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ジャック・ロンドンと薩摩武士道 [スピリチュアルな話題]

日本経済新聞(3/18p44文化欄)に、森孝晴・鹿児島国際大学教授が寄稿している。「米作家が見た薩摩武士道」と題されている。

米作家とは、「野性の呼び声」で有名なジャック・ロンドンのことだ。副題には「ジャック・ロンドンと鹿児島との関り 作品から研究」とある。

日本でのジャック・ロンドンの写真が掲載されている。キャプションに「日露戦争を取材中のロンドン」とある。肋骨服を着た日本人将兵らとほぼ同じ背丈だから、大きな人ではなさそうだ。それとも、若干、手前に位置して写っているのでそう見えるだけだろうか。いずれにしても、ハンティングをかぶったロンドンの身体つきは、胸板が厚く、がっちりしていて、野性味を感じる。いかにも当方のイメージにある作家の姿である。

森教授は、新聞特派員として日本に来たときのロンドンが、日本軍当局から同行するように言われた人物、薩摩藩出身の黒木為楨(ためもと)陸軍大将と、黒木と同じく下級武士出身で、薩摩藩留学生として渡英し、さらに米国に渡り、後に「カリフォルニアのワイン王」と呼ばるようになる長沢鼎に言及している。

黒木について記すにあたり、教授は「ロンドンはこのときまでに新渡戸稲造の『武士道』を読んで感銘を受け、エッセーに書いている。だから本物の武士である黒木にはきっと興味を持ったに違いない」と書き、ロンドンの絶筆「チェリー」に登場する「ハワイの農場で庭師として働くノムラ・ナオジロウという青年が」「寡黙で周囲から恐れられている人物で作家本人が文中で『多くの日本人が彼を黒木さんに似ていると言う」と説明していることに触れている。

森教授は、ロンドンと武士道との関係を次にように締めくくっている。「ロンドンは日本人の脅威を説いたこともあるが、強い関心の裏返しだろう。日本が中国と手を組めば恐ろしいことになる、と書いた評論もある。キリスト教精神に背を向けたロンドンにとって、宗教でもなければ政治思想でもない武士道は新鮮に見えたのではないだろうか」。


そもそも、森教授がロンドンに引かれるようになったのは、大学生の頃、「20世紀初頭の米国の格差社会を描いた『マーティン・イーデン』に衝撃を受け」「貧富の差が大きな時代にどう生きるか悩む青年の姿に共感を覚え」さらには、「恩師がロンドン研究会を始めたのを機に」取り組むようになったのだという。

「新潮世界文学辞典(1990年)をみると、教授が衝撃を受けた『マーティン・イーデン』について、「自殺に終わる一作家の数奇な生涯を描く半自伝小説」と簡単に説明されている。

実際、ロンドンは自殺して果てたようである。その理由については「カリフォルニアに大邸宅を構え、作品を次から次へと書き続け、一時は名声と富をほしいままにする感があったが、そうした本能的な名誉欲や金銭欲と、自己の表明する主義主張との矛盾に苦しんだ」と(同じ辞典には)ある。

ロンドンの経歴や武士道への親近感から、当方は、猟銃自殺したA・ヘミングウェーを想起し、さらには、三島由紀夫も想起した。そこにあるのは、「ファリック(phallic)・ナルシシズム」である。その言葉を、三島はN・メイラーに当てはめ、さらには自分もそうであるように書いていたと思う。(出典忘却)。


ここ数ヶ月のことだが、某有名彫刻家に、三島が彫らせたという彫像(三島の全裸像)を見る機会があった。新聞に掲載されていたのに目が留まった。初めて見るものだったので、資料としてスクラップするか迷ったが、結局、やめた。趣味のワルサを感じたのである。

いま、ここまで、書いてきて気づいたのであるが、ソレはまさに屹立するファリックに見えたのであろう。本来、隠しておくべきもので、見せるものではないものを、見せつけられた気分になったのではないかと思う。ギリシャ彫刻やミケランジェロによる全裸像を見るときの印象とはチガウ、なにかヘンな印象をのみ、その時は感じていたのだが・・・

話しがヘンな方向に発展してしまった。あえて結論を書かずともいいのだろうが、武士道への親近感と自分自身への極度の誠実さは、「ファリック(phallic)・ナルシシズム」に近似し、死に至るという仮説を立てて終わりとする。

ウィキペディア「ジャック・ロンドン」の項目
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%B3



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