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五木寛之90歳が語る「講演」と「対話」の違い [読んでみたい本]

五木寛之90歳が語る「講演」と「対話」の違い
https://books.j-cast.com/topics/2023/07/12021481.html

五木さんの新刊の宣伝ようだ。御年90である。息のながい作家である。

新刊は「2023年7月10日、作家・五木寛之さんが「ラジオ深夜便」で話したこと」だそうである。であれば、まだ「聞き逃し」で聞くことができるのではないか。

ギリシャの哲人たちにとっても対話は重要であったし、人間がひとり考えることなどは発展性が限られて堂々巡りになるのがおちであるように思う。いい意味で対峙する人物がいると思わぬ展開があってオモシロイことになるように思う。

そんなことが書かれているかどうか知らないが目をとおしてみたいところである。


人生のレシピ 幸せになる聞き方・話し方 (教養・文化シリーズ)

人生のレシピ 幸せになる聞き方・話し方 (教養・文化シリーズ)

  • 作者: 五木 寛之
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2023/07/10
  • メディア: ムック



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家で死のう! ――緩和ケア医による「死に方」の教科書 [読んでみたい本]


家で死のう! ――緩和ケア医による「死に方」の教科書

家で死のう! ――緩和ケア医による「死に方」の教科書

  • 作者: 萬田緑平
  • 出版社/メーカー: フォレスト出版
  • 発売日: 2022/06/22
  • メディア: 単行本




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グランゼコールの教科書――フランスのエリートが習得する最高峰の知性 [読んでみたい本]

ひさびさにリアル書店に出向く。知らない本に出合えてうれしい。

書棚をざーっと眺めて歩く。一冊面白そうな本を見つけた。「グランゼコールの教科書」。分厚い本だ。

グランゼコールの教科書――フランスのエリートが習得する最高峰の知性

グランゼコールの教科書――フランスのエリートが習得する最高峰の知性

  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 2022/06/28
  • メディア: Kindle版



ちょうど入・進学の時期だけに辞書のコーナーが作られ、いろいろと平積みされている。辞書の棚にまわるとたいして置いていない。売れ筋だけ置く傾向になっているようだ。

『安倍晋三回顧録』が平積みになっていた。売り切れてしまって、手に入らないと聞いていたが沢山あった。

平凡社の『太陽』発刊50周年を記念するパネルと展示がなされていた。森山大道のものが目に留まる。手に取ったが有名な野良犬が見当たらない。

結局、一冊も買うことなく帰途につく。

森山大道: 写真とは記憶である (299;299) (別冊太陽)

森山大道: 写真とは記憶である (299;299) (別冊太陽)

  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2022/04/28
  • メディア: ムック



半藤一利: 歴史とともに生きる (292;292) (別冊太陽 日本のこころ 292)

半藤一利: 歴史とともに生きる (292;292) (別冊太陽 日本のこころ 292)

  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2021/08/24
  • メディア: ムック




共通テーマ:日記・雑感

陰謀論と怨霊崇拝 [読んでみたい本]

昨日、以下の論考を読む。橘玲氏の新刊『無理ゲー社会』によるものだという。

記事リード部には次のようにある。

< 米ドナルド・トランプ前大統領の「選挙は盗まれた」「議事堂に行って、勇敢な議員を励まそう」との演説に扇動され、アメリカ連邦議会議事堂を占拠した熱狂的なトランプ支持者たちは、「Qアノン」なる陰謀論を信じているという。Qアノンは、「アメリカはディープステイト(闇の政府)に支配されていて、トランプ氏はそれと闘っている」と主張している。作家・橘玲氏は話題の新刊『無理ゲー社会』で、「絶望から陰謀が生まれる」メカニズムについて考察している。なぜ人は「陰謀論」にハマるのか、同書より抜粋して紹介する>。

なぜ人は「陰謀論」にハマるのか? 変えられない現実と変えられる認知
https://www.news-postseven.com/archives/20210907_1685422.html?DETAIL


無理ゲー社会(小学館新書)

無理ゲー社会(小学館新書)

  • 作者: 橘玲
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2021/07/29
  • メディア: Kindle版


(上記書籍のAmazonレビューによると[タイトルの「無理ゲー」は「攻略が無理なほど難しいゲーム」の略語であり、本書では「格差社会の底辺にいる人達がどう足掻いても復帰できない現状」を意味する//米国の大学教官(准教授)KN氏投稿]とのこと)。


今朝は、以下の論考を読む。
国際日本文化研究センター名誉教授 小松 和彦氏によるものだ。

記事リード部には<古来、この国は疫病の流行や天変地異に幾度となく見舞われた。さまざまな「災厄」は人間の側では制御しえない。人びとはそうした災いを、荒々しい怨霊が引き起こす「祟り」と考えたのである。/  怨霊や「祟り神」の気持ちを鎮めるためには、特別なことがおこなわれた。また残された人びとが伝える「物語」が必要であった。/  日本史上最大級の怨霊、崇徳院をめぐる物語から見える、日本人の心の奥に潜むものとは――。>とある。

日本最大級の怨霊・崇徳院が「まったく特異である」その決定的な違いとは
https://bunshun.jp/articles/-/37791?utm_source=news.yahoo.co.jp&utm_medium=referral&utm_campaign=relatedLink


神になった日本人-私たちの心の奥に潜むもの (中公新書ラクレ (687))

神になった日本人-私たちの心の奥に潜むもの (中公新書ラクレ (687))

  • 作者: 小松 和彦
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2020/05/07
  • メディア: 新書



共通する点は「人間の心性」ということか・・・



ユング心理学入門

ユング心理学入門

  • 作者: 河合 隼雄
  • 出版社/メーカー: 培風館
  • 発売日: 2021/09/08
  • メディア: 単行本




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どん底サラリーマンが株式投資で2億円 [読んでみたい本]

昨日、当該ブログで、「株」式投資のことにちょっと触れた。

その関係でか、どういうわけか、以下の書籍の著者の記事(ダイアモンド・オンライン掲載)を読むことになり、その元ネタとなっているブログまで読むことになった。

なんだかんだと全部読んでしまった。要するに、面白かったということである。


ダイアモンド・オンラインの記事 2021.4.20付け第1回~2021.5.29まで
https://diamond.jp/ud/authors/606c1bf07765613b82010000?page=2

ダイアモンド・オンラインの記事 2021.5.30~2021.8.17まで
https://diamond.jp/ud/authors/606c1bf07765613b82010000


著者のブログ 第1回「ブログ開設にあたり(まずはじめに)」2018年07月05日
https://ameblo.jp/hm3102/entry-12388726183.html


どん底サラリーマンが株式投資で2億円 いま息子に教えたいお金と投資の話

どん底サラリーマンが株式投資で2億円 いま息子に教えたいお金と投資の話

  • 作者: DokGen
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2021/04/21
  • メディア: Kindle版



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あふれるゴミの中で見つけるオリジナリティ [読んでみたい本]

あふれるゴミの中で見つけるオリジナリティ
8/16(月) 9:16配信 プレジデントオンライン
https://news.yahoo.co.jp/articles/ca2a354caba09c4b1bad66053f1b29f2680ba1ac

実際に、ゴミ(屋敷)の中に分け入って、本をものした。カラダを張った著作だ。たいへん身近なことでありながら、これから大きな社会問題になることをテーマにした。まだ遠く感じられるうちに察知した。テーマ探しは、株を買うのに似ているかもしれない。



潜入・ゴミ屋敷-孤立社会が生む新しい病 (中公新書ラクレ, 733)

潜入・ゴミ屋敷-孤立社会が生む新しい病 (中公新書ラクレ, 733)

  • 作者: 笹井 恵里子
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2021/07/07
  • メディア: 新書



(以下、記事からの抜粋)

■追求してきたのはオリジナリティ

 「これまで取り組んできた救急医療や家の問題も、人間が生きていくために必要なものです。生きるためのセーフティネットの存在に気づいてもらい、それを守るために記事を書いています」

 ただ、使命感だけでは人の心を動かせないことも熟知している。過去には週刊誌の、現在はフリーの記者として活躍する笹井さんが追求してきたのはオリジナリティだ。

 「どこかで見聞きしたネタでは、他の記者が書くものに勝てないんです」

 あふれる情報の中で、まだ見たことがないものこそ、人は手に取って読みたくなる。記者が自ら清掃作業を行って書かれたゴミ屋敷とそこに関わる人々の姿は、オリジナリティの塊だ。実際に、本書発刊に先立ってネット配信されたゴミ屋敷の記事はたちまち注目を集め、大手配信サイトでもランキングのトップに入った。オリジナルな情報を見せることにこそ価値があることを、自らの記事で証明した。

 “良い本”とはどんなものかという質問に、笹井さんは「明日もこの世界で生きていけると信じられる、生きていこうと希望を持てる。そんな結末を提示してくれる本ですかね」と答える。読者の見たことのない世界を見せてくれるだけでなく、生きる希望も詰まった“良い本”だ。

(以下、当方未読)

最底辺 Ganz unten―トルコ人に変身して見た祖国・西ドイツ

最底辺 Ganz unten―トルコ人に変身して見た祖国・西ドイツ

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1987/06/24
  • メディア: 単行本


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「僕はジョージ・オーウェルが好きなのだ」( 宇野重規『半歩遅れの読書術』、日経新聞掲載) [読んでみたい本]

政治学者の 宇野重規氏が、村上春樹『1Q84』のネタ元の主(ぬし)ジョージ・オーウェルについて書いている。

タイトルは「やんちゃな少年の心に憧れ 現世への屈折した愛と喜び」。

以下に、全文引用するが、誘われて、その作品(評論も含めて)を、読んでみたいと思わせるものだ。

***********

文章を書く人にとって、憧れる書き手がいるものだ。僕もここで白状してしまおう。何を隠そう、僕はジョージ・オーウェルが好きなのだ。

えっ、オーウェルだって、と言われるかもしれない。『1984』や『動物農場』を書いて、管理社会を批判した文学者。スペイン内戦に義勇軍として参加し、フランコ将軍と戦った政治的人物。世のイメージはそんなところだろう。でも、僕の好きなのは、それとはちょっと違ったオーウェルなのだ。

名門イートン校を卒業しながら、大学には進学しなかったオーウェルは、英国の植民地であったビルマに行く。しかし、そこで帝国主義のお先棒を担ぐことにうんざりしてヨーロッパに戻り、ロンドンとパリで皿洗いの極貧生活を送る。やがて文章を書いて評判になるが、スペイン内戦に参加するなど、いつまでたっても落ち着かない。

そこに浮かび上がるのは、皮肉屋なところもあるけど正直で、おっちょこちょいだけど、まずは現場を見ようとするオーウェルの姿である。実際、スペインに行ったオーウェルは、やがてソ連の援助を受けた共産党軍の欺瞞に気づくことになる。その意味で、彼を単純に右とか左とか言っても始まらない。「管理社会批判」という便利なレッテルに押し込むには、あまりにその感性はみずみずしい。

間違いないのは、オーウェルが文章を書くのを愛したことだ。彼は、なんとしても自分を貫き、少しでも美しい文章を書き、歴史的真実を記録したいと願う。さらには「政治的」な発言をすることも恐れない。言い換えれば、矛盾した社会において、何を理想の社会とするかをオーウェルは問い続けた。

「命があって健康なかぎりは、いつになっても文体に執着し、現世を愛し、内容のある具体的なこととか、実益のない知識の断片を楽しむ性癖は変わらないだろう」(「なぜ書くか」、『オーウェル評論集』、岩波文庫)。この文は僕にとっても、文章を書く上でのモットーだ。くだらないことを含め、この世界の物事が好きでたまらない。オーウェルの評論は、 (かなり屈折しているけど)喜びが基調にある。

オーウェルといえば管理社会批判、というイメージで済ましている読者も多いのではないか。それはあまりにもったいない。たしかに文章は、政治用語に満ちている。しかし、その根底にあるのは、何にでも関心を持ち、自分の感じたこと、考えたことをきちんと文章に表現したいと願う、一人のやんちゃな少年だと思う。 

(以上、『日経新聞』9月30日、読書欄 p28から)

ジョージ・オーウェル(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%AB


オーウェル評論集 (岩波文庫 赤 262-1)

オーウェル評論集 (岩波文庫 赤 262-1)

  • 作者: ジョージ・オーウェル
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1982/04/16
  • メディア: 文庫



オーウェル評論集 1 象を撃つ

オーウェル評論集 1 象を撃つ

  • 作者: ジョージ オーウェル
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2009/11/01
  • メディア: 単行本



オーウェル評論集 2 水晶の精神

オーウェル評論集 2 水晶の精神

  • 作者: ジョージ オーウェル
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2009/11/01
  • メディア: 単行本



オーウェル評論集〈3〉鯨の腹のなかで (平凡社ライブラリー)

オーウェル評論集〈3〉鯨の腹のなかで (平凡社ライブラリー)

  • 作者: ジョージ オーウェル
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2009/12/01
  • メディア: 単行本



オーウェル評論集〈4〉ライオンと一角獣 (平凡社ライブラリー)

オーウェル評論集〈4〉ライオンと一角獣 (平凡社ライブラリー)

  • 作者: ジョージ オーウェル
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2009/12/01
  • メディア: 単行本




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鴻巣友季子 すっぴん! 登場 『シェイクスピアの正体』(著・河合祥一郎)を語る [読んでみたい本]

たまたま車載ラジオをつけたら女性がシェークスピアを語っている。だれかと思えば、鴻巣友季子らしい。

帰宅して調べたら、「らしい」でなく、本人である。
http://www.nhk.or.jp/suppin-blog/

これまでも彼女の書評やインタビュー記事を読む機会があったが、もっと重い感じの人かと思っていた。書いているものとちがい、その声は、けっこう高く、息せききってしゃべる感じである。息の継ぎ場をさがしている風でもある。

この感じ、話しぶりは、どこかで聞いた覚えがあると思いをさぐって出てきたのは、香山リカである。たいへん似た感じがする。「色気」の問題はさておき、息継ぎにおいて特にそう・・・。

香山 リカの声をはじめて聞いて・・
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2012-12-01


最近の女子は、声が低くなった。それに反して男たちの声が高くなって、逆転現象が生じている。これも、みんな環境ホルモンによる影響・・と当方はにらんでいるのだが、実のところはわからない。わからないが、鴻巣も香山も、当今の傾向に反した高い声である。教育程度が高くなると、声も高くなるのかもしれない。それになによりも、ラジオ生放送である。テンションがあがっているせいもあるのだろう。環境ホルモンの影響は受けないにしても、NHKスタジオという環境の影響をびんびん受けてのことなのだろう。

こんな勝手なことを書くと、「あなたなんならマイクの前に座ってみなさいよ」と二人から言われそうである。

なには、ともあれ、紹介されていた本はオモシロそうなので、機会があったら読んでみたい。


シェイクスピアの正体 (新潮文庫)

シェイクスピアの正体 (新潮文庫)

  • 作者: 河合 祥一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/04/28
  • メディア: 文庫



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『哲学な日々−考えさせない時代に抗して』=野矢茂樹・著 [読んでみたい本]

先の更新で、

「立て板に水」の安倍晋三と「アーウー」の大平正芳と、題するものを記したが・・・、

http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2015-09-08

やはり、「立て板に水」という話し方は、対話する相手・聴衆といっしょに「共に考え」ようという配慮・意向の足りない、(あるいは「無い」)、一方的、独り善がりの話し方のようである。

そして、流暢この上ない論議・演説で、しかも、録音を文章に起こしてみると「文意不明」などという場合、それは、話者である本人自身、「考えていない」ことを証しするものであるにちがいない。ほかの誰か(官僚等)から吹き込まれたものを、消化せずに、吐き戻しているといったところなのだろう・・・

・・・などと、野矢茂樹著『哲学な日々−考えさせない時代に抗して』の書評を読みながら、思ったしだいである。

以下、その書評全文。

**********

今週の本棚:渡辺保・評 『哲学な日々−考えさせない時代に抗して』=野矢茂樹・著

毎日新聞 2015年11月08日 東京朝刊

◇現代社会に対する鋭い文明批評

野矢茂樹が教師になりたての頃、講義の最中に、自分の綿密に作った筈(はず)の講義ノートに突然納得できない「穴」を発見してしまった。軌道修正をしようとしたがうまくいかない。頭が真ッ白になってしどろもどろ。ようやく授業を終えたところへ一人の学生が近づいて来た。

 「今日の話は分かりやすかったですね」

 「はい? なんだって?」

そこで野矢茂樹は、ノートを頭に叩(たた)き込んで「立て板に水を流す」ようにしゃべる流儀を改めた。その学生の一言で「つっかかり、立ち止まって、思考のプロセスを学生に 晒(さら)しながら 、一歩一歩手探りで進」む授業にした。つまり学生と共に 考える ということである。第一「立て板に水を流」せば後にはなにも残らないではないか。そういう「独演会」をやっても「自分だけ気持ちよさそうにカラオケを歌って悦に入っているおじさん」と変わりがない。体育の教師が「私が運動するから君たちは見ていなさい!」といえば、教師の体力は確実に上がるが、学生の体力は上がらない。哲学の授業も体育と同じ実技なのだ。

このたとえ話がうまい。

本の題名だけ見て、いまどき哲学なんてと思う人もいるだろうが、「哲学の(、)日々」ではなくて「哲学な(、)日々」なのはなぜか?と思わなければ、この本の面白さはわからない。

ここには、日々、現実と闘いながら生きている一人の人間がいて、その姿がユーモラスにうまいたとえ話で描かれている。それを面白がって読んでいると、いつの間にか読者は哲学に近づいて行く。「哲学な日々」になる。モノの見方がかわる。

そこで著者が強調していることは大きくいって二つある。

一つは「考える」とはなにか。著者は現代は人間に考えさせない時代だという。分らないことがあるとすぐネットを使う。自分で考えようとしない。その通り。それが実に恐ろしいことなのは、自分で考えない人は人の意見を鵜呑(うの)みにする、そこで自分を見失い、他人に精神的に隷属するようになるからである。これはやさしく書いてあるけれど、現代社会に対する鋭い文明批評である。

著者の強調しているもう一つは、論理の必要性である。いま、世の中には少し論理的に考えれば筋の通らないことが溢(あふ)れている。たとえばなぜ日本の将来を決める重要案件がありながら国会は開かれないのか。あるいはまた国立競技場の建設問題。デザイン募集の条件に予算約千三百億円と提示されているのにその倍もかかるデザインをなぜ選んだのか。ここには論理的な思考が欠如している。もっとも著者は別にこういう具体的な問題に触れているわけではない。著者が触れているのは、論理はどのようにしてつくられるか、文章の上でどのように構築されるかという本質的な問題である。それを平易に描いている。これもまた現代社会の欠陥をつく批評である。

この本を読んで私は「文章読本」としてもすぐれていると思った。「文章読本」は有名な思想家、文豪のものが数多く存在するが、その中でもこれはすぐれている上に、明日から役に立つ実効性を持っている点で群を抜いている。

野矢茂樹は、哲学者、教師、エッセイストなだけではない。本の解説、書評もうまい。この本の第二部にはそれが収められているが、私がうまいと思うのは、著者に面と向かって、いいたいことを散々言った挙句に、いつの間にか読者に思わず本を手に取らせてしまうからである。書評家としてすぐれていると思うゆえんである。


哲学な日々 考えさせない時代に抗して

哲学な日々 考えさせない時代に抗して

  • 作者: 野矢 茂樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/10/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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『鏡映反転』(岩波書店発行) [読んでみたい本]


鏡映反転――紀元前からの難問を解く

鏡映反転――紀元前からの難問を解く

  • 作者: 高野 陽太郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2015/07/16
  • メディア: 単行本



今朝、新聞1面下段にある書籍広告を見て、ゾッとした。上記書籍のことで、である。

3センチ四方ほどの枠のなかに、「なぜ鏡の中では〈左右〉が反対に見えるのか?」と記されてある。

しかも、「紀元前からの疑問」と、ある。


よく養老猛司大先生が、教え子の大学生のことで話題にすることがある。話題に取り上げずにはいられないほどのオドロキを感じたので、繰り返し話すのだと思うが、そのオドロキを自分自身に感じたのである。

先生が、理系の学生たちに、「コップにインクを一滴落とす、すると時間が経過するとインクの色が消える。なぜか?」と問うと・・・

教室の最前列に座っていた女の子たちが・・・

「そういうものだと思っていました」と、答えたのだという。

そういうものだと思っていたで、済ませると、科学的究明など吹っ飛んで(失われて)しまうということを、言いたいがために、上記の例を持ち出すと思うのだが・・・

鏡映反転については、当方も、女子学生同様「そのようなものだと思っていた」ワケである。

身近なところにあるフシギが見えなくなっていると言ったらいいのだろうか。身近なフシギに、いちいち気付いて思案していたら、日常生活など吹っ飛んで(失われて)しまうにちがいないが、それでも、フシギなことはフシギとして存在してアルことくらいは、意識の隅にチョコンとあってもいいのではないかと我ながら思ったしだいなのである。


哲学的センスの10の条件
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2008-05-06


事典・哲学の木

事典・哲学の木

  • 作者: 永井 均
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2002/03/08
  • メディア: 単行本



物語とふしぎ―子どもが本に出会うとき

物語とふしぎ―子どもが本に出会うとき

  • 作者: 河合 隼雄
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/03/15
  • メディア: 単行本



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『しんがりの思想』刊行 鷲田清一さん [読んでみたい本]

「しんがりをつとめる」というのはなかなかたいへんであると聞く。追撃してくる敵を、本隊の最後尾で迎えうち、本隊を守るのが「しんがりのつとめ」である。

漢字で書くと「しんがり」は、「殿」と書く、のだという。カラダの最後尾、いわゆる「おしり」を指す「でん部」の「でん」と同じ文字か・・と思ったら、「でん部」のでんは「臀」であった。それでも、月(にくづき)のうえに「殿」の文字が鎮座ましましているから、考えとしては一緒なのだろう。

以下の記事を見ると、「しんがり」をつとめることのできる人こそ、「殿(トノ)」と呼ばれるにふさわしいのかもしれない。

殿 (軍事用語)(ウィキペディアから)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AE%BF_(%E8%BB%8D%E4%BA%8B%E7%94%A8%E8%AA%9E)

戦でしんがりを努めるのは強い人ですか?
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1153875401


いつもながら、前置きが長くなったが・・・

鷲田清一さんが、新刊をだした。「しっかり」ではなく「しんがり」の思想であるそうな。どんな内容か。以下ヨミウリサイトによる紹介文。


しんがりの思想 ―反リーダーシップ論― (角川新書)

しんがりの思想 ―反リーダーシップ論― (角川新書)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川マガジンズ
  • 発売日: 2015/04/10
  • メディア: 新書



哲学者の鷲田清一さん(65)=写真=が、人口減、高齢化という<縮小社会>を生きる市民の心構えを説いた『しんがりの思想 反リーダーシップ論』(角川新書)を刊行した。

 大阪大学の学長を務めた経験、東日本大震災を経て、現代社会に強い危機意識を抱いたことが出発点にある。

 国立大学の独立行政法人化で、学長権限が強化され、徹底した大学運営の合理化が求められるようになった。学長を務めた2011年8月まで4年間、「会議や報告書作成で、先生方の忙しさはすさまじいことになった。これはおかしい、危ないというのが僕の職場感覚でした」。

 グローバル化のもと教育、医療、労働環境といった分野まで「濁流のような市場原理にのみ込まれた」。原発事故では、細分化された専門家集団の危うさと政治の劣化、それらに歯止めをかけるべき<市民力>の衰弱を痛感した。「いま、市民社会、地域社会の基盤が取り返しがつかないほど崩れつつある」。鷲田さんが、時事問題をこれほどストレートに論じるのは珍しい。

 学長退任後、10年ぶりに教壇に立って、若者を前に語るのが怖くなったという。自然を修復不可能なまま引き継ぐことになって、国の借金を増やし将来世代に負担をかけることになって、申し訳ない――。社会のギアを入れ替える方途を思索しなければ、と思った。

 右肩上がりの経済成長を知らない当の若い世代に、今は希望を感じているという。「今の大学生くらいの人って、授業でも『自分に合わない』と感じたら、すーっといなくなるんです。最初は『何で文句を言ってくれないの?』と思ったんですけど」

 それは、声高に意見表明せずとも制御不能な濁流に翻弄されない、賢明な生き方ではないのか。例えば、都会から地方に生活基盤を移すIターン、Uターンを選択する若い人たち。「力まず無理をせず、家族や友人、いざという時に助け合える地域のサイズを大事にしながら生きていく。働く意味、子育ての意味を問いながら丁寧に生きる。今後のモデルとなるべき、ありようだと思います」

 経済規模が縮小する、難問山積の社会にあっては、「登山パーティーの最後尾で、脱落者が出ないよう全体に目配りする『しんがり』を務められるような人材が、これからは求められる」。

 今年4月、京都市立芸術大学の理事長、学長に就任。アートのモデルを取り入れた地域社会の運営方法を模索中だ。「まさかアートの現場に赴任することになるとは」。大学現場のリーダーでなく、しんがりの精神で「時代の流れに逆らってでも、守るべきものを守るために考え、行動したいと思っています」。(大阪文化・生活部 西田朋子)

http://www.yomiuri.co.jp/life/book/news/20150716-OYT8T50012.html?from=osusume&google_editors_picks=true

『碇の文化史』石原渉著(思文閣出版)
http://kankyodou.blog.so-net.ne.jp/2015-09-04


歴史街道 2008年 03月号 [雑誌]

歴史街道 2008年 03月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2008/02/06
  • メディア: 雑誌



碇の文化史 (佛教大学研究叢書)

碇の文化史 (佛教大学研究叢書)

  • 作者: 石原 渉
  • 出版社/メーカー: 佛教大学
  • 発売日: 2015/03/30
  • メディア: 単行本



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「黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実」 [読んでみたい本]

ルーシー・ブラックマン事件を扱ったノンフィクション作品が「ブック・アサヒ・コム」に紹介されている。著書名にはそのまま、被害者の名前が用いられている。

当時、報道の印象として残っているのは、被害者の両親の憔悴した表情と、娘を殺された両親への気の毒な思いである。加害者無罪の判決(「ウィキペディア」によると、後に、一部有罪となったいうことだが)を聞いて、両親への同情を禁じえなかった。

それから15年もたったのだという。驚きである。

当該著書の紹介をみて、改めて事件についてネット検索すると、加害者は「在日韓国人」らしい。当時、そのような話は聞かなかったような気がするが、その点を疑問視している人は少なくないようだ。マスコミは、その点を意図的に隠していたのではないかといったコメントもある。

被害者の名前は、大きく広くあつかわれ、それに比べると、加害者はまるで保護されているかのように扱われる。おかしな話である。

いずれにしろ、著者(リチャード・ロイド・パリー)の談話をみると、日本、イギリス、(加えて韓国朝鮮)の比較文化論となっているように思える。同じ事件でも、文化によって見え方は、ちがう。

ルーシー・ブラックマンさん事件「15年目の真実」とは
[掲載]2015年06月06日
http://book.asahi.com/booknews/update/2015060600001.html?iref=com_rnavi
(「つづく」部分に全文掲載)

当該著書についての、アマゾンブックレビューによると、既読の方は、以下の点について考えさせられたという。(レビューアーは「本が好き」さん)

1.英国と日本の司法や裁判に対する考えの違い 2.英国の階級社会の実態? 3.英国の若者の生態? 4.英国人が日本人を見る時の考え方? 5.日本の「水商売」とは何か? 6.在日韓国人とは何か? 7.在日韓国人と日本人が仲良く暮らす方法は無いか?差別とは何か? 8.英国における結婚と離婚とは? 9.英国の宗教事情?


黒い迷宮: ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実 (ハヤカワ・ノンフィクション)

黒い迷宮: ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実 (ハヤカワ・ノンフィクション)

  • 作者: リチャード ロイド パリー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/04/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


つづく


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「袁世凱」岡本隆司著(岩波新書) [読んでみたい本]


袁世凱――現代中国の出発 (岩波新書)

袁世凱――現代中国の出発 (岩波新書)

  • 作者: 岡本 隆司
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2015/02/21
  • メディア: 新書



当方は、「袁世凱」と聞くとすぐ、「民本主義」「大正デモクラシー」で有名な吉野作造を思い出す。袁世凱の息子の家庭教師に吉野がなっていた時期があるからだ。それゆえにも、吉野は間接的であれ、袁世凱の思想に、なんらかの影響を及ぼしているのだろうかなど思ったりするのだが・・・実際のところは知らない。

上記イメージ書籍の紹介が本日の日経新聞に出ていた。

(以下、紹介文全文引用)

*************

袁世凱は中国の近代史において最も重要な政治化の一人といえよう。たとえば、清朝を倒し中華民国を生んだ辛亥革命で、決定的な役割を果たした。ところが、同じ革命の立役者でも、孫文が中国でも日本でも賞賛を浴びてきたのに対し、袁には悪評がつきまとってきた。「梟雄(きゅうゆう)」とか「マキャベリスト」とか。

そんな人物を「つとめて客観的に」描こうとした評伝である。著者は「(袁の)立場を当時の文脈に還元して考え、悪口の根拠をみきわめる」ようにした。その結果「おびただしい悪評のほとんどが、ためにする、あるいは一知半解の誹謗である」ことがわかったという。

そして浮かび上がるのは、優秀で実直な官僚、という肖像である。「中国全体に関わる大計を扱うには、ふさわしくない人物」だった、とも著者は指摘している。

著者も認めるように袁の私生活にほとんど触れていないのは、物足りない気もする。ただ、激しく変転していった時代の様相を、新書版という手ごろなサイズで描き出す語り口は鮮やかだ。

第一次世界大戦のどさくさにまぎれて大隈重信内閣が21カ条の要求を袁世凱政権に突きつけてから、今年で100年になる。日本について考えるうえでも意味のある一冊である。(岩波新書・780円)

************

以下、オマケというか、今、見つけたサイト。おもしろそうなので・・・

吉野作造の民本主義における儒教的言説
―人間論と政治論を中心に―
陶   徳 民
The Confucian Ideas in Yoshino Sakuzoˉ’s Democratic Advocacy:
An Analysis of His Theories on People and Politics
Tao Demin

http://kuir.jm.kansai-u.ac.jp/dspace/bitstream/10112/3032/1/01-tao.pdf


吉野作造と中国 (中公叢書)

吉野作造と中国 (中公叢書)

  • 作者: 尾崎 護
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2008/05
  • メディア: 単行本



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『敗北を抱きしめて』の世界版( 『廃墟の零年1945』 イアン・ブルマ著 ) [読んでみたい本]

「戦後70年談話」の内容をめぐって、いろいろ取りざたされているが・・

すこし前に高村薫の講演を聞いてナルホドと思ったことがある。

6:高村薫講演会「近代の終わりを生きる」
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2013-05-31-6

安倍政権の得意とする言い回しに「地球儀を俯瞰する外交」という表現がある。ソレを借りるなら「地球儀を俯瞰する歴史観」が必要ということになろうか・・。

「地球儀を俯瞰する外交」をしようとする国は、当然ながら、アジア・レベルだけでなく、地球レベルで、他の国からどう看做されているかを把握しておく必要がある。

上に紹介した高村薫の講演にあるように「世界においてはまったく意味をな」さない、「日本の側から見た一方的な理屈」を振り回すことにならないためにも、知っておく必要がある。


以下のイメージ書籍は、白水社の「パブリッシャー・レビュー」(1/15号)に紹介されていたのだが・・・

その点で、参考になりそうだ。

(以下、引用)

***********


廃墟の零年1945

廃墟の零年1945

  • 作者: イアン ブルマ
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2015/01/20
  • メディア: 単行本



「戦後70年」の今日まで続く、新たな時代の起点となった歴史的な1年、1945年に、世界ではいったい何が起きていたのか?本書は客観的な立場から、日本とドイツ、敗戦国と戦勝国、各国の数多の人びとの屈辱と解放を通して、その歴史的意味を明らかにし、国際政治から国民心理、文化論・社会論まで論じる。

敗戦によって、ナチズムとファシズムから解放された人々の歓喜と戸惑い、社会の変化が活写される。旧支配階級が没落し、新興企業家が登場する中、元戦犯が隠匿物資で富を蓄積し、戦争責任の所在が曖昧化していく。日本では敗戦が「女性解放」につながり、アメリカ文化の最初の受容者である「パンパン」の姿が、野坂昭如などの作品から引用される。また、米兵によるナチス将校への報復、日本兵による残虐行為とその要因、中国人による敗残兵への報復など、「復讐」という暗部にも言及する。

丹念な調査と膨大な資料を駆使して、「歴史の忘却」や「主観的歴史認識」に警鐘を鳴らす歴史的ノンフィクション。「戦争の記憶」や「戦後論」が盛んな折、冷え込む日中韓関係の問題にも一石を投じる、現代史の注目作。

著者はアジア研究者として国際的に定評のあるジャーナリストで、『戦争の記憶 日本人とドイツ人』などの邦訳がある。

**************

戦争の記憶―日本人とドイツ人

戦争の記憶―日本人とドイツ人

  • 作者: イアン ブルマ
  • 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
  • 発売日: 1994/12
  • メディア: 単行本



イアン・ブルマの日本探訪―村上春樹からヒロシマまで

イアン・ブルマの日本探訪―村上春樹からヒロシマまで

  • 作者: イアン ブルマ
  • 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
  • 発売日: 1998/12
  • メディア: 単行本



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秘密保護法の下、調査報道はできるのか「戦争は秘密から始まる: 秘密保護法でこんな記事は読めなくなる」 [読んでみたい本]


戦争は秘密から始まる: 秘密保護法でこんな記事は読めなくなる (合同ブックレット 7)

戦争は秘密から始まる: 秘密保護法でこんな記事は読めなくなる (合同ブックレット 7)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 合同出版
  • 発売日: 2015/02/27
  • メディア: 単行本



上記イメージ書籍は、「毎日新聞」(3・16p7)に紹介されていた本。

記者たちの実際の経験が記されているもよう。「11人が執筆」と、ある。

(以下、青島顕による紹介文)

**********

調査報道や権力監視を目指した報道は、特定秘密保護法施行後もできるのか・・・・。新聞・通信各社の労働組合でつくる日本新聞労働組合連合(新聞労連)は「戦争は秘密から始まる: 秘密保護法でこんな記事は読めなくなる」を出版した。全国の新聞記者ら11人が、取材の活動がおびやかされる恐れについて、自らの経験を基に記している。

昨年12月に施行された秘密保護法は、外交、防衛、テロ防止などの分野で国によって定められた「特定秘密」を厳罰によって守る構造だ。漏らした公務員らを処罰するとともに、特定秘密を不正な方法で手に入れようとした場合は民間人も処罰の対象になる。

取材現場では、役所の中から不正を告発する内部通報者がいなくなるのではないか、と懸念の声が上がっている。記者に対しても、罰を恐れて筆を鈍らせることがないか、問われている。

北海道新聞時代に道庁や道警の裏金作りを暴いた高知新聞の高田昌幸さんは「権力側の真相に迫る努力を持続することを、本気になってやるか、どうかだ」と記者たちに奮起を促す。米軍三沢基地(青森県)から出入り禁止処分を受けた経験のある東奥日報の斉藤光正さんは「屈してはいけない。臆してもいけない。したたかにならなくては」と呼びかける。

前新聞労連委員長で京都新聞記者の日比野敏陽さんは執筆するとともに、本の編集を担当した。「秘密保護法に対しては学者や弁護士らが問題点を発言してきたが、取材現場で影響を受ける恐れのある記者こそ発言しなくてはと考えた」と出版の動機を語る。そのうえで「マスコミ不信が根強くあるが、記者クラブ制度にあぐらをかいているわけではない。記者たちはこんなことをやっているんだと知ってほしい」と訴える。

問い合わせは新聞労連(03・5842・2201)


真実  新聞が警察に跪いた日 (角川文庫)

真実 新聞が警察に跪いた日 (角川文庫)

  • 作者: 高田 昌幸
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/04/25
  • メディア: 文庫



秘密保護法 社会はどう変わるのか (集英社新書)

秘密保護法 社会はどう変わるのか (集英社新書)

  • 作者: 宇都宮 健児
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2014/11/14
  • メディア: 新書



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