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小説家 山本周五郎と聖書 [スピリチュアルな話題]

ここのところずっと『ユーチューブ』で古い日本映画ばかりを見ている。見ては、なにかしら当該ブログに書き留めてきた。

そうしていたら、日本テレビで放映されていた『知ってるつもり?!』がアップされている。そこには、「松竹(映画の)三羽烏」といわれたうちのお二人佐野周二と上原謙の息子たちが出演している。言わずと知れた司会の関口宏とゲストの加山雄三である。おまけに、先ごろ倒れて病院に搬送された中村吉右衛門もゲスト出演している。アタリマエだが、みんな若い。

知ってるつもり?!山本周五郎
https://www.youtube.com/watch?v=Caw6AguT5jw


取り扱われていたのは作家『山本周五郎』である。以前、映画監督 篠田正浩の論考をとりあげたときには、知らなかったことが示されていた。要するに「知ってるつもり」でいただけであるということが分かった。

「日本のドストエフスキー」山本周五郎のこと
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2014-08-12

「知らなかったこと」とは、周五郎が、『聖書』をたいへん高く評価していたということだ。そればかりか、「現代の聖書」を書くことを使命としていたようだ。「弱者に対する温かい眼差し、庶民の哀しみ喜びを活き活きと描き、読む者に生きる勇気を与えてくれる小説の数々」は、そうした使命感の現れであったようだ。

番組は、黒澤明が周五郎作品に惚れ込み、『赤ひげ』『どですかでん』など映画化したことから始まる。

周五郎の生い立ちが示される。周囲から結婚を認められない両親のもとで貧しかったこと、物置で生まれたことが示される。父親は自堕落で、3歳のときに一度、母子ともに捨てられたという。実の父親でありながら、自分の「真実の父」親のように見なせなかった様子がうかがえる。

後に周五郎は、聖書を読んで、イエス・キリストが貧しく馬小屋で生まれたこと、イエスの父親ヨセフが養父であって真実の父親でなかったことを知るときに、自分とイエスを重ね合わせていたのではなかろうか。

山本周五郎というペンネームは、丁稚奉公先の質店のご主人の名前であるという。ご主人は小説を書く風流人で、奉公人たちの教育に熱心であったという。その主人から周五郎は観察眼をうえ付けられる。無利子無期限無催促で貧しい人にお金(壱円)を貸し出す主人の姿を見、教えを受ける。周五郎は主人の精神を受け継ぐ。主人のことを「真実の父」親と見なすようになる。

23歳の時に文壇デビューしている。しかし、菊池寛に酷評される。実際のところ、その作品は菊池のいうように「観念的で青くさい文学少年の域を出ていない」ものだったのであろう。大評判となった『日本婦道記』で直木賞の推薦を受け(しかし、辞退し)たのは、それから20年弱経過した40歳の時である。

その間、漁師町(浦安)でありのままに生きる庶民たちとの触れ合いや、後妻となった吉村きんの「下町育ちで明るくあけっぴろげな」性格が山本周五郎の文学的世界を大きく変えたようだ。それは、今日読まれている膨大な作品群につながっていく。

周五郎「晩年」についての番組ナレーションは以下のとおりである。

《満足に食事を口に運べないほど体は衰弱している。だが彼は、何かを求めるように聖書に向かいはじめる。少年時代から慣れ親しんでいた聖書を真っ黒になるまで読みふける周五郎。

昭和41年、最後の力を振り絞るように周五郎はふたたびペンをにぎる。『おごそかな渇き』 

周五郎はこの作品にかける思いを(つぎのように)書いている。

貧しいひとたち
汗を流して
その日その日のために
働いている人
そういう人たち
そういう社会を描きながら
人生とは?神とは?
罪とは?
人にはどう対すべきか?
死後は?
苦難に対しては?
など真面目に生きる人の
真面目な問に
自分なりに答え
慰め、励ましに
なるような
小説を書きたい
(朝日新聞 昭和42年2月26日)

人々の救いとなる「現代の聖書」を書く

それは周五郎の遺書でもあった》。

番組を見て、周五郎を、そして『聖書』をいよいよ読みたくなった。

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