SSブログ

レオナルドxミケランジェロ展(三菱一号館美術館)から [アート・美術関連]

レオナルドxミケランジェロ展(三菱一号館美術館)に行ってきた。

http://mimt.jp/lemi/


案内パネルには「本展覧会では、二人の芸術家の素描を中心に紹介・・」とあり、展示の焦点はふたりの素描、デッサン。

案内パネルからさらに引用すると、「Dicegno ディゼーニョという言葉は、文字通りデッサンやドローイングを意味するだけでなく、まだ頭の中にあるアイデアや構想、つまりデザインも意味していました。頭に浮かんだイメージが、素早く正確な形になって現れるのが、素描であり、そのため素描には、しばしば完成品では失われてしまうような生まれたばかりのみずみずしい形や活き活きした線が見られます。」とある。

展示作品は、赤チョークをつかった薄い線で描かれたものが多く、(図録で見ると分かるのだが)、館内の光では何がなんだか識別できない作品もあった。

印象に残ったのは、パンフレットやチケットにも印刷されている2作品「少女の頭部」と「レダと白鳥のための習作」。もう一点「これは・・」と思ったのは、レオナルドの「髭のある男性頭部」。

それゆえ、本展のタイトル『レオナルドxミケランジェロ』をひとつの競技(勝負)と考えるなら、2対1でレオナルドの勝ちということなる。

しかし、生涯現役という観点からいくと、「フィレンツェのヴェッキオ宮殿の壁画における競作」の後、芸術(絵画・彫刻)作品の創作よりも、そのベースとなる解剖学の研究にレオナルドが入っていったことを考慮すると、芸術家としてはミケランジェロの方が上だったように思う。

レオナルドの素描は、数学的比率を考慮した精緻で、たしかなものではあるが、ふくらみがないように感じられた。最初に引用した案内パネルの言葉でいえば「生まれたばかりのみずみずしい形や活き活きした」もの、つまりは「いのち」があまり感じられない。

その点からいえば、しばらく前に見たモディリアーニのデッサンの方がはるかに衝撃的だった。たった1本の線が意味をもち、簡略化されたカラダの線の上に載せられた細密な女の首の生々しさにドキッとした覚えがある。

モディリアーニ展(国立新美術館)
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2008-04-13


今回の展覧会で、一番の収穫は、「天才」と称される二人だが、デッサンをさまざまな視点から描き、蝋や粘土で小さなモデルを制作し、それを元に大きな作品を制作していったことだ。その仕事の速さと完成度について賞賛されるミケランジェロだが、実際のところは、その下準備にたいへんな苦労をしていたということだ。

その点、〈ミケランジェロは「絵画と彫刻は共に素描から生まれた娘である」と語りました。〉と、パネルでも紹介されてあり、「娘」を生み出すためにどれほどの苦労をしたことか・・・。また、今回が世界で初めての長期展示となるという素描、聖書(創世記)の記述にあるイサクを犠牲に捧げるアブラハムのデッサンも2方向から描かれ、その線も錯綜していて、レオナルドの試行錯誤が分かる。


最後に、ミケランジェロの言葉を、案内パネルからもう一つ・・・

〈足か手、あるいは首といった部分だけでも、うまく描く方法を知っている人間なら、この世の被造物を全て描くことができるというのが私の意見である。 ミケランジェロ〉

「被造物」を造った造物主の存在が意識にあっての言葉にちがいない。簡単に言えば、ミケランジェロは、創造者:神を認めていたということだ。

『レオナルドxミケランジェロ』の勝負に、神を引き出してはなんだが、そういうわけで、もっとも優れたアーティストは、デザインやフォルムだけでなく「いのち」の創造者でもある神ご自身であるにちがいない。


もっと知りたいミケランジェロ: 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

もっと知りたいミケランジェロ: 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

  • 作者: 池上 英洋
  • 出版社/メーカー: 東京美術
  • 発売日: 2017/05/31
  • メディア: 単行本



もっと知りたいレオナルド・ダ・ヴィンチ 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

もっと知りたいレオナルド・ダ・ヴィンチ 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

  • 作者: 裾分 一弘(監修)
  • 出版社/メーカー: 東京美術
  • 発売日: 2006/05/30
  • メディア: 単行本



舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

  • 作者: 日本聖書協会
  • 出版社/メーカー: 日本聖書協会
  • 発売日: 1993/11/01
  • メディア: 大型本


以下、『レオナルドxミケランジェロ展』 2つ折りパンフレットの4ページ目からの引用

「15世紀イタリアで画家として才能を発揮し、建築、科学、解剖学の分野にまで関心を広げ「万能人」と呼ばれたレオナルド・ダ・ヴィンチ、10代から頭角を現し「神のごとき」と称された世紀の天才彫刻家ミケランジェロ・ブオナローティ。本展は、芸術家の力量を示す上で最も重要とされ、全ての創造の源である素描(ディゼーニョ)に秀でた2人を対比する日本初の展覧会です。素描jのほかに油彩画、手稿、書簡など、トリノ王立図書館やカーサ・ブオナローティ所蔵品を中心におよそ65点が一堂に会します。イタリアが生んだ2人の天才の「最も美しい」とされる素描、レオナルド作《少女の頭部/ 〈岩窟の聖母〉の天使のための習作》と、ミケランジェロ作《〈レダと白鳥〉の頭部のための習作》を間近で見比べる貴重な機会となります。」

3つの見どころ

1 ルネサンスの2大巨匠による希少な素描を見比べられる日本で初めての機会。

2 「最も美しい」とされるレオナルドの素描 《少女の頭部/ 〈岩窟の聖母〉の天使のための習作》が来日!

3 素描のほか、油彩画、彫刻、手稿、書簡など約65点を紹介。(うち日本初公開作品を含む。)


共通テーマ:日記・雑感