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やっぱりすごい学者なんだなあ、小室さんは・・ [講演会]

小室直樹博士の講演がユーチューブにアップされているのに気づいた。

以前、教え子の橋爪大三郎氏の番組で「日本教」について話している様子を(同じくユーチューブで)視聴したことがある。それより以前の収録で、元気な印象だ。1998が収録年であれば、66歳ということになる。

The Spirit of Capitalism in 1998 小室直樹 Reprint
https://www.youtube.com/watch?v=0LLptWK9oqc


資本主義について語っている。ソビエト連邦が崩壊してロシアになり、エリツィン指導のもと(社会主義を否定して)資本主義にまい進したものの破産状態に陥った頃の講演のようだ。

資本主義を実践するには、倫理が必要であることを歴史から博士は説いていく。その倫理がないために、ロシアはマフィアのようなエセ資本主義になってしまったこと、そして破綻したことを説いている。

「社会主義で唯一、世界で成功した国がある」と博士は述べて間を置く。当方は、どこだろうかと考えた。キューバにちがいないと思った。そうしたら、日本であるという。資本主義の特徴に照らしていくと、資本家、企業は政府から独立して自由な活動をするべきだが、日本は官僚の支配下にある。それで、資本主義国のように見えるが、実は社会主義国の特徴を多分に持っている国なのだという。

先の当該ブログ記事で藤森かよこ氏を紹介した。女史が動画の中で話していたが、女史の知る中国人同僚教師は、日本は中国より社会主義国だと言って中国に戻って商売をしているという。ちなみに、藤森氏が影響をたいへん受けたと話す副島隆彦氏は小室直樹博士の弟子筋である。

小室博士は、ゆっくり間を置きながら、中国の科挙、ドイツのフッガー家、イギリスや隋の運河、海賊と海軍、依法官僚と家産官僚、一高帝大に郷党の期待を一身に背負って進学した人間と戦後の偏差値教育で東大法学部に進んで官僚になった人間とのチガイなど、話している。封建制から近代へと移行したはずが封建制を残存したまま近代のような姿をとってきた日本の資本主義がバブル崩壊後に陥っている姿は、ロシア社会主義がスターリンによる5か年計画によって大成長を遂げた後に、停滞したことと似ているという話はたいへん興味深いものがある。

古いハナシで聞くに値しないような思いでいたが、トンデモナイ。今の時代にも通用するし、活かすことのできる話に思う。1時間30分で講演を終え、その後質疑応答となっている。質疑応答する博士は、より元気になっている。当時ロシアから借款を求められていた日本が、どう対応すべきか答えているが、単なる経済分析をするだけでなく、対応策も複数しめしている。それが、笑ってしまう内容だ。

とにかく、とんでもない化け物のような学者だったのだと改めて思ったしだいである。


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