渡辺邦男監督『命の港』長谷川一夫主演1944年を見る [ドラマ]
渡辺邦男監督『命の港』長谷川一夫主演1944(昭和19)年5月 を見る。
Port of life(1944)
https://www.youtube.com/watch?v=ktvSg7QePgA
おどろくほどに元気のいい映画だ。まずは「天突き体操」から始まる。高いところで頑張っているのは長谷川一夫である。その動きに和してみんなで天を突いている。
登場するのは、みんなイイ人である。仲たがい、誤解も描かれる。愚かであったり頑固な者も出てくる。おっちょこちょいも出てくる。しかし、いけすかない奴がでてこない。善人ばかりである。
総じての印象は、なんだかちょっと気味わるい。
その「気味のわるさ」は、ソ連の五か年計画に対する国民の仕事ぶりを示す映画を見た印象にちかい。不自然なのである。いいとこばかり描かれている感がするのである。
本作品は、いわゆる「戦意高揚映画」であろう。この時期の映画にしてはフィルムの質がいい。良すぎる。軍部から特に潤沢な資金が投ぜられているのではないか。フィルムの質もちがうのかもしれない。以前に見た国策映画も映像がクリアなのが多い。本作は、その中でも一番にいい。
海軍省後援映画『怒りの海』1944年 を見る
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2021-01-16
ここでは、回漕業、港湾労働者たち(沖仲仕)の働きが描かれる。港湾に入る船舶から貨物を港に運ぶ仕事である。以前に同じ仕事を取り扱った映画『男の意気』を見たが、それはまだ市民生活を描く面があったが、こちらはもっと国家の中に置ける回漕業の役割とは、それに従事する者のもつべき姿勢とは、などといったモデルを示す感じがある。ひいては、戦時下の日本国民だれもがもつべき仕事への取り組み方をモデル化しているように思う。
坂本武・上原謙主演『男の意気』1942年を見る
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2021-02-02
では、気に入らないかというと、当方はいい映画であると思う。これが日本人なんだろうなあと感じる。ただ思うに、ここにみる皆と一致団結して仕事に取組み、皆のために個人が進んで犠牲を払うことを善しとする姿勢は、もう一歩二歩進めばすぐ「特別攻撃隊」になるように思う。
自ら命を絶つのは美しい?
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2006-08-25
こうして前線で戦い、銃後で働いたものの日本は負けてしまったのだなあと思う。
当映画の監督:渡辺邦男の逸話(ウィキペディア掲載)に次のようなものがある。
日本が太平洋戦争に敗北すると、戦意高揚映画に関わった製作者たちがGHQからの厳しい追及と尋問を受けたが、ほとんどの監督が軍部に脅されて仕方なく撮ったなどの姑息な言い訳に終始する中、渡辺だけは「国を護るために撮った。自分なりのやり方で戦ったまでだ」などと主張、尋問に当たっていた米軍将校はすっくと立ち上がると渡辺に両手を差し出し「この国に来て初めてサムライに会った」と言いながら握手を求めたという。
渡辺のような意識・精神の持ち主が、戦後アメリカに負けてなるかと経済で頑張って高度成長をもたらしたのだろう。経済ばかりではない。小室直樹博士は、勉学で負かしてやるという意向を強くもっていたという。
蛇足ながら(映画と離れるが)小室博士について「ウィキペディア」に次のようにある。《会津高校在学中に湯川秀樹博士のノーベル賞受賞を聞くと、日本がアメリカ合衆国を打ち倒し、世界から尊敬を受けることができるようになる国になるための研究ができると思い、京大理学部を志望[6]。1951年に福島県立会津高等学校を卒業し、京都大学理学部に入学した》。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E5%AE%A4%E7%9B%B4%E6%A8%B9
いずれにしろ、当該映画は、日本人の資質・精神・意識のよく出た作品と言えそうだ。
やっぱりすごい学者なんだなあ、小室さんは・・
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2020-10-26-1
Port of life(1944)
https://www.youtube.com/watch?v=ktvSg7QePgA
おどろくほどに元気のいい映画だ。まずは「天突き体操」から始まる。高いところで頑張っているのは長谷川一夫である。その動きに和してみんなで天を突いている。
登場するのは、みんなイイ人である。仲たがい、誤解も描かれる。愚かであったり頑固な者も出てくる。おっちょこちょいも出てくる。しかし、いけすかない奴がでてこない。善人ばかりである。
総じての印象は、なんだかちょっと気味わるい。
その「気味のわるさ」は、ソ連の五か年計画に対する国民の仕事ぶりを示す映画を見た印象にちかい。不自然なのである。いいとこばかり描かれている感がするのである。
本作品は、いわゆる「戦意高揚映画」であろう。この時期の映画にしてはフィルムの質がいい。良すぎる。軍部から特に潤沢な資金が投ぜられているのではないか。フィルムの質もちがうのかもしれない。以前に見た国策映画も映像がクリアなのが多い。本作は、その中でも一番にいい。
海軍省後援映画『怒りの海』1944年 を見る
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2021-01-16
ここでは、回漕業、港湾労働者たち(沖仲仕)の働きが描かれる。港湾に入る船舶から貨物を港に運ぶ仕事である。以前に同じ仕事を取り扱った映画『男の意気』を見たが、それはまだ市民生活を描く面があったが、こちらはもっと国家の中に置ける回漕業の役割とは、それに従事する者のもつべき姿勢とは、などといったモデルを示す感じがある。ひいては、戦時下の日本国民だれもがもつべき仕事への取り組み方をモデル化しているように思う。
坂本武・上原謙主演『男の意気』1942年を見る
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2021-02-02
では、気に入らないかというと、当方はいい映画であると思う。これが日本人なんだろうなあと感じる。ただ思うに、ここにみる皆と一致団結して仕事に取組み、皆のために個人が進んで犠牲を払うことを善しとする姿勢は、もう一歩二歩進めばすぐ「特別攻撃隊」になるように思う。
自ら命を絶つのは美しい?
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2006-08-25
こうして前線で戦い、銃後で働いたものの日本は負けてしまったのだなあと思う。
当映画の監督:渡辺邦男の逸話(ウィキペディア掲載)に次のようなものがある。
日本が太平洋戦争に敗北すると、戦意高揚映画に関わった製作者たちがGHQからの厳しい追及と尋問を受けたが、ほとんどの監督が軍部に脅されて仕方なく撮ったなどの姑息な言い訳に終始する中、渡辺だけは「国を護るために撮った。自分なりのやり方で戦ったまでだ」などと主張、尋問に当たっていた米軍将校はすっくと立ち上がると渡辺に両手を差し出し「この国に来て初めてサムライに会った」と言いながら握手を求めたという。
渡辺のような意識・精神の持ち主が、戦後アメリカに負けてなるかと経済で頑張って高度成長をもたらしたのだろう。経済ばかりではない。小室直樹博士は、勉学で負かしてやるという意向を強くもっていたという。
蛇足ながら(映画と離れるが)小室博士について「ウィキペディア」に次のようにある。《会津高校在学中に湯川秀樹博士のノーベル賞受賞を聞くと、日本がアメリカ合衆国を打ち倒し、世界から尊敬を受けることができるようになる国になるための研究ができると思い、京大理学部を志望[6]。1951年に福島県立会津高等学校を卒業し、京都大学理学部に入学した》。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E5%AE%A4%E7%9B%B4%E6%A8%B9
いずれにしろ、当該映画は、日本人の資質・精神・意識のよく出た作品と言えそうだ。
やっぱりすごい学者なんだなあ、小室さんは・・
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2020-10-26-1