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村上春樹の新作 [本・書評]

村上春樹の新作が予約段階からバカ売れしているそうである。聞くところによるとその数はすでに70万部にものぼるという。

ノーベル賞候補にもあげられ、エルサレム賞受賞で話題となり、某論者によれば村上春樹は、「世界のイチロー」、「世界の松井」と同レベルの関心の対象になっているとのことだ。

春樹作品の翻訳をもっぱら担当してきた方の著作を読んで、当方は、作家として成長をとげていくひとりの人間としてハルキ・ムラカミに関心を寄せてきたのであるが、残念ながら主要作品は一冊も読んでいない。最近、初期の短編のいくつかに目をとおしたのみだ。

どうも根がへそ曲がりらしく、みんなが騒ぐと、そっぽを向いてしまう傾向がある。どうせ近いうち、郊外型古書店に売価ワンコインで山と積まれることになると思うので、今はなりゆきを見守っている。もっとも、山を目にしても、手にしてチラとのぞき、ソレキリになってしまうかもしれない。


先日、NHKの「日曜美術館」で、ヴォーリズという建築家の特集がなされた。本来宣教者として来日したそうなのだが、建築に手を染めることになり、もっぱらソチラを仕事とするようになったという。

いわゆる「洋館」と呼ばれる建築のさきがけとなった人であるらしい。

なんでも、そのうち30戸ほどが現在重要文化財かなにかになっているという。

覚えている方もいると思う。最近話題になったことだ。小学校の建て替えを行政が企図したのだが、その卒業生らがこぞって反対し、計画が頓挫した。その小学校の建築家がヴォーリズだという。卒業生らの学び舎への愛着が、ハコモノつくりの金権行政に勝利したと言っていいのだろう。


その番組を見ながら、文学作品もかくありたいものだと思った。

ヴォーリズの設計した建物は、そこに留まっていたいという気持ちになるのだそうである。

ある写真家が、そのうちの一軒を数十年ぶりに訪問したところ、調度品もそのまま変わらない位置に置かれており、変わったことはといえば住まう人の世代が交代したことだけであるという。

素材のちがいはあるが、構築された世界にひたっていたいという思いを抱かせ、かつ、世代が変わっても愛され続ける作品。作家たるものは、そのような世界を目ざすべきではないかと思う。

中島誠之助先生ではないが、時間がたてばたつほどその仕事ぶりにほれぼれするような作品を残したいものだ。

さてさて、春樹さんの新作は、「いい仕事をしてますねえ」とウナらせるに足るものかどうか・・・
ハルキ・ムラカミと言葉の音楽

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ヴォーリズの西洋館―日本近代住宅の先駆

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ヴォーリズ建築の100年―恵みの居場所をつくる

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