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シベリウス交響曲全集(ユタ交響楽団=アブラヴァネル指揮) [アート・美術関連]

シベリウスがようやくワカッタ感じがする。

アブラヴァネル=ユタ交響楽団の全集を聴いて、だ。


Symphonies Nos. 1-7 (Complete)


ジョージ・セル、カラヤン、ヤルヴィなどのシベリウスを聴いてきたが、ちっとも面白くない。同じ短いフレーズが延々と続くばかりで、「なんだこれは・・」という感じで聴いてきた。

コリン・デイヴィスの全集が定評あるという話なので、図書館から借りたモノを録音などしてはみたものの、これもソノママお蔵に入ったきり。

それが、である。半信半疑、CDの安いこともあって、アマゾンのレヴューなど見ながら、ダマサレタつもりで、買ってみたのであるが・・、

聴いて、驚いた。「ユタ州などといったらアメリカ中部のどちらかといえば砂漠の乾燥したような気候ではないか、フィンランドのキーンと冷えた空気感をユタ州のオケの演奏から感じることなどあるだろうか?そもそも名の通ったオケではないではないか?指揮者ともども・・」など、疑いを抱いていたのだが、見事に裏切られた。

この裏切られた感じは、以前、カラヤン指揮のブルックナー「ロマンティック」を聞いてちっとも面白くなく、途中放棄してソレキリになっていたものが、ヨッフムのを聞いて、「ああこれだ・・」とワカッタ感じ。

2番の1楽章冒頭のヴァイオリンのボウイングの妙に、不覚にも涙が出そうになった。深山幽谷とまではいかないが、標高1000mの山中生活をしていた時期がある。そこで、耳にしたひぐらしのさわめきを思いだした。全集全体をとおして、感じるのは、静謐さ、透き通った空気感、広がり、である。残響の大きなホールでの演奏なのだろう。そうした要素もたくみに生かしている演奏にも思う。音の大きさによってではなく、消えていく余韻に強調効果を任せている風である。


購入したあとで、気が付いたのだが、音楽の友社(1993年)発行の「世界のオーケストラ123」というオケ案内書を持っていた。こういうものは、買う前に調べるものだが、まったく忘れていたのである。そこでは、ユタ交響楽団について福本健一が次のように書いている。(以下、抜粋)

「・・47年から音楽監督となったのが、このオーケストラの救世主的存在となったモーリス・アブラヴァネルである。/当時、メトロポリタン・オペラの最年少指揮者として活躍中だったアブラヴァネルは、敢えて音楽の一大中心地であるニューヨークを離れ、ユタでその才能を遺憾なく発揮した。彼は初め、とりあえず音楽監督に就任し、あまり長くその任にいるつもりはなかったらしいが、結局79年までの32年間も務め、このオーケストラに未曽有の黄金時代を築き上げたのである。当初、このオーケストラは貧弱を極めていたのだが、アブラヴァネルは誠実にトレーニングに取り組み、同時に演奏活動を活発化させて、やがてメジャー・オーケストラの仲間入りをさせたのである。この間にはヴァンガード、ウェストミンスター、ヴォックスなどに100点以上ものレコーディングを行っており、数々の名演で広くその名を知らしめた。・・」

ということは、このシベリウス録音は、1977年録音となっているので、ユタ・アブラヴァネルとの蜜月30年目ということになる。ひとつのオケと長く関係をもち鍛え上げたという点で大阪・朝比奈を思い浮かべるが、まさに手塩にかけた手兵の熟練の成果がここに出ているのだろう。

世界最古のオーケストラ、ゲヴァントハウスのドイツ風の渋いという音に憧れてコンビチュニー指揮のシューマン交響曲全集の輸入版を購入したが、(音そのものではなく)オケの力量不足に、裏切られた覚えがある。が、このユタ響・アブラヴァネル指揮のシベリウス全集からは、裏切られる“喜び”を経験できると思う。


Symphonies Nos. 1-7 (Complete)

Symphonies Nos. 1-7 (Complete)

  • アーティスト: Sibelius,Maurice Abravanel,Utah Symphony
  • 出版社/メーカー: Musical Concepts
  • 発売日: 2011/10/11
  • メディア: CD



ブルックナー:交響曲第4番

ブルックナー:交響曲第4番

  • アーティスト: ヨッフム(オイゲン),ブルックナー,ドレスデン国立管弦楽団
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2004/06/23
  • メディア: CD



オントモ・ムック/世界のオーケストラ123 (ONTOMO MOOK)

オントモ・ムック/世界のオーケストラ123 (ONTOMO MOOK)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 1998/12/10
  • メディア: 単行本



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