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ノーベル「文学賞の意外な結果」 [本・書評]

ノーベル賞の受賞者の選定で、客観的に成果や貢献度が計りやすいものは比較的容易であろうが、選出にあたって、主観に頼るもの、好みがおおいに関係するものは、殊のほかタイヘンであろうと思っていたら、やはり案の定タイヘンのようである。

藤野寛・一橋大学教授が、以下のような記事を記している。

(ちなみに、記事中、当方既知の名前は、フィリップ・ロスと村上春樹だけである。既知・未知すべての名前を《アマゾン》で検索したところ、おおくの作家について「該当する商品のデータがありません。」と回答が表示された。 作品が翻訳されていないことを嘆く以前に、まだそれらの作家の名前すら日本において紹介されていないという状態にあるということだ。作品を読まなければそれぞれの作家の評価ももちろんできない。短い記事だが、世界は広いぞの感を新たにいたしたしだいである。)

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文学賞の意外な結果

週間新聞「ツァイト」が、「今年のノーベル文学賞は誰に授与されるべきだと考えるか」という問いを、発表に先立って内外の文学者に投げ掛けたところ、24人から回答が寄せられた。主にドイツ、オーストリア、スイスを活動の舞台とするドイツ語作家だが、イアン・マキューアンやセース・ノーチボムら、5人の外国語作家も含まれる。

挙がった名前は、多数に分散した。実際に受賞したル・クレジオの名前を挙げた人はいなかった。村上春樹に言及したのは一人で、しかも、その人の第一候補はバルガス・リョサだった。

最も多くの支持を得たのは、デンマークの詩人、インガ・クリステンセンである。2票を得たフィリップ・ロス、ペール・エンクビストを引き離し、4票を獲得した。

これは、企画した同紙にとっても意外は結果だったようだ。この女性詩人、ドイツでも一般には知られていない。唯一「秘密の状態と死の詩」が独訳されているのみで、第一詩集「光」の翻訳が今年中には刊行予定なのだという。

それに対して、挙がったドイツ語作家の名前は多くない。ポート・シュトラウス、フリーデリケ・マイレッカー、イルゼ・アイヒンガーらが1票を獲得したにすぎない。

同じ企画が日本で行われたらどういう結果が出るだろう。日本の作家は同時代の世界文学をどのように読み、日本の同業者をどう評価しているのか。興味深いところだ。

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海を見たことがなかった少年―モンドほか少年たちの物語 (集英社文庫)

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縛られた男

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楽園への道 (世界文学全集 1-2) (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集1)

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ダイング・アニマル

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