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10:なぜ「市民」・・(「海軍反省会」を見て) [市民のあるべき姿とは]

「市民」「市民」といろいろ御託をならべてきたが、なぜ「市民」などと考えはじめたかというと、しばらく前にNHKスペシャルで放映された『日本海軍 400時間の証言』という番組のビデオ録画したものを思いだして見たからだ。

というより、当方の無意識が、今回の原発事故に発動されてビデオを見るよう促したように思われもする。
http://www.nhk.or.jp/special/onair/090809.html

かつて日本には「海軍」という組織があった。それは、当方にとっては、陸軍に比べるとずっとリベラルでスマートであり、ブルータルな印象がうすく見えた。

ワカル人にはワカルと思うのだが、『兵隊やくざ』の田村高廣演じるインテリ上等兵と勝新太郎演じるヤクザモン大宮貴三郎とにたとえられるように思えていた。

ケンカをしたがる陸軍をずっと引きとめようと努めたものの、やむなく引きずられるようにして太平洋戦争(アメリカとの戦争)に加わっていったのが海軍であるように思っていたのだ。

ところが、『日本海軍 400時間の証言』のなかで明らかにされていたのは、知能犯ともいえる海軍のズルさであり、映画の虚構性よりなお空疎なナガレで戦争に突入していったそのありさまであった。

その番組では、太平洋戦争(アメリカとの戦争)開戦時、海軍の中枢にいた人々が戦後ひそかに集まり開かれた400時間にもおよぶ反省会のようすが示されていた。

当該ブログで先に記したが、まさに“folly”なナガレで、300万以上にも及ぶ犠牲者を出したことがそこには示されていた。

陸軍との予算の獲得競争。軍備を増強するため、その予算獲得のために対米強硬論が主張される。戦争(実戦)を知らない“偏差値エリート”で構成された作戦本部(軍令部)。そうした“優秀な”部下の進言を自分の知識・経験,世界情勢に照らして吟味することなく、鵜呑みにした海軍大臣。現場の「準備ができていない」という声に耳を傾けることなく、長期的な計画もないまま、なしくずし的に作戦にGoサインを出す指導層・・・

一番おそれいったのは、そのようにすればアメリカとの戦争にかならず発展するものとして、その前年まで反対を表明してしていた日独伊三国同盟を締結したこと。意志を翻した理由は、陸軍から軍事予算の配分を有利にしてもらえるという約束を海軍が取り付けたからであるという・・・。

反対の意思表明をした人もいるにはいた。アメリカ駐在経験のある米内、山本、井上といった人々がその中心であったが、それらの人々を排除してまで、海軍という組織は、国際情勢から見て愚かな同盟を結ぶ。「バスに乗り遅れるな」というのが、その意向であったという。


この番組を通し300万有余に及ぶ犠牲者は、一握りの人たちの虚栄心やら小心翼翼の権威主義やら御身大切・自己保身のずさんな計画やらに巻き込まれたことによるものだということが分かった。

つまり、人災である。

この番組のあと、半藤一利さん、澤地久枝さんらによる「日本海軍 400時間の証言」を見ての反省会が開かれた。どちらも昭和5年生まれの、今は貴重となりつつある戦争実体験者の方々である。
http://www.nhk-ondemand.jp/goods//G2010014409SA000/index.html?capid=mailmaga002

半藤さんは、真珠湾勝利のあとの国民的熱狂にアヤウイものを感じていたという。和平の機会を探して、講和条約をむすぶべく努力をすべきところで、国民全体がいわゆる催眠状態に入ってしまい、そのような政治的判断を許さない国家的状況になってしまったという。


かつての海軍という組織のありようは、現在の日本のさまざまな場面に対応するように感じる。かつて“国策によって”巨大戦艦を造ろうとした意志は、今日の原子力発電所を造る意志に対応してきたように思えるし、その保守点検組織のずさんさも対応するように思える。神風が吹いて日本の原発はチェルノブイリのようにはならないと信じてきたというのも対応するであろう。催眠されていたかどうかは、知らないが、置かれている危険に気付かなかった国民の精神状態は、催眠状態にあったと言っていいように思う。

日本海軍 400時間の証言の第一回目は「開戦 海軍あって国家なし」というテーマであった。「海軍あって国家なし」は、今日なら「内閣あって国家なし」「議会あって国民なし」などと言い換えることができるかもしれない。

放射能の汚染を心配し身を守るよりも、自己保身に明け暮れする政治家たちから離れていることのほうが、優先事項のように思える。巻き込まれて滅ぼされてはかなわない。

ソノ点で嗜眠状態に陥ってはいけないのである。

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高貴な者にも、地の人の子にも信頼を置いてはならない。彼らには救いはない。その霊は出て行き、彼は自分の地面に帰る。その日に彼の考えは滅びうせる。ヤコブの神を自分の助けとする者は幸いだ。彼の望みはその神エホバにある。神は、天地、海およびそれらの中にあるすべてのものの造り主、定めのない時に至るまで真実を守られる方(詩編146:3-6)


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