SSブログ

歴史家:磯田道史の安倍晋三・評 [歴史雑感なぞ]

以前、NHKラジオ「文化講演会」で『涙を流して読んだ古文書』という講演が放送された。講演したのは、磯田道史。たぶん、2013年10月13日(日曜)放送。

その中で、磯田は「中曽根(康弘)さんの回想録をつくったことがある」と話していた。その出会いは、磯田の政治、政治家、歴史に対する見方に影響を与えたようである。

以下、講演の関係する部分を、文字起こししてみる。

**********

(中曽根さんが)「キミたちはいいな」(というので)、「なんでですか」(と聞くと)

(中曽根さんは)「芸術家というのは作品を残しておけば必ずあとで評価されることがある。政治家はそうはいかないんだ。結果がすべてなんだ。要するに、すっごい悪い動機でやったとしても、すこい良い動機でやったとしても、そんなのは関係ないんだ。結果として国民に対して利益になったかどうか、その場のアレしかないんだ。だから、政治家は俗物なんだ。だけど、俗物中の練達者になっていかなければいけないんだ。」ってオッシャッテましたね。

それからですよ、私はあんまり善悪でモノを考えないようにしようと思ったですね。歴史上の人物を見るときに、善悪、自分の勝手な思い込みで読むのは良くないなって。だって、ワイロをすごいもらって自分の利益のためにやった結果がものすごく国民が良くなったり、国民をいい方向にもっていこうと思ったら、ものすごく国民が死んじゃったりとか、いうことを言った場合、政治家の場合だとどんなに動機が良くても結果が悪ければ許されないんですよね。

だから必ずしも、善人か悪人かという単純なレベルで歴史の評価は止めようと思ったのと、あと中曽根さんは大勲位になったり首相になったから幸せになってんじゃないんだと思いましたね。

***文字起こし、ここまで***

と語る磯田は、現首相安倍晋三をどう見ているのだろうと思ったのである。歴史上の人物を広く深く見てきた歴史家の安倍晋三・評とはいかなるものかと興味をもったのである。

それで、「磯田道史 安倍晋三」でグーグル検索したところ、

昔「満州」、いま「原発」「日本の生命線」なんてウソばかり 日本人よ、歴史に学ぼう保阪正康×磯田道史 2014・3・4
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38461?page=4

が、ヒットした。(以下、関係する部分のみ引用する)

*********

磯田:僕は安倍晋三さんの抱く愛国心というものは、近年の政治家にはないものがあり、一面では尊敬もしています。ですが、彼はある種独特な日本信仰を持った人間。こだわりが強すぎるタイプで、時折、とくに相手のある外交面では危うさを感じる。

保阪:あの人の愛国心というのは、「単色」というか。

磯田:単色でない愛国心というのは、偉大なる政治家には必須の資質です。第二次大戦時の英国のチャーチル首相とかは典型的な単色でない愛国心の持ち主でしょう。厚みのある文化教養を身につけていない人間が、権力の座を与えられると、単色の愛国心を持ちやすくなります。

保阪:軍人はその典型ですよ。戦前には単色の濃淡の差だけで、自分の考えとは違うと言って、殺し合いをしていたんですからね。

磯田:最近の政治的話題でいうと、多色すぎて絵が理解されなかった細川護熙さん、単色が心配される安倍さん。そういう感じがします。

保阪:都知事選の立候補者だった田母神俊雄氏なんかは、単色というよりもっと単純な色の単色ですよ。

磯田:愛国心は彩り多いものにしてほしい。この頃は文化教養をすっ飛ばして、なんだか金切り声でサッカー試合でも応援するような愛国心ばかりです。

保阪:そうですね。そして単色の愛国心が流行るときというのは、相手を罵るときに「売国奴」とかの言葉を使いがちなんですよ。

磯田:自分と意見の違う人を外国人になぞらえて蔑んでみたり。戦後日本の教育では「こんな日本が好き」が抜け落ちすぎていたのは確かですが、了見の狭い単色の愛国教育だけはけっして行ってはいけない。必ず妙なことになって日本の良さが失われるでしょう。

保阪:私達の先達である明治の日本人は、為政者でも軍人でも絶妙なバランス感覚を持って幕末の動乱と、日清・日露戦争を生き抜いたリアリストたちだったのにね。

***引用、ここまで***

他に、もう一つは

磯田道史氏「共謀罪は内心の自由に踏み込みかねない」「国民の側に心配があるのは当然」(報道ステーション 17/5/19)
http://www.asyura2.com/17/senkyo226/msg/126.html

名「散文家」チャーチル、その成功の秘密
http://kankyodou.blog.so-net.ne.jp/2015-11-09

「立て板に水」の安倍晋三と「アーウー」の大平正芳
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2015-09-08


無私の日本人 (文春文庫)

無私の日本人 (文春文庫)

  • 作者: 磯田 道史
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/06/10
  • メディア: 文庫



第二次世界大戦〈1〉 (河出文庫)

第二次世界大戦〈1〉 (河出文庫)

  • 作者: ウィンストン・S. チャーチル
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2001/07/01
  • メディア: 文庫



トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

トラックバック 0