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大事件になる前に調査報道を:コリン・ジョーンズ同志社大法科大学院教授 [ニュース・社会]

毎日新聞掲載「メディア時評」に、

〈大事件になる前に調査報道を〉と題して、コリン・ジョーンズ同志社大法科大学院教授が書いている。

ナルホドと思った。

どうして事実そのようであるのだろうと疑問に思った。

メディアの役割・責任がきびしく問われている。実際のところ、ジョーンズの問いかけにマス・メディア各社がどのように答えるのか知りたいところである。

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大事件になる前に調査報道を

名画「カサブランカ」(1942年)に、ある警察署長が事件ざたになった飲み屋兼ヤミ賭博場の閉店を命じ、「ここで賭博行為が行われていたとは驚きだ。実に驚きだ」と語るシーンがある。それまで署長がその店の常連だっただけに、驚きを装った、このセリフは結構、有名だ。

 
「旧社保庁OB600人天下り」。そんな見出し(毎日新聞、3月5日夕刊)を目にして、そのセリフを思い出した。多額の企業年金を運用していた「AIJ投資顧問」による不正事件を発端に、旧社保庁との癒着が明らかにされた。だが、多くの社保庁OBが年金基金に再就職していると知ってあきれる読者がいても、驚く読者は少ないだろう。

 
天下りは新しい問題ではない。年金資産がどのように運用されているかを含め、年金制度の財務状況が悪化している実態は、高齢化社会の進展とともに、ずっと以前からの重要な国家的課題である。天下りが「常態化」しているというほどひどいなら、昔から何度も取材する機会があったはずだ。なぜ、不祥事が起きてからでないと、新聞やテレビに取り上げられないのか。

また、原発をめぐる、電力会社と原子力安全行政との癒着も、「3・11」以前から常態化していたのだが、今回の東京電力福島第1原発事故で、国民が多大な不利益を被ってからでないと、問題が指摘されないのはなぜだろう。
 

「増税は、年金財源確保のため」「今後こそは、しつかりした原発安全体制を」と、政府がどんなに情報発信をしても、多くの人は年金制度の将来を憂え、原発再稼働に不安を感じている。そこには、「何をしても、まずは自ら権益を追求するだろう」という政・官への懐疑があるのかもしれない。また、政府発信の情報を媒介する新聞やテレビに対する期待の低下も背景にあるのではないか。「国民の知る権利」とはジャーナリズムを美化・擁護するため使われがちだが、もっと積極的に調べて「知らせる義務」があるのではないのか。「年金資産が消えた後」または「メルトダウンが起きた後」に、事後報告″のように取り上げても、国民の利益に貢献しているとは言い難い。海外で反原発デモが起きても、日本の大手メディアで報道されることはまれだ。大事件になる前から、さまざまな問題をフォローできるインターネットやツイッターを頼りにする人々が増えるのは自然な流れだ。

 
「カサブランカ」では、「賭博が行われていたとは驚きだ」と口にしたばかりの署長に、店員が「今日の勝ち分だ」と現金を渡すところがオチだ。一般のメディアは、賭博をしているわけではないが、〝驚く″前に、せめて人々に早く実態を知らせてほしい。


 
毎日新聞4月2日

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