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『国家と秘密ー隠される公文書』加藤陽子評 [読んでみたい本]


国家と秘密 隠される公文書 (集英社新書)

国家と秘密 隠される公文書 (集英社新書)

  • 作者: 久保 亨
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2014/10/17
  • メディア: 新書



上記書籍、久保享、瀬畑源著の書評を
(毎日新聞11・16)に、東大教授加藤陽子が書いている。
「情報公開法・公文書管理法の空洞化憂慮」と題されている。

(以下、全文引用)
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本書のカバーの帯には、「本文書ハ焼却相成度(アイナリタク)」の部分を拡大した敗戦時の通達の写真が載せられている。評者もまた史料を見ている際、「本達ハ速カニ確実二焼却スベシ」と記された紙片を目にしたことがある。日本人は史料を焼くのがつくづく好きな国民なのだと長嘆息して天を仰ぐが、考えてみれば正倉院の古文書として八世紀初頭の戸籍などはきちんと伝来しており、国民性では説明がつかない。

副題を「隠される公文書」とする本書の姿勢は明快だ。自分たちの業務に必要な文書だけを残し、国民への説明責任を負う自覚はついぞ持たないできた日本の官僚制の特質がまずは丁寧に語られる。よって、行政を担う者は情報を隠すものだと腹をくくったうえで、国民は、国家に記録を残させ情報を開示させることが肝要と説く。言論が萎縮しがちな昨今にあって、久々の直球ど真ん中の提言である。

この本は、昨年末に成立した特定秘密保護法に対し、二人の歴史研究者が抱いた深い危機感から生み出された。同法はすでに運用基準や政令が閣議決定され、今年12月の施行を待つばかりとなっている。

この法が、国民の目から重要な情報を隠し、結果責任も問われない方途を行政に与えるものとなること自体大きな問題だが、著者たちの懸念は必ずしもそこだけに向けられているのではない。

近代中国の経済史を専門とし、世界の公文書館を多数見てきた久保と、象徴天皇制の研究者であり、公文書管理法を語らせたら右に出る者がいない瀬畑。二人の著者が真に危惧しているのは、特定秘密保護法の運用が始まることで、近年ようやく上手くまわり始めてきた、民主主義の根幹を支える二つの大切な法や制度に大きな空洞や例外が生じてしまうのではないかとの点にある。大切な法とは、2001年から施行された情報公開法と、11年から施行された公文書管理法に他ならない。

情報公開法によって国民は、行政機関の職員が職務上作成しあるいは取得し、組織的に使用し、機関内に保存している文書を開示請求することが、権利として認められることとなった。ことの重要性は、特定秘密保護法の制定過程の文書を開示請求し、それをPDFファイル化して公開した毎日新聞による実践が最も雄弁に物語る(10月13日付電子版)。今や私たちは、特定秘密保護法を準備した内閣情報調査室に対し、内閣法制局が示した疑問点が何だったか知ることができるのだ。法制局は、秘密の範囲を拡大し、厳罰化を図ろうとする内閣情報調査室の立法の根拠が薄弱だとみていた。

このような開示請求も、そもそも文書が作成され保存されていなければ意味がない。情報公開の前に立ちふさがる、「文書を作らず、残さず、手渡さず」の霞ヶ関文化を打破するために制定されたのが公文書管理法だった。これにより、行政機関の職員には文書の作成義務が課され、ファイル管理簿への登載も義務づけられた。情報公開と公文書管理の二つが、この3年でようやく動き始めていた。

特定秘密保護法を危惧する声に対して政府は、特定秘密を載せた文書も行政文書なのだから情報公開請求が可能とし、また保存期間が満了すれば公文書管理法に従って国立公文書館等に移管されるから心配ご無用と述べていた。これらの答弁が、情報公開と公文書管理の現状からみて、いかに真理からかけ離れたものであるかについても、本書は詳細に解き明かす。権力を注視する極意を教える貴重な一冊といえるだろう。(加藤陽子評)

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公文書(記録)が「大切にされてこなかった」“背景”:加藤陽子東大教授
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2012-03-06

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町村信孝「秘密保全」PT座長(日本記者クラブ会見)ビデオ
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2014-10-08-2

小林多喜二ら『特高』犠牲者の血と町村信孝PT座長の父
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2008-05-04

「秘密」をアメリカ並みにしたいのなら、まずは「情報公開」の方から
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2013-11-15

戦後日本の構造をこれほどよく示す話を聞いたことがない
(西山事件当事者談話)
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2014-10-09

videonewscom
http://www.youtube.com/watch?v=JqIUh9V7hA4
秘密保護法ができれば政府の違法行為を暴くことは不可能に
日米密約を暴いた西山太吉氏が法案を厳しく批判

沖縄密約漏えい(西山)事件
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/archive/c2305197846-1

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