康が演出している。ウィキペディアをみると「早撮りの名人として知られ」「戦争中は松竹の他の監督が苦手とした戦争国策映画を撮り続ける」と、記されている。生涯に「映画作品168本、テレビ作品500本弱を撮った」という。驚異である。クリント・イーストウッドが監督として高く評価されている理由として、決められた期間に製作を終え、レベル以上の作品に仕上げるからだと聞いたことがある。「早撮り」して、しかも上映できるレベルにしてきたというのは、やはり素晴らしい監督であったのだろう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E3%80%85%E6%9C%A8%E5%BA%B7

佐々木監督の戦時中に製作した「戦争国策映画」の一つに、当該作品も数えることができるにちがいない。それらしい表現・陳述がでてくる。満州にやって来た主人公を歓迎する人物が、「南進するためにまず北を固めてかかるのが先決問題ですからな。日本民族の運命は究極において北にあるんです」というセリフもある。当時の国策、大陸・満州へ誘う映画とも言えそうだ。

「五族協和」が唱えられた時代だ。主人公は、満州人の家に下宿し、満州人の文化に馴染む努力をする。豚の足も頭も食べる。スケートもする。と、同時に碁を打ち、剣道を満州人に教えもする。

ハルビンでのロケも行われ、現地の当時の様子を知ることができる。

満州で少年期をすごした安部公房が五族協和について語っているのを聞いたことがある。日本の植民地政策で成功した事例として語られる台湾でのことを『死霊』の作者埴谷雄高が書いているのも読んだ。唱えている理想像とはだいぶ違った状況もあったようだ。

埴谷雄高と大岡昇平、その作風の違いのきたるところ(対談『〈少年〉と〈夢魔〉』から)
https://kankyodou.blog.ss-blog.jp/2015-11-15

そんなことを思い出しながら見たのである。


満州アーカイブス 満映作品映画編「迎春花」 [DVD]

満州アーカイブス 満映作品映画編「迎春花」 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ケーシーワークス
  • 発売日: 2015/08/05
  • メディア: DVD