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「申し訳ありません」をめぐって:岩見隆夫 [ニュース・世相]

『サンデー毎日』の連載記事に〈岩見隆夫の「サンデー時評」〉というコラムがある。

6・28号のテーマは「『申し訳ありません』をめぐって」と、ある。


JALに搭乗した岩見さんは、以前あったサービスがなくなったことに気づく。

その点を指摘すると、客室乗務員は「申しわけありません」を繰り返すばかりであった、という。

その「申し訳ありません」をめぐって、岩見さんは、書いている。


本来ことばは、「使う側と聞く側の信頼関係を保」ち、「どんな言葉を使えばお互いに信頼し合えるか」を思案し用いるべきものであろうはずなのに、JALで経験した「申し訳ありません」からは、「一片の説明意欲も説得の姿勢も感じられ」ず、不満を残すものであったという。

岩見さんは、「謝罪言葉はやりとりを封じる効果があるから、そこで話は終わる。だが、お客に不満は残り・・・不信も芽生える」と、書いている。


そして、昨今の経済事情を鑑み、さまざまなサービスが簡素化され、人員が削減され、限られた人員で客への対応が迫られるているのであろうとJALの客室乗務員に思いやりを示し、その点は「どこの企業でもやっていることだから、お客にも理解できる」と書いて・・・、

そうであれば、「いろいろ簡素化しておりまして、ご理解を」と言えば、客の方も「そうか、となるのではないか」と記している。


結論として、「言葉を工夫し、気持ちを通じ合うように」することの大切さが指摘されるのだが、

論を結ぶに際し、岩見さんは、「言葉を選び、書き、話し、演説することを、信条にしていた」「雄弁家の三木武夫元首相」をひきあいに出す。

「三木武夫元首相からこんな話を聞いたことがあった。ある会合で、三木さんが、

『どうしたらいい文章が書けるのかねえ』

と問いかけると、作家の井上靖さんが、

『いい文章を読むことです』とこともなげに言い、感じ入ったという。」


このような言葉を「こともなげに」言い、「感じ入」る精神の持ち主であれば、おのずといい言葉の使い手になれるのかもしれない。




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