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想像力を頼みの綱として日航機墜落を振り返る [ニュース・社会]

スペースシャトルの墜落の時もそうだが、日航機123便の時もそうだった。

もちろん驚きはするが、どこまで行ってもやはり「他人事」なのである。当事者やその身内のような感覚にはなかなかならない。


日航機墜落の直後だったと思う。ボーイング社の仕事をしているシアトル在住の知人が日本に来た。部品調達で、諏訪とか日立とかを廻るのである。その通訳をかって出て、へたな英語を振り回していたのだが、時も時だけに、、「大きな事故になりましたね」という言葉がチラとなりとも出る。それを、伝えると、ボーイング社の知人は「たいへん遺憾です」と応じた。コチラとしては、ただ事実を事実として伝えただけであるのに、知人はあまりにも神妙な顔をして応じるので、コチラとしては、責めたててでもいるかのように受け取られてしまったことに、事故のことを話題に取りあげた者も、ヘタな通訳も、一緒に慌てた覚えがある。今にして思えば当然のことだが、話題にとりあげた当方たちより、ボーイング勤務の知人の方が、ずっと当事者としての意識があったのだろうと思う。


先日、「クライマーズ・ハイ」の著者横山秀夫さんの講演を聞いた。横山さんは、当時群馬県の地方新聞の記者として、墜落現場に入っている。「クライマーズ・ハイ」を書く以前に、ドキュメントとして書くことを企てたのだそうである。ところが、現場の惨状を思い出すと吐いてしまい、とうとう書くことができなかったと話していた。


やはりモノゴトを量るときに「想像力」を駆使せねばならないと思う。当事者や身内のように痛みを感じられるほどの想像力が必要であるように思う。横山さんの場合は、想像力を駆使するもなにも見たままの事実が目に焼きついていてイヤオウナく身体的な反応を引き起こさせるほどのものとなったにちがいないが、そのようでなければならないと思う。「他人事」ではイケナイと思う。


さきほど、「日航機墜落 生存者」と検索したら、「生存者の一人・落合由美さんの証言」というサイトがヒットした。http://www.goennet.ne.jp/~hohri/n-ochiai.htm
読んでいくと、当事者ならではの語る力に捉えられて途中でやめることができない。涙さえ浮かんでくる。隣の席に座っていたKさんのことや墜落直後聞こえてきた男の子のことなど、命の瀬戸際で他人のことを思いやる人間性につよく打たれるものがあった。


この時期、新聞等に、遺族の談話が掲載されるが、どれほど深く思い遣ることができるものか、「想像力」を頼みの綱としたい。


墜落の夏―日航123便事故全記録 (新潮文庫)

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クライマーズ・ハイ (文春文庫)

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