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松竹最初の国策軍事映画『進軍の歌』1937年を見る [ドラマ]

Song of the marching (1937)
https://www.youtube.com/watch?v=dyfjJUUhUYQ

ウィキペディアによれば「松竹最初の国策軍事映画」「戦意高揚映画」とある。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%B2%E8%BB%8D%E3%81%AE%E6%AD%8C

そのように聞くと、当方の脳裡にはアドルフ・ヒトラーが手を振り回して演説するイメージが湧いてくるのだが、そのようにではない。

ある意味、もっと巧妙である。ずっと日常的なところから煽られている。お国のために戦地にでかけ戦うように、その後押しをし銃後を守るように、たとえ夫を失ってもソノ運命を受け入れるように促される。上からの命令というより、「お国のため」、同胞のためが強調され、労働者も資本家も芸者も犯罪者も、お国のために身命をささげるよう煽られる。

兵士らは、同胞の「歓呼の声に送られて」出征していった。「千人針」や「餞別」が贈られた。その当時の様子を窺うことができる。

水木しげる原作のテレビドラマ『のんのんばあとオレ』のなかで、銃の代わりに木をかついで(少年時代の水木さんら)子どもたちが行進しながら歌っていたのは「天に代わりて(不義を討つ)」という題であることを、当映画で知った。

ホントウに、あったのだろうか? 心うたれる場面がいくつも出てくるが、以下のようなものもあった。主人公(佐分利信)は労働運動を理由に拘留されている。そこに召集令状が届く。そのことで釈放されることを警察署長から聞くと、嬉しそうな表情をする。お国のために戦うことができるのは男子の本懐だと言う。出征準備のために自宅に戻る。しかし実のところ家はたいへん貧しい。あとに残す妻や幼児のことで不安を抱えている。そこへ、警察署長がやって来る。拘留され留置されている者らが、君の出征について聞いて餞別を渡したいと言う。それを聞いた署員たちも感激してみなが餞別を出した。わずかではあるが、仲介の労をとり手渡しに来たという。19分05秒~21分00秒

ある意味、心打たれる映画である。先の更新でスピルバーグ監督映画『太陽の帝国』について少しだけ書いたが、日本軍の捕虜となったイギリス人の子どもが、日本軍の基地から出発する零式艦上戦闘機を見送るシーンがある。それは特攻機であり、別れの水杯をして搭乗員は飛び立つ。 それを見送る少年が、敬礼をするのである。自分が捕虜として収容されている敵の陣営から飛び立つ敵の飛行機に敬礼をして見送るのである。個人を超えたもののため、崇高な目的のために命を燃やすことについて見聞きするとき、人は心うたれる。そのように人の心はできているらしい。敵・味方を超越してそうなるらしい。

当映画でも、そうした感情を共有するよう促される。一種の宗教感情である。

しかし、そのような感情は、ある意味において、たいへん危険である。むなしいモノに命を捧げることになりかねないからだ。それゆえ、そのモノが、犠牲を払うに真に値するものかどうか吟味することが重要になる。

自ら命を絶つのは美しい?
https://bookend.blog.ss-blog.jp/2006-08-25


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