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吉村公三郎監督『開戦の前夜』1943年 を見る [ドラマ]

Eve before the war
https://www.youtube.com/watch?v=bcrTl_lozog

「一億の 誠で包め 兵の家」と記された色紙が先ず映し出される。それから、富士山の写真とともに『松竹映画』と出る。

それから「指導 憲兵司令部」の文字が出、つづいて「序 開戦の前夜!軍も官も國民も等しく防諜に精進した 緒戦は斯くしてハワイにマレーに實を結んだのだ 然し戦いは匡にこれからである 防諜も愈々本格的であらねばならぬ 私達は心を協せ この大戦を戦ひぬく 防諜陣にも不敗の鐵桶を固めやう」の文字が綴られ、それから『開戰の前夜』の映画タイトルが出て音楽が始まる。

アメリカ大使館の諜報活動を阻止した憲兵たちの働きとそれに協力した一芸者にスポットが当てられる。帝国連合艦隊が集結するのを確認するため(?)、米大使館付き武官は関西旅行を企てる。宮島への私的旅行を装い、贔屓の芸者(田中絹代)を連れて出かける。しかし、芸者は憲兵(上原謙)から関西に入ることのないよう、武官を足止めするように依頼されていた。いのちを架けた仕事の報酬は鏡一つである。そして、「君は国民の一人として必ずこの大任を果してくれるだろうと僕は信じている」という文面の手紙。そして、その鏡がのちのち大きな役割を果たす。

鏡は女の魂
https://kotobank.jp/word/%E9%8F%A1%E3%81%AF%E5%A5%B3%E3%81%AE%E9%AD%82-2020253

今日であれば、戦艦どころか車輛や人間の存在ですら人工衛星画像で識別できてしまう。笑止千万なことに時間とエネルギーを使っていたものである。おなじく戦時中の映画に『敵機空襲』というものがあった。そこでは敵機襲来を認知した各地から電話で報告する場面がある。それで敵機の移動経路を把握しようというのだ。そして、それが、伝言ゲームのように繰り返されていく様子が示される。当時としては、「こんなに凄い連携プレーがなされているのである」ということを国民に示したかったようだが、それも今日ならインターネットで瞬時である。

ちなみに、『敵機空襲』では伝達する部署で働く士官役を笠智衆が演じていた。当該映画では憲兵(上原謙)の親友の参謀役で出ている。前線に出征する前に一升瓶をかかえて別れの挨拶にくる。一升瓶には平行して2本の線が入っている。それは、ここまで飲んでイイという目安である。他に2軒挨拶に行くのでここまでしか飲めないという。それでいて、もっぱら自分で飲んでしまう。客として訪問していながら、奥さん(木暮実千代)にコップを持ってきてくれのなんのと言い、おおらかで明るい厚かましさを示す。おまけに、憲兵の家宝の備前長船を頂戴して帰る。それにしても、なんの役をやらせても笠智衆だなと思う。金太郎飴のようである。それでいて、存在感があり、その演技で納得させられてしまうのだから不思議である。(38:50~50:40)

そこで「涼州詞(りょうしゅうし)」が吟じられる。以下のページに解説がでている。
http://chugokugo-script.net/kanshi/ryoushuushi.html


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