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マイルス・デイヴィスのBOX・SET [アート・美術関連]

高校を卒業して後、ひょんなことから家出するはめになった。そんな突飛なことのできる性格ではもともとなく、石橋をたたいて渡らず、他人に渡らせ、それでなお自分では渡らないなどという方なのだが、たまたま自動車教習所の送迎バスの最後のひとりとなって、後部座席で暗い顔をしていたとき、運転手から、「君はいろいろ考え込んじゃうほうだろ。若いときはいくらかハメをはずしたっていいんだ・・」などという無責任なことをのたまわられ、丁度、こちらも、そういういい加減な言葉を欲していたところだから、バックミラーに映る運転手の目配せを合図に、「渡りに船」とそれに乗り、住み込みのアルバイト先から東京に脱走をはかった。そう、「いくらかハメ」を外してみたのである。

東京・目白の田中角栄邸の下には神田川にそうように谷が広がっていて、芭蕉庵の近くにオサナナジミが下宿していた。そこに転がりこんで、それから、早稲田大学の大隈商店街にある某新聞店に転出し、半年あまりを過ごした。その間、丁度、大学をぐるっと一回りするように新聞を配った。

家出して、保険証もなければ、布団もないような生活がはじまった。まだ、寒くなりはじめたばかりの時期だったが、布団がわりにジャーマン・コートをかぶって寝ていたら、同じ寮に住まう浪人生が自分の布団に入るように勧めてくれた。

「裸電球のぬくみ暖かく」、おなじく、人の温かさも、肌身に沁みてよく分かった。生きている実感をあれほど感じた時期はない。

そう、若人よ書を捨てて街に出よう。できれば、家出をして・・・。


それがマイルス・デイヴィスとどういう関係があるのかというとオオアリなのである。

その間、無断聴講生をあちこちの大学でしていたのだが、早稲田の学園祭のジャズ研の演奏を見たのがジャズライブの聞き初め。それから、レコード店に行って、なにかお勧めのレコードはないかと尋ねたら、マイルスの「カインド・オブ・ブルー」を紹介してくれた。それを持って、プレイヤーをもつ友人に聞かせてもらった。それが、ジャズのレコードを買った最初。当時、1800円だったように覚えている。


Kind of Blue

Kind of Blue

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: COLUMBIA/LEGACY
  • 発売日: 1997/03/27
  • メディア: CD



今、アマゾンで、1950年代のマイルスのLPアルバム20枚を10枚のCDにおさめたBOX・SETが発売されている。それが、格安。

著作権が切れた関係だろうか、円高の恩恵だろうか。いずれにしろ、ファンにはうれしいハナシだ。当時、新しいアルバムのリリースを待ってわくわくしていた人たちが、タイマイはたいて買っていたシロモノ。それが、いま、なんと2000円以下。


Twenty Classic Albums

Twenty Classic Albums

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Ais
  • 発売日: 2012/02/21
  • メディア: CD



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